知財の重要性を説明して来ました。
しかし、従業員数も多く体制が整っている
企業ならいざ知らず、従業員数が数名と
いう零細企業で本当に知財活動が必要
なのか?という疑問も湧きますし、所詮、
下請けなので特許権取得など夢のまた夢
と考える場合も少なくないのでは?と思い
ます。
そこで、今回は従業員数が数名という
企業を取り上げてみます。
事業戦略と知的財産マネジメント(社団法人
情報・研修館が企画作成し、特許庁が監修し、
主に大学の経営系学部学生用に作成した
教材があります。
学生向けなので税抜き858円と非常に
お手頃な値段なのですが、知財エッセンスが
いろいろ詰まっておりなかなかよくできた
教材です。(ただし、学生には少し難しいの
ではないかとは思いますが)
この中で、従業員は社長を含め3人という
企業の知財マネジメントも取り上げられて
いますので、これを紹介してみましょう。
(テレビ、新聞、雑誌などでも取り上げられて
います)
この企業は有限会社後藤金型興業所と
いうところで、社長さんと2人の息子さんの
3人でおこなっている家族経営の企業です。
http://www.gotokanagata.com/2_1.html
HPを見てもらえばわかりますが、この企業は、
あの大田区にあり、事業内容は、プラスチック
金型の、設計・製作というものです。
経産省では、廃エアゾール製品等の適正
処理、及びリサイクル促進を打ち出しましたが、
後藤金型では、これを好機ととらえました。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=6830
参考ですが
日本エアゾール協会
http://www.aiaj.or.jp/index.html
日本エアゾール容器協議会
http://eayokikyo.jp/index.html
後藤金型では、2002年に特許出願し、
2005年にガス抜きキャップの特許を取得して
おり、2004年度の大田区新製品コンクールで
最優秀賞を受賞していました。
このため、経産省のリサイクル促進を
好機ととらえ、最初の特許権の取得で満足
せず、さらに発明をおこない権利化につなげ、
大幅なコストダウン、さらなる金型受注、取引の
なかった金融機関からの資金融資などの話も
舞い込んだそうです。
先程の、知財マネジメント教材によると、
これで満足せず、意匠権の取得と共に大手の
東洋製罐に専用実施権を設定したそうです。
専用実施権とは、ライセンスされた相手(ライ
センシー)だけがその特許発明を実施できる
権利です。(ライセンスをするほう(ライセンサー)
も実施できなくなります)
つまりは、ライセンシーだけが実施できるわけ
ですので、そのライセンシーは、他の人が模倣を
したりした場合、差し止めをおこなったり、いろいろ
気をつけることになります。(専用実施権者は、
差し止めや侵害訴訟を起こすことができます)
このように、自分のところで体力がなく、
侵害者を見つけても訴訟などを起こせないと
いう場合などは、大手に権利をライセンスする
という戦略をとることができます。
知財マネジメント教材では、その他のマネジ
メントについても触れられていますが、長く
なってしまいますので、本日はこの辺で。