知財アナリストのひとりごと

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褐色脂肪細胞で、メタボリックシンドローム対策

http://www.iromgroup.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/20161117_1.pdf

 

 アイロムさんから、上のような発表が

されています。

 

 子会社のIDファーマと国際医療研究

センターとの共同研究ので成果だそうで、

なるほど、調べると、両者の共願となって

います。

 

 特許番号は、5998405号、日本、US

ほかに、EP 中国 カナダ オースト

ラリアへ国内移行され、公開がされて

います。

 

【課題】

 多能性幹細胞を用いて褐色脂肪

細胞を製造する方法と、その中間

産物である細胞凝集物を製造する

方法、並びに、その方法によって

製造される多能性幹細胞由来細胞

凝集物及び多能性幹細胞由来褐色

脂肪細胞、また、多能性幹細胞由来

褐色脂肪細胞を用いた細胞療法と

提供すること。

 

【解決手段】

 多能性幹細胞を用いて褐色脂肪

細胞を製造する方法であって、工程(A)

含む方法により、多能性幹細胞から細胞

凝集物を形成し、工程(B)を含む方法に

より、細胞凝集物から褐色脂肪細胞を

得ることを特徴とする。

(A)多能性幹細胞を、無血清環境において、

造血性サイトカインの存在下で非接着

培養を行い、細胞凝集物を作製する工程

(B)細胞凝集物を、造血性サイトカインの

存在下で接着培養して、褐色脂肪細胞を

作製する工程

 

 要約は上のようになっており、量産化

技術に目途を付けたというものですが、

上の発表にもあるように、以下のような

仕組みになっているそうです。

 

【0002】

 近年、肥満者の数は世界的に増加の一途を

たどっている。「肥満」はあらゆる生活習慣

病の根源と言っても過言ではなく、肥満が

関係する諸疾患(糖尿病、高脂血症や高血圧に

基づく動脈硬化症、及びそれに起因する虚血

性心疾患や脳血管障害等)は、日本を含む

先進諸国における死因の上位を占める。

特に日本人に関しては、欧米人に比べると

肥満の程度が低くても糖尿病を発症しやすい

ことから、肥満対策はより緊急性を帯びている。

また中国、ブラジル、インド、ロシアなどの

新興国では、肥満者の増加率は更に著しい

ため大きな社会問題となっている。

 

【0003】

 肥満治療の基本は、食餌療法及び運動療法

に基づく生活習慣の改善にあるのは言うまで

もないが、肥満者がやせるのは容易なことでは

ない。食餌療法を遵守できない肥満患者は

決して稀ではない。また肥満に伴う諸疾患

(変形性関節症、糖尿病性壊疽、心不全等)に

より運動療法の実施が困難な症例も少なくない。

 一方で、「やせの大食い」の言葉にある

ように、肥満の原因としては摂食過剰や運動

不足以外の「重要な因子」があることは古く

から指摘されてきた。

 

【0004】

 従来の肥満研究においては、白色脂肪組織

WAT)が主たる研究対象であった。

 しかし最近になって、核医学的検査(PET/

CT)のデータを解析した際に、偶然にも、

それまで齧歯類にしかないと思われていた

褐色脂肪組織(BAT)がヒトにも存在する

ことが明らかとなった(非特許文献1)。

同様の報告は相次いで提示され、BAT量と

肥満・メタボリックシンドロームの発症と

逆相関があることも報告されている。

そして現在では、肥満の病態を考える上で

BATは極めて重要な組織と認識されるに

至っている。

 

【0005】

 BATWATは発生的にも非常に異なって

いる。BATは胎児期に既に形成されているが、

WATは主として出生後に発達する。

また、ヒトを含む大型ほ乳類では、生後2

以内にBATの大半が消失(生理的消失)する

ことが知られているが、この機序は全く

不明である。また、残存するBATも加齢に

より漸減するが、この機序も不明である。

 このように、BATを正しく理解するため

には、生後に見られる生理的消失や、加齢に

伴う消失の機序をも解明することが重要と

なる。特に生理的消失の機序解明にあたって

は、マウスなどの小型ほ乳類は役立たない

ことも明記されるべき点である。

 

【0006】

 WATが脂肪を蓄えるエネルギー貯蔵組織で

あるのに対し、BATは脂肪を積極的に燃焼

させるエネルギー産生組織である。両者は、

細胞形態並びに遺伝子発現においても全く

異なる特性を呈する。

 形態学的には、白色脂肪細胞では単胞性の

大きな脂肪滴を含有し、ミトコンドリア

乏しく(少量のミトコンドリアが核周囲に

存在するのみ)、その形態は、酸化的

リン酸化の低活性状態を反映して分断化

している。一方、褐色脂肪細胞は

多胞性の小さい脂肪滴を含有し、ミト

コンドリアは豊富であり(脂肪滴周囲に

局在する)、その形態は、酸化的リン

酸化の高活性化状態を反映して縦に

長くひも状に融合し、内部には多数の

発達した梯子状クリステを有する。

 

 ということで、明細書には、BATの効能に

ついて、さらに詳しく書かれていますので、

痩せたい方は、登録文献を読んでみてくだ

さい。

(ただし、ただ読んだだけでは痩せない

ことを、確信をもって保証します!!)

 

 尚、アイロムさんは、「株式会社アイロム

グループ」、本社は東京の千代田区、設立が

1997年、東証一部上場で、資本金が3.037

百万円、連結売上高が41,275百万円、連結

従業員数359名、事業は、医療機関向け

治験支援(SMO)事業が主力で、SMO72%、

メディカルサポート11%、新規事業16%、

その他1%となっています。

会社四季報による)