知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

温泉でレアアース回収

 今回も、JSTnewsというところからの

記事を、拾って、書いてみようと思います。

 

 以前に温泉湯煙発電という話題を書き

ましたが、今回は、温泉でレアアース回収、

という話です。

 

oukajinsugawa.hatenadiary.jp

 

 レアアースって、何だ?ということなの

ですが、なんか、わかっているようで、

わかっていないような?気がします。

 

 レアなアースっていうんだから、なんか

焼き方がレアなのか?などと思う人は

いないと思いますが、レアアースのほか

にも、レアメタルや、希(少)金属など、

おんなじような言葉が沢山あって、何が

違うんだ?と思っているのは、私だけ??

 

 ということで、まずは、レアアースって

何だ?ということから調べることと致しま

しょう。

 

 先ずは、間違ったことは言わないでしょう?

経産省の定義を見てみると、以下のような

レアアースレアメタルとは、47元素であると

なっています。

(白金族は白金(すなわちプラチナですね)と

パラジウムが含まれます)

 

http://www.meti.go.jp/policy/nonferrous_metal/rareearth/

 

 「レアアースレアメタルが一緒になってて、

よくわかんねーじゃねーか」というところですが、

レアアースとは、以下のように、その中の17種

の広義の希土類元素なわけでして。

 

http://www.meti.go.jp/policy/nonferrous_metal/rareearth/rareearth.html

 

 狭義の希土類元素はランタンからルテチウム

までのランタノイド系列で、希土類(レアアース

という名前は、存在がまれな元素という意味で

つけられていますが、純粋に取り出すことが

難しかったため、存在が少ないものと考えられ

ていたわけですが、実際にはスカンジウム

除けば資源としてはむしろ豊富で、世界中での

資源の偏りが問題なわけですね。

 

 中学校だか高校だかの物理化学では、

普通の原子は、原子番号が多くなるほど、

電子が多くなるので、原子番号が増える

につれ、原子半径やイオン半径が増加

するけれども、ランタノイド系列では、電子

の増加が最外殻軌道ではなく、4fの軌道で

起こるので、原子番号が多くなるにつれて

原子核電荷(陽子のプラス電荷ですね)

の増加によって、電子が原子核に強く引き

付けられるようになるので、ランタノイド

系列では、原子番号が増えるにつれて、

逆に原子半径やイオン半径が減少するんだ、

などという「ランタノイド収縮」というのを

勉強したような気がします。

 

 まあ、化学結合の特徴ある挙動を決める

のは、外殻電子なわけでして、ランタノイド

系列の外殻軌道の5s、5pは各元素とも

同じなため、ランタノイド系列の元素は

同様な化学的性質を持っており、これが、

化学者を悩ませ、レアなアースと呼ばれる

ようになってしまったようなわけでして。

 

 ちなみに、希金属(希少金属ですね)は、

レアメタルのことだそうですよ。

 

 ということで、レアメタルや、レアアース

ついて、すこーし?わかったような気になり

ましたが、レアアースとかは、最新テクノロジー

には不可欠なわけでして、この前書いた

蓄光蛍光体などにもジスプロシウム

などのレアアースが必要なんですね。

 

oukajinsugawa.hatenadiary.jp

 

 このように、レアアースは、ハイブリッド

自動車のモーターや超強力磁石材料、光学

ディスクなどにも使われており、先端産業

での需要が年々増えており、資源リスクや

環境負荷低減のためにも、レアアース

リサイクルは重要です。

都市鉱山などと呼ばれていますね)

 

 リチウムイオン二次電池などは、携帯、

PC、デジカメ、今後開発が期待される

電気自動車に必須のもので、正極は、

レアメタル化合物のLiCoO2(コバルト酸

リチウムですね)が使用されているので、

リチウム、特にコバルトの今後の不足

およびコストも懸念されています。

 

 話は違いますが、最近、貴金属とかレア

アースが、うんち君に大量に含まれているん

じゃね??などという論文も発表されて

います。

 

http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-03/acs-s-y022015.php

 

 上の記事は、興味を引くために、うんち君を

持ちだしていますが、下の249th National 

MeetingのYouTubeでは、「ビジネス、産業界

の排出物は言うに及ばず、そのほかの家庭

からの排出物全般に言えることで、うんち君

だけではないですよー」、と論文発表者が断りを

入れていましたが。(YouTubeは英語です)

 

https://www.youtube.com/watch?v=tTkz_dTgGAc&list=PLLG7h7fPoH8LtUyqg-vxxZO3GlujdfXh6&index=13

 

ということで、うんち君からレアアース

話を戻すことにして、リサイクルするには、

鉄や銅などの金属が大量に含まれる酸性

廃液中から微量にしか含まれないレア

アースを高効率で選択的に回収しなければ

ならないわけですが、コストや回収効率の

問題から、なかなか実用化に至っていない

わけです。

 

 化学薬品やイオン交換樹脂を利用する

よりもコストが安くって、環境への負荷も

少ない回収方法がなんかないかいな?

ということで、微生物による方法がいろいろ

検討されていて、たとえば、微生物の細胞

表面に金属を吸着させたりするのですが、

複数金属が含まれていると回収効率が

悪くなったり、酸性条件では回収効率が

大幅に低くなるといった問題があるわけ

です。

 

 ということで、筑波大学の蓑田歩先生

などが、温泉につかりながらいろいろ考えた

わけです。

(温泉につかりながら、というのは、きっと、

違いますね)

 

 蓑田先生たちは、硫酸性温泉に生息する紅藻

(藻ですね)に着目し、培養条件を変えてレア

アースのうちのネオジウムやジスプロシウム

の回収について検討したところ、一定条件の

下で高効率で回収でき、培養条件やpHに

よって、レアアースの選択制を高められる

ことを見出したんだそうです。

 

 今回の方法では、先ほど書いたような

細胞表層の金属イオンの吸着とは異なり、

細胞内部で金属が蓄積されていることが

確認されたんだそうです。

 

 それでは、どんな特許出願なのか調べて

みましょう。

 

 調べると、特開2013-67826「金属の回収

または除去方法、および、脂質または色素

の生産方法」というもので、現在、審査請求

中でした。

 

 要約を見てみると、

【課題】溶液中で紅藻を培養することにより、溶液に含

まれる金属(金属イオン)を高効率で回収または除去す

る方法、および、脂質または色素を生産する方法を提供

する。

【解決手段】シアニディウム目の紅藻をその細胞濃度を

106~1010個/mlの範囲内で調整した溶液中で培

養し、溶液に含まれる金属イオンを紅藻に吸収させて回

収することを特徴とする金属の回収方法である。この場

合、紅藻を溶液中で培養する際に、Cl濃度の5mM未

満への調整および/または酢酸の添加を行った溶液を用

いるのが好ましい。また、溶液に含まれる金属イオンの

一部または全部を、溶液に固体として含まれる金属から

溶出した金属イオンとすることができ、すなわち、バイ

オリーチングにより溶液に固体として含まれる金属を溶

出させて金属イオンとし、さらに溶出した金属イオンを

回収することができる、んだそうです。

 

 ということで、うレアアースの高効率・低コスト

回収という新しいリサイクル技術の開発に

つながるといいですね。

 

 ちなみに、微生物関係での回収、リサイクル

関係のIPCは、C22B3/00 「湿式による鉱石

または濃縮物からの金属化合物の抽出」、

C22B 3/18「・微生物または酵素の助けによる

もの,例.バクテリアまたは藻」というもので、

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