知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

ん? カラオケ法理??

 miranitakaさん、読んでいただきありがとう

ございます。雪は大丈夫だったのでしょうか。

 

 それでは、昨日書いたクラブ・キャツアイ事件

というのは何なのか内容を覗いてみましょう。

 

 今回も現代昔話風で行きたいと思います。

 

 むかーしむかしあるところに、おじーさんと

おばーさんがおったそうな。おじーさんは

山へ芝刈りに、おばーさんは川へ洗濯に

行っていたそうな。

 

 おじーさんは、この前の鳥インフル騒動

小金をせしめたので、カラオケスナックに夜な

夜な行っていたそうな。

 

 実はこのカラオケスナックは、この前

金さんに悪だくみを暴かれてしまった悪ーい

王花陣が、取られた小金を回収しようと性懲りも

なく始めたカラオケスナックだったそうな。

 

 悪ーい王花陣は、若いねーちゃんたちを

雇い、若いねーちゃんたちにカラオケ装置を

操作させたり、じーさんに曲目索引リストや

マイクを渡して歌うのを勧めたりしていたそうな。

 

 じーさんは、勧められるままに、カラオケ

テープ(古いですね)での演奏に合わせ一人で

歌ったり、若いねーちゃんと一緒に歌ったりして

おったそうな。

 

 悪ーい王花陣は、このようにして、店の

雰囲気作りをしたりして客を呼び集めて、

儲けていたそうな。

 

 そうこうするうちに、店の隅っこで飲んでいた

一人がしゃしゃり出てきて、「やいやいやいやい、

てめーら、著作権侵害というのを知らねーなっ!

カラオケスナックで歌を歌わせて著作権料を

払わねーのは、演奏権の侵害でぃ。」

と言い始めたので、おじーさんは、

「じぇじぇじぇ!!」とびっくりしてしまったそうな。

 

 男は続けて、「若いねーちゃんが一人で

歌おうが、じーさんが歌おうが、歌謡曲

利用しているのは、カラオケで儲けている

王花陣でぃ。これをカラオケ法理と言うんでぃ。

金さんの顔は忘れてもこの桜吹雪は忘れ

ちゃいめぃ。観念しろぃ。」

 

 と言ったので、金さんの顔に気が付か

なかった王花陣も「じぇじぇじぇ」とまたまた

びっくりしたそうな。(顔は忘れても桜吹雪は

忘れていないという人は、一体全体どんな人

なのでしょう?)

 

 この裁判は、最高裁まで争った有名な事件

で、最高裁判決は昭和63年という時代です。

 

 実際に歌ったりしているのはおじーさんや、

若いねーちゃんたちであり、当時の法律では

経営者を侵害だと言えなかったので、苦し

紛れに?、「儲けているのはあんたなんだから、

あんたの負け!!」とした理屈でした。

 

 この法理については偉い学者さんたちが

いろいろ書いていて、論点も多いのですが、

この手の侵害についての嚆矢となった訴訟

でした。(この法理のほかに、手足論とか、

幇助論とかもあります)

 

 実は、この後にもカラオケ関係の裁判が

いろいろありますので、箇条書きにして

みますと

 

・スナック「クラビクラ・まはらじゃ」事件(高松地裁平成3年)

  上記と同じ理由で経営者の負け。

 

・スナック「魅留来」事件(大阪地裁平成6年)

 スナック経営者も責任があるが、侵害を知って

いてカラオケ装置をリースした業者も共同不法

行為であり、リース業者の負け。

 

・カラオケルーム ネットワーク事件(大阪地裁平成9年)

 歌うのは客であっても儲けているのは経営者

なのだから、経営者が侵害者。

 

 

・カラオケビッグエコー事件(東京地裁平成10年)

 カラオケ装置による演奏・上映主体は客だと

しても、儲けているのは経営者なのだから、

経営者が侵害者。

 

レーザーディスクカラオケ事件(東京高裁平成11年)

 儲けている経営者の負け。

 

・カラオケリース事件(最高裁平成13年)

 ビデオメイツ事件とも呼ばれます。

 カラオケリース業者の注意義務違反。

 

・ヒットワン事件(大阪地裁平成15年)

 カラオケリース業者は、侵害するおそれが

ある者なので業者の負け。

 

 論理構成はそれぞれ異なり、カラオケ

法理を適用しているものや違うものなど

いろいろありますが、大雑把にいうと

上のような結論です。

 

 これだけあると、お客さんは罪にならない

のか?と心配になりますね。 

 

 しかし、公衆に直接見せたり聞かせたり

することを目的として歌っているわけでは

ないので、スナックに行って酔っぱらって、

若いおねーちゃんと(若いにーちゃんと?)

気が済むまで歌ってもらって大丈夫です。

 

 公衆って何だ?というのもありますが、

これも説明すると長くなるので、今日は

この辺で。