知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

アビガン その2  富山化学工業(株)アビガン特許出願分析

 この前、アビガンについて書きましたが、

ノロウィルスにも効くんじゃないかとか、

何かすごいことになっていますね。

 

 効果があればよいのですが。

 

 ということで、効果のほどは我々のほうでは

わかりませんので、前回書かなかった、アビガン

についての特許を調べてみましょう。

 

 まずは、得意のIPDLで、出願人は「富山

化学工業株式会社」さん、要約+請求の範囲で

「インフルエンザ」、これを特許公報で検索を

かけると、出てきました。 5件ですね。

 

 少ないので、これを読んで特定してもよいの

ですが、めんどいことは嫌いな王花陣なので、

これを富山化学工業さんの発表している、

「ノイラミニダーゼ」(「ゼ」という言葉がなかったら、

何か変身ヒーローの名前っぽいですが)と

いうキーワード(要約+請求の範囲)で絞り

込むと、出ました、出ました。

 

 1件。

 

 特許第5255456号ですね。

 

 出願が20082月で、登録は2013

4月、薬事承認が20143月でした。

 

 富山化学工業さんの3月のニュースリリース

では、エボラ熱のことは書かれておらず、

新型インフルに備えるということでしたので、

次の年のインフルに備えようというところ

だったのでしょう。

 

 特許公報の「発明の効果」を見ても、インフル

のことしか書かれておらず、富山化学工業さん

でも予想もしていなかった効果?なのでは

ないかと思います。

 

 この前書いた、大幸薬品さんの「除菌・消臭

スプレーでもそうでした。

 


早く発売してくれぃ!! - 知財アナリストのひとりごと

 

 発明者は前川仁子さんという方、一名

だけですが、特許事務所の代理人の方が

12名、とかなり気合が入っていましたね。

 

  出願情報を調べると、拒絶理由通知書が

来て補正書を出したりして、気合いが入った

でしょう。(気合を入れるために代理人を多く

しているわけではありませんが)

 

 前川仁子さん、ほめてもらえたでしょうか?

 

 この前ノーベル賞に輝いた中村修二さんも、

発明の対価に対して訴訟を起こしましたが、

前川仁子さんの報酬はどうなったのでしょう?

 

 (人の報酬の話という下世話な話ですみません)

 

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 職務発明制度も企業側からの強い要請で、

いよいよ、特許を受ける権利を法人側に

移すようですが、大丈夫なのでしょうか。

 

http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/newtokkyo_shiryou009/02.pdf

 

 ということで、話を戻して、富山化学

工業さん、ワールドワイドでの権利の

取得に対してはどのようにしているのか

というと、この特許出願はPCT出願と

いう方法で、全世界にばらまいているん

ですね。

(ちょっと意味が違いますね)

 

 以前に、特許というのはファミリーと

いうのがあると書きましたが、一つの

出願で、世界に出願する、つまり家族

みたいなもんですね。

 

 ということで、ファミリーを見てみると

以下のようになりました。

 

f:id:oukajinsugawa:20141022121157j:plain

 

 上記は公報が発行されたもので、順に上から

左回りで、ロシア、ポルトガルニュージーランド

メキシコ、韓国、日本、イスラエルクロアチア

スペイン、EUデンマーク、中国、カナダ、

ブラジル、オーストラリア、南アフリカ、国際

公開、USスロベニア、と富山化学工業さん、

気合いが入りましたね。

 

(同じ国があるのは、出願公開とか、登録とかが

あるものなどです)

 

 と、ここで、なんか変だな!!と気が付いた

あなた、

 

 あんたはえらい!!

 

 ドイツとか、英国とかないですよね。

 

 富山化学工業さん、こんなに気合いを入れて

登録しているのに、ドイツとか英国とか

主要国に登録しなかったのでしょうか?

 

 これには深ーいからくりがあるんです。

(私がいつも書く、「深ーいからくり」というのは

たいしたからくりではありませんが)

 

 実は、上記は公開されたものだけで、EPO

というヨーロッパの特許庁(歌手の名前では

ないので念のため)に一括して登録されると、

国によっては公開されないところがあります。

 

 それでは、EUの中で、どこに登録されたの

か、というのは、INPADOCというところで

調べることができます。(タダです)

 

 長くなるので今回は方法を書きませんが、

調べると、このほかに、オーストリアベルギー

ブルガリア(ヨ~~グルト)、スイス、キプロス

チェコ、ドイツ、エストニアフィンランド

フランス、英国、ギリシャハンガリー

アイルランドアイスランド、イタリー、リトアニア

ルクセンブルグラトビアモナコ、マルタ、

オランダ、ノルウェイポーランドルーマニア

スェーデン、スロバキア、トルコ、というように

すごいことになっていました。

 

 かなりお金を使ったんでしょう。

 

 商標アビガンのほうは、商標登録マークが

ついていますので調べると、登録番号が

4500382号で、商品等は薬剤、標準文字

というもので登録されていました。

 

 ところで、ところで、なのですが、こんなに

大事な薬なのですが、もしも特許権者の

生産能力が追いつかなかったらどうなって

しまうんでしょう。(あくまで、仮定の話です)

 

 患者がどんどん出ているのに、特許権者で

ない人は製造できないわけですので、困って

しまいますよね。

 

 ということで、このような場合に備えて、

特許法では、「公共の利益のための通常

実施権」というのを用意しているんですね。

 

 まあ、この詳細はそのうち書くとして、

生産能力が追いつかなくても、法的には

大丈夫ということです。

 

 (法的に、と書いたのは、他社が製造の

ライセンスを受けたとしても、すぐに同じ

薬品を製造できるか?というのとはまた

別だからです)

 

 ということで、それでは、また。