知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

知られざる特許の旅 第6回  明治の初めの専売特許権者は儲かった? それとも・・・・・・ その2

 前回からの続きで、同じ、櫻井乃介

さんの「箱の蓋締金具」です。

 

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 明治20年9月から21年4月まで

1個8銭と決めたんですが、一般

販売をする前に、し尿運搬にはこの

金具で密閉する必要があるということで、

大阪府で採用してくれることになり、

明治20年10月以降は、し尿運搬桶

にはこの金具で密閉することという

お触れを出したのですが、種々の

苦情が出て改良出願中となり、残念

ながらまだ販売できていないんです。

 

 とはいえ、自分で販売するのは大変

だということで、大阪下島町2丁目

阪栄組に一手販売を委託しています。

 

 次は、東京の松井総兵衛さんの「射的

機械玩具」です。

 これは、実施以来明治21年4月まで

で(1年8か月です)販売は500個、

売上合計32円50銭だったそうです。

 

 この発明は輸出品にできるため、

申し込みをおこなうものが多かったんだ

そうですよ。

 

 ただし、製造道具の費用がかさんで

しまい、新聞広告料を除いても、40円も

かかってしまったんです。

 

 赤字だったんですね。

 

 次も、やはり東京の松井総兵衛さんの

「洋灯防風具」というものです。

 

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 実施から明治21年4月までで

1年8か月経過し、まずは500個も

作ったのに、売れたのは200個に

届かず、販売額は9円内外だったん

です。

 ということで、この特許年限は10年

のため、15円を特許局に払い込んで

おり、特許以来の損益は、販売金額

9円を差し引くと、3~40円の赤字

だったんです。

 

 これには新聞広告料が入っていない

ので、赤字はもっとだったんですね。

 

 ちなみに、洋灯(洋燈)って言っても

現代の我々には何のことやらさっぱり

わかりませんが、明治の時代には、ランプの

ことを「洋燈」って言ったんです。

 

 明治の時代の夏目漱石さんの小説、

「ふたたび」とかに卓袱台(ちゃぶだい)

とかの昔の言葉とともに、この言葉は

頻繁に出て来ます。

(卓袱台っていっても、現代人には何だ?

という話になりますが、まあ、「巨人の星

の「星一徹」さんが、ひっくり返すアレ!と

言えばイメージが湧くのでは???)

 

 次は、水力応用玩具でやはり東京の

松井さんです。

 

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 松井さん、熱心な発明家だったん

ですね。

 

 このおもちゃは、水車とばねを

応用して、いかにも鯉の滝登りの

ように見えるおもちゃだそうですよ。

 

 明治20年8月から21年4月まで

25個売れて、売上4円25銭だった

そうですので、一つ17銭だったん

ですね。

 

 残念ながら、損益詳細は不明だ

そうですが、この専売特許の年限も

10年でしたので、特許局に払い

込んだのは15円ですので、完全に

赤字でした。

 

 その他、松井さんの特許は、明治19

年3月31日の下水桶浚溝器、19年

5月18日の頸墜止洋灯釣手があるの

ですが、これらの全部で5つの特許を

合計すると、出願・登録等費用105円、

原材料費85円、製造道具160円、

総売上約50円でした。

 

 「えーっ、めちゃくちゃ赤字じゃん」と

いうことで、専売特許は、お金持ちの

道楽だったんでしょうか??

 

 きっと違うと思いますが、まあ、松井

さんがお金持ちだったのは確かでしょう。

 

 続く