知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

半沢直樹の感想文?

  それでは、本日は半沢直樹の話を

 ひとつ。

 

 ・・・・というか、またまた違って、池井戸

 潤さんが、2011年に直木賞を受賞した

 下町ロケット」の話を一つ。

 

 売れてますね、単行本。 その前のハード

カバー?はブックオフでもめちゃめちゃ高かった

ですが。

 

 池井戸潤さんは、ご存知のように

 江戸川乱歩賞も、吉川英治文学新人賞

 も受賞している元銀行員です。

 

 なぜこの「下町ロケット」を取り上げた

 かというと、特許が絡む話で結構面白く

 読める作品だからです。

 

 読んでいない方のために、感想文風に

 まずは簡単に内容を書いてみましょう。

 

 ロケット研究者だった主人公が、亡く

 なった父の後を継いで、中小企業の

 社長となります。

 

 しかし、主要取引先が突然発注をやめると

言って来たり、主力製品である小型エンジンが

特許を侵害していると大企業から訴えられたり、

 大企業が大きな研究投資をしたのに、

 主人公の企業の特許があるために特許が認

 められなかった「△△重工」が無理難題 

押し付けてきたり、と涙なくしてはとても

 読めない?という、さすが直木賞受賞作

 という力作です。

 

 ということで、このブログは感想文

 ブログではないので、知財の観点から

 内容を見ていこうと思います。

 

 まずは資金繰りに苦しむところが出て

 来て、銀行からお金を借りるのに、

 

「特許化により、売り上げに貢献できる

 はずなので、これで金を借りられないか」

 というくだりが出てきます。

 

 しかし、銀行から出向してきている経理

 部長は、

 

「銀行が心配するのは、巨額の開発費を

 投じた特許が“死蔵特許”になりはしない か」

 

というのを銀行は心配するという話をします。

 

 実際、知財の権利でお金を借りるというのは

 なかなか難しく、なぜ難しいかというと、知財

 価値の評価というのがかなり難しいという

 ところにあります。

 

 弁理士会でもいろいろ検討はされていますが、

 この価値評価というのが、知財の点では重要な

 論点であるといえます。

 

 さらに、銀行員は

 

 「評価をするには、専門の機関に依頼するなど

 コストがかかる」

 

と話すのですが、これもしかりでしょう。

 

 次に、大企業が主人公の経営する中小企業を

 訴えて来る段ですが、

 

「一般人から見れば、大企業が訴えるという

 ことはそれなりの根拠があると思ってしまう」

 

 と言っています。

 

 この小説では、大企業が、中小企業である

 主人公の企業の技術が欲しいがために訴えを

 起こし、体力がなくなったところで買収をおこなう

 よう画策するのですが、実際はどうなんでしょう?

 

 まあ、この前の越後製菓の例もありますので、

 知財対策はおさおさ怠りなくすることは必要でしょう。

 

 相手の大企業と主人公が話をするところでは、

 大企業のほうから、

 

「自分が悪くないというのは、あなたの一方的な

 意見ですよね。 裁判所でシロクロつけてもらい

 ましょうよ」

 

となっています。

 

 とにかく知財関係の訴訟は結構難しいものが

 ありますので、まずは対策を怠りなくするのが

 重要でしょう。