知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

モルフォ蝶などを応用した、構造発色技術の特許出願

 モルフォ蝶って、きれいですよね。

 

 モルフォ蝶は、北アメリカから南アメリカ

かけて80種ほどが生息するそうです。

 

 凸版印刷さんで、この蝶の光の反射と

散乱を応用した、構造発色シートという

ものを開発しています。

 

p-prom.com

 

 最近話題になっている、バイオミメティクス

(生物模倣)技術ですね。

 

 構造や多層薄膜による物理的作用で

発色するため、顔料や染料を使用しないため、

紫外線による退色がないのが利点だそうで、

記事にあるように、今後は偽造防止やセキュ

リティ商品などに応用していくそうです。

 

 この光の反射と散乱を応用した技術につい

ては、以前にも以下のように取り上げました。

 

oukajinsugawa.hatenadiary.jp

 

 ということで、凸版印刷さんの発明はどの

ようなものなのか、特許出願公開情報から

見てみましょう。

 

 モルフォ蝶関連ではいろいろ出ていますが、

一番新しい特開2016-114770「表示体、及び

表示体の製造方法」を見てみると、

 

「【課題】

 黒色を含め、高い色コントラストを表現

できる導波モード共鳴格子による表示体を

提供する。

 

【解決手段】表示体において、基材の表面側に、

格子層と導波層とが順に積層されている。

上記の基材の裏面側、もしくは上記の基材の

表面と上記の導波層との間に、吸収層が形成

されている。格子層は、回折格子構造により

回折された光と、導波層を伝搬する光とが

共鳴し、共鳴波長領域の光が反射される画素

領域を有し、更に画素領域を除く領域に表面

反射を低減する凹凸構造の集合体からなる

低反射画素領域を有する。吸収層は、少なく

とも共鳴波長領域の光を吸収する。」

となっています。

 

f:id:oukajinsugawa:20161012083333j:plain

 

 モルフォ蝶については、

「【0002】

  モルフォ蝶の鱗粉や玉虫の表皮に代表される

構造発色は、色素や顔料等の分子の電子状態の

エネルギー遷移に伴う発色ではなく、光の

回折や干渉、散乱といった光学現象の作用に

よる発色現象である。

 

【0003】

  例えば、自然界に存在する構造発色のうち、

最も大きい分布を占める多層膜干渉は、積層

体の各界面で発生する反射光が干渉すること

により発生する構造発色であり、特定の波長

域を選択的に透過、もしく反射する波長選択

可能な光学素子に応用することができる。」

となっています。

 

 凸版印刷さんでは、これを応用して、先ほど

書いたように、特開2016-114776「偽造防止

積層体及びその製造方法」などの発明も

おこなっています。

 

 これらの構造色、または構造発色は、いろ

いろ研究されており、たとえば、ボールペン

用水性インキ組成物(特開2016-160325 

ぺんてる)や、口紅化粧料(特開2016-

102065 花王)などにも応用されています。

 

 モルフォ蝶や構造色、構造発色というキー

ワードで特許出願公開検索をかけると、

以下のような企業が研究をおこなっています。

 

f:id:oukajinsugawa:20161012083346j:plain

 

 京楽産業.さんは、ご存知のように、

パチスロ機械メーカーですが、公開文献を

見ると、偽造防止用シールなどを研究して

いるようですよ。