知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

知財戦略入門編  「切り餅事件」

  それでは、知財戦略をおこなっておらず苦い

 経験となった事例を取り上げてみましょう。 

 

 事例は、この前取り上げた、「切り餅事件」

 です。

 

 これについては日経ビジネス20125

 7日号で佐藤食品工業(株)の社長さんがいろ

 いろ語っています。 

 

 当事者の話としてはやはり自社は問題が

 なかったというところに論点がおかれています

 が、外部の者はどれが真実なのかはよくわかり

 ません。 そのため上げ足を取るわけではない

 ですが問題点を書かれている通り記載して

 みます。

  

 「ただ、当社の特許や知財に対する認識が

 甘かったことは、認めざるを得ません。」「正直、

 中間判決という言葉は初めて聞いたので、その

 言葉の持つ意味もわかりませんでした。」

  

 「今回の一件で、当社も知財の重要性に

 目覚めさせられました。(途中省略)今後は

 毅然と自社の権利を守りつつ、それでも業界

 全体の発展に寄与していきたいと考えて

 おります。」

  

 「自社の製品が越後製菓の技術的範囲に

 属するとは夢想だにしなかった。」

  

 佐藤食品工業は創業者の考えを汲み、特許を

 主張して、使用料を求めるビジネスはしないと

 いう社風があるのだそうです。 

 

 他のメーカーの社長も、「サトウ食品は新技術で

 業界を常にけん引してきた。 たとえ特許を取得

 しても、その権利を県餅工に無償で供与する。

自社の利益より、業界発展を優先してきた。」と

 話しています。

  

 日本人は元来相手に対しても性善説を取る

 傾向が強いですが、他の国も同じとは限りま

 せん。

  

 海外は侵略の歴史が繰り返されて来ました

 ので、人の弱みに付け込むということがいくら

 でも起こり得ます。

  

 自分のところは大したことはないと考えて

 いると、いつ同じようなことが起きるかわかりま

 せん。

 

 海外と競争をして行かなければ勝ち抜け

 ない時代になりましたので、なおさら、しっかり

 知財マネージメントをおこなわないと足元を

 すくわれることになります。

 

  また、「私は知らなかったので」というのも知的

 財産権に関しては通用しません。商売をしている

 以上、注意を払うべきだという考えがあるからです。

  

 これを、きちんと特許情報分析をおこない戦略

 分析をしていればこのようなことは起こり得なかった

 と思います。

  

 これを証明するために、越後製菓と佐藤食品

 工業の特許情報分析をおこなって確かめて

 みましょう。

 

 あとがき:

  130日に、「最近は、切り餅を買って来て

 食べるのが一般的」と書きましたが、その日の

 夜のテレビ「秘密のケンミンショー」で、お餅の

 話をしていました。

 

 山形の置賜地方の話をやっていたのですが、

 置賜地方の家庭では、どこでも家庭用餅つき機を

 持っていて、一年を通して餅を食べているのだ

 そうです。 

  

 (餅で特許検索をかけると、餅つき機関係も

 出てきます。)

  

 切り餅業者は同業者だけでなく、他業界とも

 競争しなければならないので大変です。

  

 このように、考えてもいなかった業界とも競争

 関係となることがありますので、知財分析、知財

 戦略を常におこなう必要があります。