知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

オンコリスさんの、風邪ウイルスで、がん退治

 オンコリス株価が上がったり下がったり

しています。

 

 2013年12月の上場時は、期待も込めて

3,750円と高い水準でしたが、どんどん

値を下げて、2014年の4月に1,000円を

切り、今年2月頃には500円を切っていま

したが、6月頃には2,000円近くにまで

戻し、現在は、また、1,100円ぐらいに

なっています。

 

 デイトレーダーの方、儲かりました?

 

 てなことをいきなり書きだすと、「何

わけのわからねーこと書いてんだよー。 

わかるように書けっつーの」と言われて

しまいますので、おりこーさん??

(オンコリスですね)の正式名称は、

「オンコリスバイオファーマ株式会社」、

本社虎ノ門、設立2004年、資本金50億

7227万8000円、事業内容は、腫瘍殺傷

ウイルス、重症感染症治療薬、 分子標的

抗腫瘍薬、腫瘍診断医薬品などの研究

開発、及び、バイオ医薬品研究開発

コンサル業務、となっています。

 

http://www.oncolys.com/

 

 上のように資本金は、腫瘍溶解ウイルスを

使うがん検査薬での提携一時金で、ある

程度の金額となっていますが、2015年

12月期の売り上げは1億2,100万円、営利は

9億5,100万円の赤となっており、早いところ、

売上を伸ばさないと研究開発費がかさんで

来るわけですが、この前の新聞記事で、開発

中のがん治療薬の中期臨床試験を開始する

ことが書かれていました。

 

 これは、岡山大学の藤原俊義先生らが

開発した、アデノウイルス(風のウイルス

の一種で、プール熱の原因ウイルスなどと

して有名です)の遺伝子を改変した腫瘍

溶解ウイルス「テロメライシン」を使い、

皮膚がんの一種の悪性黒色腫のがん細胞

内で増殖し、がん細胞を破壊する効果が

あるそうです。

 

 記事によると、8月中に米国で申請し、

9月には臨床試験を始めるそうです。

 

 ちなみに、「テロメライシン」は商標

登録4855114号、「Telomelysin」は商標

登録4855115号として、オンコリスさん

から登録されていますので、薬剤には

使わないようにしましょう。

 

 紫外線が強く悪性黒色腫の患者数が多い、

オーストラリアやニュージーランドでも、

試験を計画しているそうです。

(話は違いますが、紫外線が強いので、

オーストラリアなどでは、子供もサン

グラスをしています)

 

 ということで、このテロメライシンって、

どんな発明なんだ?というと、特許3867968

(特開2004-33186)、発明の名称「腫瘍

細胞において選択的に増殖する腫瘍融解

ウイルス」というもので、出願の時には、

オンコリスさんは入っていませんでしたが、

現在の権利者は、関西TLOとオンコリス

さんが共同権利者となっています。

 

 要約を見ると、以下のようになっています。

 

【課題】

 腫瘍細胞において増殖し、抗癌作用を示す

ウイルスを提供すること。

 

【解決手段】テロメラーゼのプロモーター及び

E 1遺伝子を含むことを特徴とする遺伝子を

含むウイルス、及び該ウイルスを用いた抗癌剤

 

 明細書では、「本発明の抗癌剤を適用する

癌の種類としては、限定されるものではなく、

あらゆる種類の癌に用いることができる。

特に、例えば、胃、大腸、肺、肝、前立腺、膵、

食道、膀胱、胆嚢・胆管、乳房、子宮、甲状腺

卵巣等における固形癌に有効である。」と書か

れていますが、上記の悪性黒色腫に応用する

ようです。

 

 海外での権利化も以下のように、おさおさ、

怠りないようです。

 

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 このテロメライシン(OBP-301と言うんだ

そうで)、単独使用以外にも、がん細胞によって

抑制されている免疫細胞を、がんを死滅させる

ことにより、免疫細胞を活性化させ、この

免疫細胞を利用する、以前に書いた、免疫

チェックポイント阻害剤のオプジーボなどの

効果を高めるという併用薬にも使えそうだと

いうことで、現在オプジーボの値段が高くて

問題になっていますので、オプジーボの

投与量も減らせるのではないか?という

ことで、うまくいくといいですね。

 

 ちなみにこのオンコリスさん、テロメスキャン

OBP-401)という、がん細胞検出用試薬も

持っており、特許5006045(WO2006/036004)、

発明の名称「テロメライシン-GFP遺伝子含有

組換えウイルス」となっていますよ。

 

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