知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

ヒラメの冬眠??

 本日も、この前の特大がっちりマンデー

でやっていたもので、「ヒラメ」編です。

 

 なんでも、2013年に青森県八戸水産

高校がヒラメを冬眠させる実験を日本で

はじめて成功したそうで。

 

 これを応用して、水無しで、活きた

ヒラメを運ぶ箱を積水化成品工業

宮城大学が完成させて、ヒラメを冬眠

させて、水無しで青森から東京に運ぶ

実験の模様が放送されていました。

 

 月刊食品包装によると、冬眠させると、

水無しでヒラメが24時間生きている

んだそうですね。

 

 水の中でヒラメを冬眠させたあと、

引き上げると、ちゃんと、エラ呼吸を

していましたよ。

 

 その後、水なしでヒラメを箱に入れて、

青森から東京までヒラメを運び、再度

箱から出して水に入れると、普通に

泳ぎ出しました。

 

 同時に水に入れて運んだヒラメと、

冬眠水無しヒラメの食べ比べをしていま

したが、冬眠させて運んだヒラメのほうが、

「おいしい。旨みがある!!」とかやって

いました。

 

 水無しで輸送できるので、軽量、簡便に

輸送でき、今後、海外への活魚輸送など

に応用していくんでしょう。

 

 ということで、ヒラメの冬眠って、どう

やってやるんだ?ということなのですが、

番組では、「秘密のアッコちゃん」、だと

いうことで、教えられないと言っていま

したので、ちょっと、調べてみることに

致しましょう。

(話は違いますが、ちょっと前まで、NHK

プレミアム夜ドラマで、蓮佛美沙子さんと

戸田菜穂さんが出ている、「ランチのアッコ

ちゃん」というのをやっていましたね)

 

 それでは、またまたプラピさん(J-PlatPat)

にお世話になることとして、「冬眠ヒラメ、

出て来いやー!!」と叫ぶと、出てきま

したね。

 

 出願番号が2013-32811、出願日が

2013年2月ですので、まだ審査請求が

されていませんが、発明の名称が

「冬眠誘導方法及び無水輸送方法」

というものです。

 

 出願人は、「青森県産業技術センター」

で、発明者の方は、八戸水産高校の工藤

先生(番組では、実際の冬眠方法の説明を

していました(秘密とは言っていましたが)、

青森県産業技術センターの3名と、宮城

大学の君塚先生ですね。

 

 それでは、内容を見てみましょう。

 

 魚類の商品価値は鮮度であり、鮮度を

維持して消費者まで運搬する方法としては、

大別して活魚として運搬するものと、冷凍

などの低温で運搬するものがあるんです。

 

 特に、魚類を調理して提供する料理屋、

飲食店などにおいては、新鮮で美味な

魚料理を提供できるように、魚類を生きた

まま保管、陳列するための水槽や生簀

(イケス)を備える店舗が増えています。

 

 うーん、よく見る光景ですね。

 

 魚類を生きたまま配送するためには、

輸送中の魚類の傷み防止や鮮度維持を

目的とする様々な輸送技術が開発されて

いるんですが、活魚の運搬には、生簀を

備えた船舶や車両により運搬されていま

すが、一般には活魚の重さの1.5倍以上

10倍程度の水が必要で、更に曝気装置

(金魚を飼うときの、空気ポコポコ

装置ですね)も必要であるため、輸送

費用が高いというのが問題点だそう

ですよ。

 

 例えば、1尾のヒラメを運搬する場合、

3~3.5キロの海水をいれた生簀を同時

に運ばなければならなくて、魚類の種類や

特性に応じた生簀が必要なんですって。

 

すべての魚類を同様に運搬することは

困難で、運搬中における魚類同士や

生簀との衝突などによる魚体の損傷、

長期間の運搬における餌の問題、

輸送中の海水温度変動による魚類

自体のストレスや疲労等で、いわゆる

活き痩せ状態となったりして、捕れたて

の状態を維持するのは簡単ではない

そうです。

 

 ということで、冬眠方法を考えた

そうで、従来から無水輸送が検討されて

いるコイやフナに比べて、蘇生率が低い

ヒラメ実験をおこなっており、ヒラメ

以外の、べラ、ボラ、ハゼ、ウツボ

カワハギ、アジ、タイ、フグ、オヒョウ、

ベヘレイ、イカ、ノセチア、カムルチー

コイ、フナ、ティラピア、ヤイトハタ

チャイロルハタ、スジアラ、ドジョウ、

ナマズなどのような冬眠もしくは

疑似冬眠する種々の魚類に、この冬眠

誘導法、無水輸送方法が適用可能なんだ

そうです。

 

 それでは、どうすればよいかですが、

ヒラメの場合、成魚の生息水温の適水温域

8~23℃程度、成魚の生息水温の最適

水温域14~17℃、ヒラメの低温側限界

水温5℃から、2つの水温を割り出したん

だそうです。

 

 ということで、2つの水槽を用意し、

最初の安静畜養水槽温度を10~12℃と

決定して、第2の冬眠水槽5~7℃として、

さらに実験をしたところ、最初の水槽を

10℃として24時間以上入れておけばよく、

その後、5℃にした第2の水槽に4時間

入れることが無水生存時間30時間と

なることを見出したんです。

(これ以上短くても長くても、またこれ

より低い温度でも無水生存時間は短く

なってしまうと、明細書には書かれて

いますが、番組では、5℃の水槽にも

1日入れていました)

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 さらには輸送時の酸素濃度を60%以上に

すると、無水生存時間が50時間となり、

さらに良いのを発見したんです。

 

 積水化成品工業宮城大学が開発して

いる輸送箱というのは、普通の発泡スチ

ロールのようでしたが、安価な発砲スチ

ロールで、ヒラメが動かず、なるべく

酸素濃度を保持できるような箱形態の

開発をしているんでしょう。

 

 テレビでは、「冬眠方法は秘密だ」と

言っていましたが、このように特許出願を

することにより、内容はわかってしまい、

特に、方法の発明などは、他人にその方法を

教えるだけになってしまう可能性もあり

ますので注意が必要です。

(そのほかに、明細書だけではわからない

ノウハウがある場合には問題ないですが)

 

 ということで、私もこっそりこの発明を

真似して、おいしいヒラメを食べることに

致しましょう。

(てゆーか、自分でヒラメ釣れないし)