知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

特許法第32条 その1 18歳未満閲覧禁止???

 ということで、「閲覧禁止」と銘打っても、

ブログは誰でも閲覧できるわけでして。

 

 たとえば、以下のURLをクリックすると、

最初に出てくるのは、「あなたは18歳以上

ですか?」なんですが、18歳未満が「YES」を

クリックしても中に入れるわけでして。

 

https://www.tenga.co.jp/

 

 この企業はどんな企業かというと、

正式名称「株式会社TENGA」、設立が

2005年、本社東京都中野区、従業員数

51人、事業内容が、安全で機能的かつ

衛生的な「成人用玩具」の研究開発及び

その販売、「性」と病気に関する正しい

知識と予防法の啓発と普及、「性」に

関する正しい知識、情報の普及、

なわけなんです。

 

 ということで、このようなちょっと

エッチな製品について発明したり特許

出願をおこなっている企業もあるわけ

ですので、今回は、このような特許出願を、

「分析してみよーではあーりませんか」

という「とんでもハップン」企画です。

(またまた言い方が古いですね)

 

 まあ、そうは言っても、特許庁さんが

公に公表しているものを分析するわけ

ですので、私がすんごく助平なわけでは

ないんですよ。

(またまた言い方が古くてすんません)

 

 我々も、このような出願を担当するかも

しれませんので、てゆーか、「ほんとは

おめーが卑猥なのが好きなだけだろうが」

という声が聞こえて来そうな企画なわけ

でして。

 

 ということで、

 

 「おっしゃるとおり!!」

 

 「あんたは、えらい!!」

(「小松の親分さん」の口調で読んで

ください)    

 

 それでは、分析のほうは、まじめに取り

組むとして、始まり、始まりー。    

 

 以前に書きましたが、国際技術分類で

IPCというものがあるわけですが、実は、

「その道のプロ」の方が発明した場合の

ことを考えて、 その道のプロの技術

分類があるんです。

 

A61H19/00 生殖器のマッサージ

 

(A61H21/00 人体の腔部をマッサージ

する用具

A61H23/00 打撃またはバイブレー

ションマッサージ,例.超音波振動を

用いるもの;吸引-バイブレーション

マッサージ;可動ダイヤフラムによる

マッサージ・・・(こちらは肩こりなどの

マッサージ器がほとんどです))

 

 ちなみに、Fタームのテーマコードは

4C074になりますよ。(整形外科、看護、

避妊の4C098というのもありますが)

 

 ということで、A61H19/00の技術分類を

プラピ(J-PlatPat)さんに打ち込んでみると、

119件も出願があり、登録も19件もされて

いるんです。

(興味のある方は、自分で検索してみて

ください)

 

 ところで、特許登録の要件として、

特許法32条の公序良俗というものが

あり、この「公序良俗に違反するものは、

登録できないんでっせ」となって

いますので、試しに、拒絶となって

しまったものの拒絶理由を見てみま

しょう。

(内容をそのまま掲載するとまずいよう

なところは、「~」で記載しています)

 

 まずは、審査官からの、拒絶理由

通知書です。

 

 「この出願は、次の理由によって

拒絶をすべきものです。これについて

意見がありましたら、この通知書の

発送の日から3か月以内に意見書を

提出してください。

 

理 由

 この出願の下記の請求項に係る

発明は、下記の点で特許法第32条

規定により特許を受けることができない。

 

・請求項 ~

 請求項 ~ に係る発明の性的

刺激装置は、いたずらに性感を増大

させるようないわゆる淫具に属する

ようなものであるので、公の秩序、

善良の風俗を害するおそれが

あるものと認められる。

 請求項 ~ に係る発明は特許法

32条の規定により特許を受ける

ことができないことが明らかである

から、新規性、進歩性等の特許要件

についての審査を行っていない。」

 

 次は、出願人から出された意見書です。

 

