知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

ダチョウの首から人工血管

 この前、新聞で、吹田市にある、国立

循環器病研究センター研究所が取り上げ

られていました。

 

 この研究センターは、循環器の病気の

治療研究に特化した研究拠点だそうで、

新聞では、動物の動脈を加工した人工

血管や、動脈硬化を防ぐ核酸医薬、血栓

できて命に関わる難病「血栓性血小板

減少性紫斑病(TTP)の診断技術開発が

紹介されていました。

(研究センターのHPは以下)

 

http://www.ncvc.go.jp/

 

http://www.ncvc.go.jp/res/

 

 ということで、どんな研究なのか、ちょっと

調べて見ましょう。

 

 まずは、ダチョウの首の動脈を加工した

人工血管ですが、心臓の冠動脈や手足の

血管に血栓ができて詰まったり、交通事故で

切れたりすると、代わりに合成樹脂製の

人工血管を移植するのが一般的だそう

ですが、直径5~6mm以下だと血栓

できて詰まりやすいそうで、糖尿病等で、

脚を切断する患者など、直径3mm未満の

人工血管を必要とする人は、潜在的に、

国内で年間2~4万人に達するそうです。

 

 このため、直径2~4mmのダチョウの首の

動脈を、移植後の細胞内の蛋白質の炎症を

起こさないようにするため、移植前に10K atm

の高圧をかけ、さらにダチョウのDNAを

分解する酵素で洗う処理をすることで、ヒトへ

の感染が懸念されるウイルスも取り除ける

のだそうです。

 

 ブタ、ヤギに移植し、現在経過観察中だ

そうですが、どんな発明か見てみると、

特開2015-134159「人工血管、および、

人工血管の製造方法」というもので、

 

課題は、

 

「生体内で所望の期間機能した後で分解

され、分解が進むにしたがって、生体内で

再生された血管組織に置換される人工血管、

および、当該人工血管の製造方法を提供

する。」

 

ことで、解決手段は、

 

「生体由来の血管組織から細胞を除去して

得られる細胞外マトリックスによって形成

されている人工血管であって、上記細胞外

マトリックスは、架橋剤によって架橋されて

おり、上記細胞外マトリックスには、増殖

因子が付加されている人工血管を用いる。」

 

ことだそうで、人工血管に用いる生体は、

 

「走鳥類(例えば、エミュー、キーウィ、

ダチョウ、ヒクイドリ、または、レアなど)が

好ましいといえる。走鳥類の首は一般的に長く、

当該首に存在する頚動脈などの血管は、細く、

長く、かつ、分岐が少ない。それ故に、走鳥類

の血管を用いて人工血管を作製すれば、内腔の

断面がより小さく、より長く、かつ、より

分岐の少ない人工血管を実現することができる。

このような人工血管は、臨床の現場において、

極めて有用であるといえる。また、走鳥類など

は飼育が容易であるために、多量の血管組織を

安定的に供給することもできる。」

 

そうですよ。

 

 話は変わって、このセンターでは、動脈

硬化を促す血中コレステロールが増える遺伝

病の創薬研究もおこなっており、悪玉コレ

ステロールを増やす「PCSK9」というたんぱく

質ができるのを阻む一本鎖DNA医薬を開発

したそうで、ヒトや動物に投与すると分解し、

合成を阻むのだそうです。

 

 この医薬は、企業と3年後に臨床試験

目指すそうですが、発明を見ると、特開

2015-165772「オリゴヌクレオチド、および

オリゴヌクレオチドを有効成分として含有

する脂質異常症治療剤」となっており、

 

【課題】

 PCSK9遺伝子を標的としたより低い用量で

より高い脂質異常症治療効果を奏するオリゴヌ

クレオチドを提供する。

 

【解決手段】

 糖修飾ヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチド

であって、該糖修飾ヌクレオシドが、4’位と2’位

との間に架橋構造を有し、ヒトPCSK9遺伝子と

結合し得、該ヒトPCSK9遺伝子が、特定の塩基

配列、またはこれらに相補的な塩基配列のいずれ

かを含む塩基配列からなるDNAまたはRNA

ある、オリゴヌクレオチド

 

だそうです。

 

 さらに、センターでは、「血栓性血小板

減少性紫斑病(TTP)」診断技術開発も

おこなっており、患者の9割が、体内の特定の

酵素の働きが失われて、急に、この病気を

発症するんだそうです。

 

 血液の成分を入れ替える治療で、ほとんどは

助かるそうですが、数日治療が遅れると、9割が

亡くなってしまうそうで、早期発見が重要なの

ですが、酵素を含む血液を酵素が働いてできる

ペプチドに混ぜると光る試薬を、開発したんだ

そうです。

 

 発明は、特許3944586「フォンビルブランド

因子切断酵素の特異的基質および活性測定

法」と、特許4121764「血栓形成傾向素因の

検査方法」というのがあり、特許4121764を

見てみると、

 

【課題】

 本発明の目的は、血栓形成傾向素因の検査

方法、並びに血栓形成傾向の治療に有用な

化合物のスクリーニング方法の提供を課題と

する。

 

【解決手段】

 VWF切断酵素の活性低下の原因となる

ADAMTS13遺伝子の多型を検出する工程を

含む、血栓形成傾向素因の検査方法が提供

された。この検査方法により、血栓性血小板

減少性紫斑病素因等の検査が可能となる。

血栓性血小板減少性紫斑病は、抗血小板

医薬製剤の投与に起因する副作用として

重要な疾患である。その素因の検査は、

抗血小板医薬製剤の安全性の向上に貢献

する。

 

 となっています。

 

 ちなみに、国立循環器病研究センターの

出願公開を調べると、以下のようになって

います。

 

f:id:oukajinsugawa:20170207135246j:plain

 

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 公開年を見ると、2011年から急激に

伸びており、最近頑張っているようですね。