知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

ダンスダンスダンス

 下のような記事が出ていました。

 

http://news.mynavi.jp/news/2015/01/28/308/

 

 私のほうでも、ダンスについての

著作権について、もう少し付け加えて

みましょう。

 

 まず、一つ一つの事案によって、

異なる取り扱いになりますので、

一つ一つの事案によって、記事に

書かれているようにお近くの専門家の

方に相談する必要がありますが、

私のほうでは、その前の基本的事項

について書いてみます。

 

 まず、ダンスというのは、著作権法

では定義づけされているのかということ

ですが、著作権法第10条(著作物の例示)

というところの1項3号に、「舞踊」と

して例示されていますので、ダンスは

著作物に成り得ます。

 

 ということで、ダンスが著作物に成り得る

ことがわかりましたが、侵害訴訟などの

場面では、「じゃあ、そのダンスはほんとに

著作物になんの?」ということが争われます。

 

 まあ、AKBが踊っているダンスを想い

浮かべてください。

 

 「あのダンスは著作物になんのか?」と

いうことですね。

 

 これを判断するには、「ありふれた

ステップの組み合わせじゃねーの?」

とかいろいろ判断されるわけですが、

いつも書いているように、「感情を

爆発させて創作がされてんの?」

など調べるわけですね。

 

 私はダンスの専門家ではないので、AKBの

ダンスがありふれた組み合わせなのか、

芸術は爆発だ!!」となっているのかは

わかりませんが、まあ、基本的には

そういうことが判断されます。

 

 ということで、「著作物性あんじゃね?」

などと判断されたと致しましょう。

(そのほかにも、保護期間はOKか

とか、権利の目的になるの?(13条)

とかいろいろ判断されますが、割愛

します)

 

 そうすると、次には、「じゃー、著作者

って、誰なんだよう」という判断に移り

ます。

 

 このようなダンス(舞踊の著作物です)

の場合には、著作者っていうのは、

踊っているAKBさんではないんですね。

 

 この場合には、著作者は、ダンスの

踊り方を考えて振付をしているラッキー

池田さんなんです。

(ラッキー池田さんが振付けしているか

どうかわかりませんが、わかりやすい

ように、ラッキー池田さんにしてしまい

ました。

 

 ラッキー池田さん、ごめんなさい)

 

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 ただし、踊りながら、総監督の高橋

みなみさんやら、柏木由紀さんやらが

いろいろアイデアを出し合って、ラッキー

池田さんと作り上げたのなら、高橋

さんも柏木さんもダンスの共同の

著作者に成り得ます。

(AKBファンの人は、自分の好きな

アイドルの名前にして読んでください)

 

 ということで、著作物性と、著作者

判断ができたと致しましょう。

 

 そうすると、次は本格的に、侵害で

怒られるのか?、それとも大丈夫

なのか?という判断に移ります。

 

 記事で取り上げられているように、

ダンスの一部分をつまみ食いをした

場合と、ダンスの全部をパクッてしまった

場合は違う扱いになりますね。

 

 ちょっとだけつまみ食いした場合でも、

「ちょっとだけパクッて他も似ているんで、

ダンスを変形しているだけだよね」などと

いう27条という翻訳権、翻案権等の

侵害になって怒られてしまう場合も

ありますし、ラッキー池田さんが、この

ダンスの振付にものすごい思い入れが

あって、「おれが、こんなに思い入れが

あるのに、同じでなくしてしまいやがって」

などという20条の同一性保持権で

怒られる可能性もありますね。

 

 全部をパクッてしまったりすると、21条と

いう複製権侵害や、22条の上演権の侵害

とかでも怒られる可能性があります。

 

 記事にある『Shall weダンス?』事件と

いうのをちょっと説明すると、これは、

平成24年にあった地裁レベルの判決なの

ですが、映画「Shall we ダンス?」の

ダンスシーンで用いられた、ダンスの

振り付けを創作したと主張する原告(亘さん

という方だそうですが)、被告(角川書店

さんです)による映画のビデオの販売等に

ついて、二次利用によって振り付けに係る

著作権(複製権,上映権,公衆送信権及び

頒布権)が侵害されたと訴えた事件なん

です。

 

 まあ、事件は上記なようなものですが、

この裁判の中で、記事のように、創作性の

判断などの根拠を示したわけです。

 

 地裁レベルの判断なので、今後、

この判断根拠もひっくり返る可能性も

ありますが、とりあえずは独自の判断を

おこなうのには危険性が伴うので気を

つけましょう。

 

 まあ、ダンス関係の有名な判決に

ついては平成10年の東京地裁判決

があり、著作権判例百選〔第3版〕

(百選というのに百以上載っている

のはこれいかに?)では、著作権法

の大御所田村善之先生が、〔第4版〕

では、弁護士・中央大学講師の小倉

秀夫さんという方が解説していますが、

この説明は割愛いたしましょう。

 

 ということで、怒られる可能性を

調べて来ましたが、実はこのような

場合でも怒られない場合があるんです。

 

 これは、著作権が認められた場合

でも、その著作権が制限される場合が

あり、35条というところで、学校とかの

教育機関における複製等(学校教育の

一環でダンスの振付をコピーして

踊るような場合ですね)が認められる

場合があります。

 

 さらにさらには、38条というところで、

営利を目的とせず、聴衆や観衆など

から料金を徴収せずにダンスを踊ったり

するのは許される場合があり、記事では

このことを言っています。

 

 ということなのですが、何度も書いて

いますが、怒られるのか怒られないのか

はその事例事例ごとに異なりますので、

独自判断は危険ですので注意しましょう。

 

 ということで、ダンスの話はおしまい

ですが、実は、今回の標題を、「教えて

goo」にしようかな、と最初に思ったの

ですが、「教えてgoo」を検索した人が、

間違えて私のブログにヒットした場合、

関係ない記事に誘導しているとして、

教えてgoo」さんから文句を言われる

可能性がありますので、表題をそのように

しませんでした。

 

 著作権にはこんなめんどい面もあり

ますので注意しましょうね。

 

 じゃんじゃん。