知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

クロスフォーさんのダンシングストーン

 今回も、特大がっちりマンデー

やっていた話です。

 

 正式名称は株式会社クロスフォー、

設立1987年、本社は甲府、資本金

8,000万円、役員6名従業員48名、

事業内容はジュエリーの製造・卸

だそうですよ。

 

http://www.crossfor.com/

 

 このクロスフォーさんがなぜ取り上げ

られていたかというと、上のHPでも

わかるように、何もしていないのに、

宝石が自分でキラキラ光り、世界

的に大ヒットしている(と言っていま

した)からなんです。

 

 月間売上個数は35万個にもなる

そうで、宝石が自分でキラキラ光る

原理は、何もしないでも自分で揺ら

めくからなんだそうで、これを特許

化して、使用料4ドル/個でライセ

ンスしており、特許使用料だけで

毎月2億円なんだそうです。

(数字が合わないような気がしますが、

まあ、それは置いておいて)

 

 この宝石の名前は「ダンシング

ストーン」というんだそうで、商標の

ほうは、5521547号と5695161号で

登録されていますので、宝石に

使うとおこられますよ。

 

 ということで、「旦那、お妾さんに、

一個、いかがです?」(言い方が古い

ですね。恋人か、奥様にのほうが、健全

ですが。「パパ」がいる方は、「パパ」に

おねだりしてみてもいいかも???)

 

 それでは、このダンシングストーンが、

どのようにして揺らめくのか、特許のほう

から調べてみましょう。

 

 2000年以降の特許出願は以下のように

なっていて、揺動関係は色をつけてあり

ます。

 

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 色をつけたものだけは、結果を書き

入れてありますが、色がついていない

ものは、登録となっているもの以外、

拒絶か、審査請求をしなかったもの

になります。

 

 海外で特許料で稼いでいるものは、

再表2012/086098というものなのですが、

これは、残念ながら国内では拒絶になって

いるんです。

 

 それじゃあ、何でライセンス料で稼げ

るんだ?というところなのですが、最初の

再表2012/086098は、国内審査で、「発明が

新しくないよね」、とか、「今までより進歩して

ないよね」、とか、「一つの出願に、関係ない

発明が書かれているよね」とか(発明の

単一性(37条)といいます)言われて

しまい、補正をしたりなんかしたんですが、

結局拒絶されてしまいました。

 

 ということなので、審査途中で、「特許

できそうなものは、ほかに分けて、もう

一回出願しちゃおうっと」という、分割

出願というものをおこなって、特開2013-

163039というのはその分割出願なんです。

 

 しかし、この分割出願「特開2013-

163039」のほうも、やっぱり審査のときに

嫌がらせを受けて(違いますね、拒絶

理由通知を受けたんですね)、さらに

さらに特開2013-226462として分割

したりして、涙、なみだの結晶として、

「特開2013-163039」が登録を受けま

した。

 

 ということで、「人に歴史あり」

ならぬ、「ダンシングストーン」に

歴史あり、だったんです。

(海外でも、登録できるように、何か

対策を打っているのでしょう)

 

 テレビでは、揺動を起こすのは、

宝石をぶら下げる内側部分が尖っている

ために非常に不安定であり、わずかな

心臓の鼓動のようなものでも揺動が

起きるんだと言っていました。

 

 明細書のほうを見ると、今までも、

揺動を可能に支持する指輪等がある、

となっています。

 

 これをダイヤモンドなどを支持した

ペンダント等で実現させようとすると、

ダイヤモンドの一番見てほしい面が正面を

向かないんだそうです。

 

 したがって、この特許のキモは、一番

見てほしい面が正面に向いた姿勢で

安定して支持できるようにすることで

あって、支持部を鋭利にして揺動を

起こさせることではなかったんです。

(請求項の3でも、重心位置を補正する

おもりのことが書かれています。 尚、

請求項の2には、支持部は点で接して

いると、揺動機構も書かれていますが)

 

 テレビでは、一般向けにわかりやすい

ように、この揺動機構に焦点を絞って、

説明をしていたんですね。

(正面を向かせる原理よりも、キラキラ

光る原理のほうが、我々、知りたいです

もんね)

 

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 尚、PCT出願は、ヨーロッパ、台湾、

シンガポール、ロシア、メキシコ、中国、

カナダ、オーストラリアなどで出願公開

されていますので、これらの国でも登録

できるように、今頃、しこしこ頑張って

いるのかもしれません。