知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

鉄腕アトムが手術をしてくれるロボットだったら、鉄腕アトムを使った手術方法は特許化されるのか?

 「今日は、いやにタイトルなげーじゃ

ねーか」とお思いでは?

 

 そーなんです。

 

 実際にこのような判断が必要になる

時期が近づいているんです。

 

 ダヴィンチご存知ですか?

 

 ダヴィンチ。

 

 レオナルド・ダ・ヴィンチではないですよ。

 

(話は違いますが、パリのルーブル

美術館でモナリザを見ましたが、

「え?こんなに小さいの?」という

ぐらいに期待より小さい絵でしたね)

 

 下のようにダヴィンチという医療用の手術

支援ロボットが出てきています。

 

http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/davinci/top/index.html

 

2種類あって、1億7千万円と、2億

4千8百万円だそうですが。

 

 このような手術支援機器の研究開発が

どうなっているのかは後で分析すると

して先に進むと、現在は、このような「手術

支援」ロボットで、ただ支援をしているだけ

なので問題ないのですが、これが意思を

持ったロボットだったらどうなるんで

しょう?

 

 すなわち、まー、鉄腕アトムと請求項に

書いても、いろいろと鉄腕アトムの定義を

しないといけないので書けないでしょうが、

たとえば、「最初はプログラムされた動き

しかできないが、自分で手術の学習をし、

手術をすることができるようになる手術

ロボット」としたらどうでしょう?

(こんな変な請求項じゃ拒絶されるのは

目に見えていますが。

 ・・・・それは置いておいて)

 

 手術支援ロボットと違うのは、お医者さんの

支援をするのではなく、自ら手術をするんです。

 

 現在は、お医者さんが手術をする方法は、

登録されないことになっていますが、手術

(支援)機械はOKとなっています。

 

 つまり、人間がおこなう医療行為はダメと

言っているだけで、ロボットもダメとは言って

いないんです。

(ロボットならOKとも言っていないですが)

 

 一歩譲って、がんを治療する鉄腕アトム

いう請求項は特許化されるんでしょうか?

 

 つまりは、現在は、がん治療をおこなう放射線

治療器はプログラミングをおこなって放射線

当てますが、そのときにお医者さんが立ち会う

方法などは特許化できませんが、放射線治療

自体は特許可能です。

 

 これが一歩進んで、放射線治療器が鉄腕

アトムになってしまうんです。

 

鉄腕アトムは、自分で考え自分で判断しま

すし、お掃除ルンバだってこれに近いでしょう。

 

 下のマツコロイドさんの進化版が手術

できるようになったらどうなってしまうんで

しょう?

 

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1412/02/news095.html

 

 おんなじ性能だったら、私は下の

ロボットに手術してもらったほうが

よいですが。

 

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0803/04/news069.html

 

 まー、特許はともかくとして、薬事法では

安全性云々でなかなか承認が下りないと

思いますね。

 

 ということで、まずは、鉄腕アトムに行く

前に、現在の特許法を見てみましょう。

 

 法律というのは、時代時代によって変遷

していくのですが(この前書いた、江戸時代の

決闘高田馬場は、現在は決闘罪で取り締ま

られてしまうようなものです)、日本の現在の

特許法で、お医者さんがおこなう医療関係は

どのように書いてあるかというと、実は法律に

書いてないんですね。

 

 えー!!というところなのですが。

 

 ということなので、弁理士試験とかで、

「それはどこに書いてありますか」攻撃に

遭った場合には、「医療行為は、29条1項の

柱書(はしらがき)の産業上利用することが

できる発明で読むことになり、詳しくは

審査基準に書かれております。です。はい。」

と答えることになります。

 

 それでは、審査基準にはどのように

書かれているかというと、

 

「お医者さんが、人間の手術をしたり、治療

したり、「はい、胸開けて」とか言って診断

したりする方法は、特許にしてあげないん

だもんねー。

 

 アメリカじゃ動物の手術方法とかも特許に

してもらえないけど、日本では、動物だけの

手術方法とかってはっきりしてるんだったら、

動物の手術方法とかは、特別に特許化して

あげる。

 

 だけど、一言で説明すんのはむずい

から、いろいろ例を挙げて、48ページも

書いといてあげるからよく読んどいてね」

 

 と書かれています。

 

 ということで、医療行為のようなものが

特許化されるか否か?というのは結構

めんどいんです。

 

 まずは、なぜ医療行為が登録させて

もらえないかですが、人が生死の境に

いるときに、お医者さんが手術方法の

特許化云々を心配して措置が遅れて

しまったら大変だ、という人道上の

理由が挙げられています。

 

(ここは、えらーい大先生方が、かん

かんがくがくけんけんごうごうといろ

んな論点を挙げていますので、さらっ

と行くことにしましょう)

 

 まあ、そうはいうものの、ちょっと審査

基準を覗いてみることに致しましょう。

 

 結構中身は難しいんですが、とりあえず

行ってみましょう。 れっつらごー。

 

 そもそも、医療行為ってなんだ?という

ことですが、大きくは先ほど書いた「人間」を

手術、治療又は診断する方法です。

 

 それでは、「人間」を手術、治療又は診断

する方法って何だ?ということですが、お医者

さんや、お医者さんの指示を受けた「者」(者

にはロボットは入りません)が、上記の行為を

おこなうことになります。

 

 まずは、簡単な例から見てみると、外科的な

切開、切除、穿刺、注射の方法は登録されま

せん。

 

 また、口内、外鼻孔内、外耳道内は除く人体内

カテーテル内視鏡などの装置を挿入したり

移動させたり、維持したり、操作したりする方法

は、ブーです。

 

 ただし、内視鏡などの医療機器や、医薬自体は

登録することができます。

 

 次に、手術のための麻酔方法や、注射部位の

消毒方法などの手術のための予備的処置方法も、

ブーとなります。

 

 美容・整形のための手術方法もダメですよ。

 

 さらに、患者さんに投薬、物理療法等の手段を

施す方法も登録されませんし、人工臓器や

義手などを取り付ける方法も、ブーです。

(ただし、人工臓器や義手などは登録可能です)

 

 「あいたたた」の虫歯の予防方法も登録

されませんし、風邪の予防方法も、ブーです。

 

 また、マッサージ方法も、指圧の方法も

登録できませんので、「独自の指圧方法を

考えたんで登録お願いできませんか?」と

言ってもだめなんですね。

 

 電気治療器具は登録可能ですが、電気

治療のための電極の配置方法はブーですし、

機能回復訓練法や、床ずれ防止など看護の

ための処置方法もNGです。

 

 ということで書いてきましたが、もっと

難しい判断事例がありますし、まだ鉄腕

アトムが登録されるか否かの結論も書いて

いませんので、油断した頃に続きを書きま

しょう。(別に油断していないと思いますが)