知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

商品などを販売した後に特許出願しても、新規性喪失の例外適用って、受けることができるんですか?

 香川の山本縫製工場さんが、結露しない、

「アイスまくらカバーE寝!」というのを

売り出した、という記事が日経に出ていま

した。

 

http://www.csf-yamamoto.com/news/

 

 ホームページを見ると、この製品が

出ています。

 

http://www.csf-yamamoto.com/products/cool-pillow/

 

 この会社どんな会社なんだ?というのを

見てみると、本社は坂出市、企業名は「有限

会社山本縫製工場」、資本金が300万円で、

クールリュックなどというのも出しています。

 

クールリュック | 山本縫製工場の熱中症対策グッズ

 

クールリュック| 製品紹介

 

 社長の山本益美さん、アイデアマン(男性

なので、アイデアマン!)のようで、自分で

特許や実用新案を沢山出願しています。

 

f:id:oukajinsugawa:20160620145637j:plain

 

 ということで、クールリュックに関しては、

実登3187427と特開2015-047488の

「暑気を和らげるクールリュック」という

ものなのですが、実はこの2つは同日出願で、

請求の範囲が全く一緒なんです。

 

【特許請求の範囲】

【請求項1】

  後背部と前記後背部の身体側に設ける

袋部と肩掛け部と伸縮部で構成され、前記

後背部と前記袋部と前記肩掛け部は内布と

外布及び当該内布と外布の間に急速吸水材を

狭持させた3層構造とし、前記袋部に冷却剤を

収納して背中を冷却する背負い型背中冷却具。

【請求項2】

  前記肩掛け部は立体裁断され、かつ長さ

方向の略中央部が幅広形状であり、隣接する

前記後背部と前記伸縮部に立体縫製で連接

する構造であることを特徴とする請求項1に

記載の背負い型背中冷却具。

 

【実用新案登録請求の範囲】

【請求項1】

  後背部と前記後背部の身体側に設ける

袋部と肩掛け部と伸縮部で構成され、前記

後背部と前記袋部と前記肩掛け部は内布と

外布及び当該内布と外布の間に急速吸水材を

狭持させた3層構造とし、前記袋部に冷却剤を

収納して背中を冷却する背負い型背中冷却具。 

【請求項2】

 前記肩掛け部は立体裁断され、かつ長さ

方向の略中央部が幅広形状であり、隣接する

前記後背部と前記伸縮部に立体縫製で連接

する構造であることを特徴とする請求項1に

記載の背負い型背中冷却具。

 

 ということで、特開2015-047488のほうは、

 

「理由1.

 この出願の下記の請求項に係る発明は、同日

出願された下記の出願に係る考案と同一と認め

られ、かつ、下記の出願に係る考案は登録されて

おり協議を行うことができないから、特許法

第39条第4項の規定により特許を受けることが

できない。

 

理由2.

 この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の

点でその出願前に日本国内又は外国において公然

知られた発明であるから、特許法第29条第1項第

1号に該当し、特許を受けることができない。」

 

 ということで、拒絶査定となってしまい

ました。

 

 また、理由2のほうを見ると、

「本願の請求項1~請求項2に係る発明である

「背負い型背中冷却具」については、本願

出願人である「有限会社 山本縫製工場」に

よって一般に販売されている「COOLRUCK」

という商品名のものと同一であるものと

認められる。

 そして、上記「COOLRUCK」については、

本願出願日である平成25年9月2日より前の

時点で、一般に販売されていたものである

(「COOLRUCK」の通常サイズについては

平成25年6月20日に、BIGサイズについては

平成25年6月28日に、それぞれ発売開始と

なっている)と認められる。

 したがって、本願の請求項1~請求項2に

係る発明である「背負い型背中冷却具」は、

出願前に日本国内において公然知られた

発明に該当するものと認められる。

 よって、本願の請求項1~請求項2に係る

発明は、特許法第29条第1項第1号に該当し、

特許を受けることができない。」

 

 ということですので、まずは、同じ

内容の考案、発明を、実用新案登録出願、

特許出願するのはやめましょう。

(異日出願としても、先願のほうしか

権利化できませんが)

 

 さらに、理由2に書かれているように、

売り出してしまってからの出願には気を

付けましょう。(特許事務所では、いろいろ

気を付けてくれますが、山本縫製さんでは、

自分で出願しています。)

 

 クールリュックの発売は2013年(平成

25年)の6月で、出願が2013年9月2日と

なっており、このまま出願をしてしまった

ため、特許庁から怒られて??しまったん

です。

 

 ただーし、昔は、販売をしてしまった後に、

特許出願や実用新案登録出願をしても、

「ダメだもんねー。」と言われてしまって

いたのですが、平成23年改正で、特許法

30条の2項というところが、「特許を受ける

権利を有する者の行為に起因して」、

すなわち、販売などをおこなったとしても、

「その該当するに至った日から6月以内に」

出願をし、さらに3項というところで、

「証明書を特許出願の日から30日以内に

特許庁長官に提出」すれば、「オッケー

だもんねー。」となったんです。

(これだけではなく、今までと同じく、

願書に最初から、「例外規定、四露死苦!」

とか書いておく必要がありますが??)

 

 したがって、クールリュックの発明の

出願は、平成25年でしたので、「販売して

しまいましたが、新規性喪失の例外お願い

しまーす。」と言えば、新規性喪失の

例外の適用はあったのですが、残念ながら、

新規性喪失の例外は、「平成25年6月8日に

日本経済新聞にて公開、発行者名:日本

経済新聞社、刊行物名:日本経済新聞

巻数・号数:第45738号、第35面 発行年

月日:平成25年6月8日なので、よろしくね」

(とは書かれていませんが)としか書かれて

いなかったため、上のように理由2の拒絶

理由となってしまいました。

 

 ということで、日本では新規性喪失の例外

規定が改正され、販売などしてしまっても

一定の要件を満たせば、救済されるように

なりましたが、海外では認められない国が

結構ありますし、この規定はあくまで

例外的な既定ですので、販売する前に出願

するのが基本ですので、注意しましょう。

 

 尚、ブログやウエブの記事などで、記載

日時が書かれていないもので、「意匠出願の

場合には、販売しても新規性喪失の例外

規定の適用があるが、特許のほうは例外

適用はないので注意しよう。」などと書か

れているものがありますが、法改正前に

書かれたものが、そのまま残っているの

だと思いますので、こちらのほうも注意

しましょう。

 

 「どのような場合に適用が受けられる

んだ?」とか、「適用を受ける場合には、

どんな書類を提出すればいいんだ?」、

「出願時の注意点、出願書類の作成方法は?」

などは、出願人の手引きQ&A集、に

載っていますので、興味のある方はどうぞ。

 

 拒絶となってしまったのは残念ですが、

この夏、クールリュックや、アイスまくら

カバーE寝!が、売れるといいですね!