知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

「0000」 その2  超能力

 今回は、「0000」が割り振られる出願

て、どんなものがあって、どんな拒絶の

理由になっちゃうんだ?」というのを

出願されたものから見てみましょう。

 

 今回取り上げるのは、特開2014-155432

「超能力」というものです。

 

 まずは、要約に書かれている課題は

以下のようになっています。

 

「【課題】46億光年。人間は会った人間

しか会話できなかった。超能力は非現実

的だった。世界初の超能力会話テレパ

シーを開発し自由自在に実現、他の

超能力の開発実現する目的である。」

 

 要約に書かれている解決手段は、特許

請求の範囲に書かれている文言とほぼ

同じですので、特許請求の範囲を貼り付け

ると以下のようになっています。

 

「【請求項1】

2003年(平成15年)10月。世界初、

超能力会話開発。人間は会った人間に

しか会話ができなかったが超能力は

会わなくても話せる能力。最初、超能力は

心と心を頭に送る。口は動かさない能力。

見えない相手でも人間同士が話せる手段を

発見。明石市の標準子午線東経135度の

天文科学館の横の家からです。(王花陣注:

発明者&出願人の方は兵庫在住の方です)

私は関東(江戸城)から明治時代に神戸の

山奥に移り住んだ左大臣の家系で代々

揚羽蝶の女紋。皇族なので神様とあがめ

られTV、故郷の新潟地震で日本中、世界の

首脳国に超能力が浸透していった。

天皇は一代目夫婦が揚羽蝶の家紋だと

話されネットにも皇族と載っていたサラブ

レッドの揚羽蝶の血筋なので超能力が

現在覚醒したと言われ時代の蝶として

有名です。

4年後は熱帯夜時代を開発。色恋も

流行り、そして急激に超能力の能力が

増え、芸能界は特に派手で世界中

喜ばれた。相手の体も動かせる

サイコキネシスや空中に映像を映し

出せる念写等、バリエーション豊かに

表現力が増し、新しい世界に没頭

費やしていった。

世界中翻訳がいらないので他国と

共有、世界平和に務め、人類を救うの

に役立てました。宇宙も会話が届き

ますが、ナサが一緒に調べて宇宙人の

声が届かないのは地球上の動物が

超能力がないのと同じ可能性がある。

子供は9歳ぐらいはわかり、10歳から

会話できてます。人間の一番最初の

会話の初めと一緒ですが今では自由

自在に話せます。祖先の人類学や

文学にも役立てられる。

科学では考えられない潜在意識を

引き出し超常現象など、あらゆる超能力の

可能性を秘めているので開発に取り

組んでいます。

 

【請求項2】

病気など腫瘍が小さければ毎日願うと

念力で治すこともできる。6年後芸能界に

疫病が蔓延してたのを一年半後秋に気が

付き処方箋をまき疫病を半分に減らし、

世界中も5百人から千人助けたと言わ

れています。

約20年前までの亡くなった魂と会話

できる。死亡してすぐも会話できますし、

5年ほど会話続けていますし、心で覚えて

いるという話。超能力で聞いた脳の権威の

話は、超能力を使っても脳は動いていな

いという。死亡した人間の輪廻転生は

ないと思われたが、幽体離脱を体験、

寝た姿で1m上に浮き上がり自分の姿が

見えたが2,3秒で心が体に戻りました。

以上。2人の幽体離脱で体の交換の

可能性も発見。

超能力で大勢救い八坂神社に神社仏閣

の建造を進められ阿倍首相に特許申し込み

教わった。超能力は永遠なので神社仏閣を

世界初超能力発祥の土地に建て奉納する

ため。私は揚羽蝶の女紋ですが天皇皇族の

紋だと天皇は話されています。」

 

 ということで、この出願は2013年

2月に出願され、審査請求が同年3月に

されており、2014年2月に拒絶理由が

通知され、審査官とのファックスや電話での

応対がされたり(電話応対は3回され、

ファックスでは、審査官が書き方のサンプルを

送ったり、補正方法などを説明しており、

特許庁さん、最近サービスいいですね)、

手続補正書が提出されたりしたのですが、

2015年1月に拒絶査定が送付されました。

 

 その後も、電話での応対が3月と6月に

計3回おこなわれ、その後7月と8月に

計3通の補正書が提出されましたが、

「手続補正書に係る手続は、特許庁に係属

している出願に対して行うものです。」

などという却下理由通知書が8月と9月に

送付されています。

(拒絶査定が確定したら、手続補正書を

提出してもダメですよ)

 

 ということで、今後もまだ補正書を提出

したりするのかもしれませんが、今回の

テーマである、どんな拒絶理由が通知

されたのか?というのを見てみましょう。

 

 拒絶理由は36条6項2号の明確性要件、

同条4項1号の実施可能要件があるのですが、

「0000」に関係するのは、「29条第1項柱書に

規定する要件を満たしていないので、特許を

受けることができない。」というものと思い

ますので、何と書いてあるか見てみましょう。

 

「1.請求項1ないし2に係る発明が、特許法

第29条第1項柱書に規定されている「産業上

利用することができる発明」に該当するため

には、少なくともこれらの発明が「自然法則を

利用した技術的思想の創作である」という

要件を満たす必要がある。

 しかしながら、以下に示す理由により、

請求項1ないし2に係る発明は上記要件を

満たさない。

 

2.超能力が自然法則の枠内で実現できない

ことは一般的に知られていることであって、

これを覆す事実が発明の詳細な説明に

おいて客観的な事実として記載されている

とは認められない(「理由2」の説示を

参照。)から、請求項1ないし2に係る

発明は、自然法則を利用した技術的創作

とは認められない。

 仮に、発明の詳細な説明に記載された

各超能力(念力、幽体離脱等)が出願人

自身によって開発(覚醒)されたことが

事実であったとしても、これを知識とし

て第三者(当業者)に伝達できるほどの

客観性は認められないから、請求項1

ないし2に係る発明は、単なる個人的な

技能であって技術的思想とはいえない。

 

 なお、上述のとおり、請求項1ないし

2に係る発明は、当業者が実施すること

ができないものであり、また、著しく

不明確であるから、現時点で先行技術の

調査は行っていない。」

 

 ということで、「0000」が割り振られる

出願というものは、まずは、自然法則を

利用した技術的創作ではないし、技術的

思想でもないし、かつ、「IPCのどの技術

分類に入れればいいんだ?」などと大いに

悩んでしまう出願のようですね。

 

 ちなみに、発明の名称に「超能力」という

文言が入っているのは、この出願と、もう

一つ、特開2005-110707「超能力チェック

玩具」というものがありました。

(「超能力チェック玩具」のほうは、おもちゃ

なので、おもちゃの技術分類のA63H33/26が

付されています)

 

 

2016年8月4日追記:

 上の特開2014-155432は、2015年11月10日に、

「この処分について不服がある場合には、~~

特許庁長官に対して、行政不服審査法による

異議申立てをすることができます。」という

却下理由が通知されて、その後、やり取りが

ないようですので、一件落着したようです。