知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

知財戦略実践編 EPO EPC EUUP UPC

  この前、アビガン特許のところで、歌手の

名前ではないほうのEPOの話を書きました。

EPO、すなわちEuropean Patent Organisation

(ヨーロッパなのでオーガニゼーションの「ゼ」

は、ZでなくSになります))

 

 むかーし、昔から、世界共通の特許制度を

作ろうという話が出ているのですが、残念

ながら各国の利害がからみ、世界共通

制度はできていません。

 

 このような状況なのですが、まあ、世界

共通の制度が無理なら、まずは、自国に

した特許出願を基礎として他国に出願する

のを許そうよ(パリ条約)とか、登録は

無理でも、世界共通で一度に出願できる

ようにしようよ(いわゆるPCT出願)とか、

いろいろ条約が締結されてきました。

 

 このような取り組みはヨーロッパでも

起きていて、ヨーロッパはEUという

単一の共同体を作ろうというのがスタート

ですので、知財関係でも単一の制度を

作ろうという動きが昔から起きていて、

特許についても、ヨーロッパ特許庁EPO

というのができているわけです。

 

 ヨーロッパの特許出願については、一つの

方法として、普通に各国に出願して、各国

ごとに権利を取得するという方法があります。

 

 もう一つの方法としては、EPOに出願を

して、ヨーロッパでの特許を取得する(EPC

といいます)、方法というのがあります。

 

 この前書いたアビガン特許は、まずはPCT

出願をして、次にEPCにてOKをもらったという

方法でした。

(ちなみにEPCEuropean Patent Convention)

 

 このEPCというのは、出願から審査までを

一つの手続きでできるというもので、PCTよりも

一歩進んだものです。

PCTというのは、出願手続きがまとめて

できるだけで、その後の審査は各国で

行われますので、ちょっと違います)

 

 EPCEU全体での審査を一括してしてくれる

のですが、残念ながらEUOKとなったとしても、

その後に、各国への移行手続き(翻訳こんにゃく

や、年金支払い)をしなければ、各国での登録とは

なりません。

(どらえもんじゃないので翻訳こんにゃくではなく、

翻訳文の提出ですが。(翻訳文の提出方法も

各国でいろいろ違います))

 

 さらに、EPCで審査までしてくれても、各国に

登録移行すると、それぞれ各国の権利と

なりますので、侵害訴訟なども各国それぞれに

提訴しなければならず、各国、別々におこなわ

れることになります。

 

 ということで、このEPCの方法は、最初は

EU共通でOKとなりますが、その後各国に

移行して登録され、各国ごとの権利となるため、

各国の権利の束と言われます。

 

 これが、前回説明したもので、現在EPC 

の加盟国は38か国、プラス2つの拡張国と

なっています。(拡張国の説明は省略)

 

http://www.epo.org/about-us/organisation/member-states.html

 

 ということで、アビガンさん?は各国への

移行手続きをおこなったということです。

 

 ヨーロッパでは、さらに一歩進んで、完全な

EU統一特許という制度が作れないかという

のを40年以上前から話し合われていたの

ですが、このほどやっとこの話がまとまり、

準備が進められています。

 

 どういうことかというと、EUで統一的特許が

登録されると、各国への移行が必要なく、

さらには、裁判なども、各国共通で行われ、

この裁判結果は各国共通の効果となると

いう、本当にEUでの統一特許となるもの

です。

 

 ただし、これは、今までのEPCに置き換わる

ものではなく、各国特許、EPC、の次の第三の

選択肢ができる、というものです。

 

 この統一特許が、EU Unitary Patent

呼ばれるもので、EU統一特許や、単一特許と

訳されています。

 

 これは、特許規則、翻訳こんにゃく規則、

裁判所協定という3つの規則、協定でできて

いるのですが、UPCという裁判所協定に

署名後、13か国での批准行為が必要で、

まだいろいろ紆余曲折もありそうです。

(尚、保護を受けられる国はEPC加盟国

とはちょっと違うのですが、長くなるので

割愛します)

 

 下記のURLは、まだまだかかりそうだよ~~ん

という直近の発表です。

 

http://www.unified-patent-court.org/images/documents/roadmap-201409.pdf#search='http%3A%2F%2Fwww.unifiedpatentcourt.org%2Fimages%2Fdocuments%2Froadmap201409.pdf'

 

 ということで、今回は知財戦略の実践編

ですので、ヨーロッパに特許出願するには

どのようにすべきかという話です。

 

 詳細は、そのうちまた書くとして、まずは、

どの国がこの制度に加盟するのかを考慮して

出願方法を決める必要があるでしょう。

 

 次に、やっぱりお金ですね。 これは出願費用、

維持費用をよく考える必要があるでしょう。

 

 ここで気をつけなくてはならないのは、EPC

での出願は、各国の特許の束になり、いらなく

なったら、いらない国だけ放棄すればよいのですが、

統一特許の場合には、一括して取っておくか、

一括して捨てるかの2つの方法しかありません。

 

 お金がかかりそうですよね。

 

 ということで、どの程度魅力のある特許と

なるのかの判断が必要でしょう。

 

 尚、このような特許を広域特許というのですが、

他の地域でもありますし、特許だけでなく、商標や

意匠などでも同じような取り組みがされています。

 

 ということで、そのほかにもいろいろ細かい話が

ありますが、固い話になってしまいましたので、

今日はこのへんで。