【意見の内容】

1. 本件出願は、~ 特許法第32条

の規定により特許を受けることができ

ないという通知を受けた。該拒絶理由

通知書において、審査官殿は『請求

項 ~ に係る発明の性的刺激装置は、

いたずらに性感を増大させるような

いわゆる淫具に属するようなもので

あるので、公の秩序、善良の風俗を

害するおそれがあるものと認められる』

と指摘されている。

 本件出願人は、この拒絶理由は

妥当でないものと思料するので、

その理由を次に説明する。

2. 本件出願にかかる発明は性的

刺激装置にかかる発明である。本件出

願人が、本件を出願したのは、かかる

性的刺激装置が、消費者に必要とされ、

かつ社会一般において広く需要が

あるからである。例えば、夫婦生活に

おける男性の一時的又は継続的な

不能、不妊治療における性的刺激の

必要性など、現実の社会生活に

おける様々な場面で、かかる性的

刺激装置が必要とされているので

ある。したがって、審査官殿の

ご指摘、すなわち本願発明の性的

刺激装置をただいたずらに~を増大

させるような淫具に属すると考える

のは妥当ではないものと思料する。

 また、本願発明の性的刺激装置の

生産及び販売は、特許法本来の

産業の発展に寄与するものであり、

特許法の目的を達成するためにも、

特許を付与して保護すべきものである。

 さらに、本願発明の性的刺激装置は、

その機能美を保護するため意匠登録

出願され、~ 付けで意匠登録されて

いる。意匠法では、意匠登録を受ける

ことができない意匠として公の秩序

又は善良の風俗を害するおそれが

ある意匠を挙げているが(意匠法第

5条1項1号)本願発明と同じ性的

刺激装置が意匠登録されている。

したがって、意匠登録出願の審査

では、本願発明に係る性的刺激装置

の本来の役割、必要性及び産業への

寄与などから、該性的刺激装置を

単なる淫具とはされていないので

ある。

 さらに、特許法第184条の9

第2項第5号において、特許庁

長官が、出願に係る発明が公の

秩序又は善良の風俗を害する

おそれがあると認めるときは、

国内公表しない旨、規定されている。

 しかし、本件出願は国内公表されて

おり、特許庁長官が、本願発明を、

公の秩序又は善良の風俗を害さ

ないと認めていることは明らかである。

 さらに、本件出願の基となるPCT ~ 

を介して、多くの国に特許出願され、

かつ、既に特許されている。

例えば下記特許である。

 

番号      登録日

 ~      ~

 ~                       ~

 ~                       ~

 

 したがって、ほぼすべての国の特許庁

において、本件出願にかかる性的刺激

装置は、公の秩序又は善良の風俗を

害さないと認識されているのである。

そして、特許制度のハーモナイゼー

ションが進む現在において、該認識は

御庁においても高度の妥当性がある

ものと思料する。

 ここまで説明したように、本件出願に

係る性的刺激装置を公の秩序又は

善良の風俗に反すると考えるのは

妥当ではないものと確信する。

 したがって、当該拒絶理由は妥当

ではないので、さらにご審査のうえ、

本件出願を特許すべき旨の査定を

頂けますようお願いする次第である。

 

 ということでしたが、次の拒絶査定

となりました。

 

 「この出願については、 ~ 付け拒絶

理由通知書に記載した理由によって、

拒絶をすべきものです。

 なお、意見書の内容を検討しましたが、

拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだ

せません。

 

備考

 出願人は意見書において、「本件

出願人が、本件を出願したのは、

かかる性的刺激装置が、消費者に

必要とされ、かつ社会一般において

広く需要があるからである。例えば、

夫婦生活における男性の一時的

又は継続的な不能、不妊治療に

おける性的刺激の必要性など、

現実の社会生活における様々な

場面で、かかる性的刺激装置が

必要とされているのである。」と

主張している。

 しかしながら、本願発明の性的

刺激装置は、仮に夫婦生活に

おける男性の一時的又は継続的な

不能、不妊治療における性的刺激の

必要性など消費者が必要としている

ものであるとしても、衛生を害する

おそれがあるものであって、~ を

可能ないし ~ 可能回数を増加

することを主目的とするものに帰し、

秩序もしくは風俗をみだすおそれが

あるものであると認められるので、

出願人の主張は採用できない。

 したがって、本願の請求項 ~ に

係る発明は、公の秩序、善良の風俗又

は公衆の衛生を害するおそれがある

発明であり、特許法第32条の規定

により特許を受けることができない。

 なお、必要であれば、不服2006-

022862審決並びに昭和36年(行ナ)

第191号判決等を参照されたい。」

 

 ということで、拒絶理由を覆すことが

できなかったのですが、次回は、拒絶

理由を覆すことができた出願を、見て

みることに致しましょう。

 

 それでは、また。