知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

J-PlatPatを使い倒そう その28 動き商標というのが商標の定義に追加されたそうですが、それって、どこに書いてあるんですか?

 商標の定義というのは、商標法の2条

1項柱書というところに書いてあり、

ちょっと前までは、以下のようになって

いました。

 

 「この法律で「商標」とは、文字、図形、

記号若しくは立体的形状若しくはこれらの

結合又はこれらと色彩との結合(以下

「標章」という。)であつて、次に掲げる

ものをいう。」

(以下、省略)

 

 ところが、平成26年5月14日の

平成26年法律第36号「特許法等の

一部を改正する法律」で、次のように

なったんです。(施行は平成27年

4月1日から)

 

 「この法律で「商標」とは、人の知覚に

よつて認識することができるもののうち、

文字、図形、記号、立体的形状若しくは

色彩又はこれらの結合、音その他政令

定めるもの(以下「標章」という。)で

あつて、次に掲げるものをいう。」

(以下省略)

 

 ということで、「なるほど、色彩とか、

音とかの商標っていうのができて、動きの

商標とかは、政令っていうものに書いて

あるんだな?」(政令委任要件と言います)

などとつぶやきシローさん状態で、政令

(商標法施行令)を見てみても、1条から

4条までしかなくて、「動きの商標を定義に

組み入れまーす。」などと一言も書かれて

いないんです。

 

 「えーっ」、ですよね。

 

 ということで、弁理士受験ブログではない

ですが、口述試験の、「どこに書いてあり

ますか」攻撃を受けたときのために、

ちょっと調べておきましょう。

 

 これは、たとえば、特許庁審査業務部

審査官の鹿児島直人さんという方が、

「平成26年特許法等の一部を改正する法律

における商標法の改正の概要」というもので

説明しており、ちょっと長いですが貼り付け

ると以下のようになります。

 

「今回の商標法の商標の定義の見直しにより、

新たに定義に規定されたものは「色彩」のみ、

「音」及び「政令で定めるもの」の3つですが、

これらに加え、「動き商標」、「ホログラム商標」

及び「位置商標」も今回の改正により保護がされる

ことになります。これらの商標は、現行の商標法に

おいて既に保護対象となっている文字商標や図形

商標等の範疇に含まれるものとし、これらに関する

商標の定義の見直しは行われなかったものです。

つまり、「動き」及び「ホログラム」の商標は、

文字や図形等からなる商標であって、その商標が

時間の経過又は視認する角度により変化するときに、

その変化の前から後までの一連の様子であり、

「位置」の商標は、文字や図形等からなる商標で

あって、商品や商品の包装等に付される位置が

特定されるものになります。このため、従来から

商標として保護することが可能なものともいえ

ますが、従来はこれらの商標を出願し登録する

適切な方法が整備されていませんでした。

そのため、今回の新しい商標の保護の導入に際し、

後述する出願方法等の整備を行うことにより、

新たに商標として保護することが可能となった

ものです。」

 

 ということで、商標法の5条2項の1号も

改正され、「図形とかが変化するものを、商標

登録受けたいんだったら、変化の前後がわかる

ように書いて来いよなー。」となって、商標法

施行規則のほうも、4条で、

 

「(動き商標の願書への記載)

第四条  商標に係る文字、図形、記号、

立体的形状又は色彩が変化するもので

あつて、その変化の前後にわたるその

文字、図形、記号、立体的形状若しくは

色彩又はこれらの結合からなる商標

(以下「変化商標」という。)のうち、

時間の経過に伴つて変化するもの(以下

「動き商標」という。)の商標法第五条

第一項第二号 の規定による願書への記載は、

その商標の時間の経過に伴う変化の

状態が特定されるように表示した一又は

異なる二以上の図又は写真により

しなければならない。 」

 

と、言葉の定義が書かれており、商標審査

基準(最新版は12版です)のほうも、

 

「動き商標と認められる例

願書に記載した商標から、時間の経過に

伴う標章の変化の状態が確認でき、商標の

詳細な説明にも、その旨を認識し得る

記載がなされている場合。」

 

となりました。(商標審査基準には、動き

商標と認められない例」というのも書かれて

います。)

 

 こういうことですので、口述試験で「どこに

書いてありますか」攻撃を受けたときには、

「ぼく、知ってるもんねー。簡単、簡単。」

と言うことに致しましょう。(受験業界では

このへんのことはしっかり教えていて、

もしかすると常識なのかもしれませんが、

受験業界に身をおいていないので、常識

なのかそうでないのか、よくわかりません、

です、はい。)

 

 尚、音とかの商標の定義は法律に書か

れているのに、なんでほかのものは政令

書くようにしたんだ?というのは、平成26年

特許法等の一部改正「産業財産権法の解説

特許庁総務部総務課制度審議室編)と

いうのに理由が書かれており、

 

「諸外国での権利取得の事例が相当程度

ある商標について、将来的な保護ニーズの

高まりに迅速に対応し保護対象に追加

することができるよう、商標の定義を政令

委任することとした。」

 

 として、「法律だと、改正めんどいから、

政令で簡単にすましちゃお。」ということに、

なりました。

 

 ちなみに、政令とかという意味は、以下と

なります。

 

法、法律 : 国会の議決により制定(法律)

政令、施行令 : 内閣が制定した命令

令       : 総理大臣が発する命令(内閣府令)

施行規則、省令 : 各所管大臣が発する命令(省令)

条例 : 地方自治体の議会の議決により制定

協定、覚書、念書 : 事業所と行政や住民等が当事者

          同士の話し合いにより定めた取り決め

 

 それでは、プラピ(J-PlatPat)さんを使い倒す

ために、以下の商標出願・登録情報画面に入り

ましょう。

 

https://www2.j-platpat.inpit.go.jp/syutsugan/TM_AREA_A.cgi?0&1473722478091

 

 今回は動き商標にチェックを入れて検索を

かけましょう。

 

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 そうすると、私の検索時点で102件となって

いましたので、出てきた「一覧表示」をクリック

して面白そうなものを覗いてみましょう。

 

・ 東宝株式会社

 

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 上の矢印をクリックすると(数字をクリック

しても同じです)、上に記載のように、時間の

経過とともに、以下のようになってきます。

 

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・登録5825499 「§ウルトラ\Q」

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・登録5846051 「アートネイチャー」

 

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・登録5857149 「しあわせ少女ゆうかちゃん」

 株式会社はせがわ

 

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 と、テレビとか映画で見たことがあるものが

いろいろありますので、プラピさんを使い倒して

みてください。