知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

言ったもん勝ち!!

 昨日のいろいろな新聞に、知財高裁が、アップルと

サムソンのスマホ特許裁判用に、一般から意見を

募集することを決めた、という記事が載っていました。

 

 さらに記事は続けて、「民事訴訟法には一般から意見を

募る手続きを定めた規定はない」が、アップルとサムソン

双方に意見募集を促し、当事者間で合意してもらう形で

実施することにした、となっていました。(日経朝刊記事

から。 他の新聞では書き方がちょっと違っています)

 

 これを簡単に書くと、民間人同士の裁判では、裁判所が

勝手に他の人から意見を聴くなどできないから、他の人が

どう思っているか、あんたら聞いてくんない?ということです。

 

 これはどういうことかというと、民間の人同士がいがみ

あっている場合には、お上は、二人(二人だけでの裁判で

ないという場合もあります)の言っていることだけを聞くことに

よって裁きをつけるぞ、ということです。

 

 二人だけのもめごとなので、面倒なので(というのはうそ

ですが)、お上は自分で証拠とか集めないぞ、ということです。

 

 これを裁判用語で、「当事者主義」といいます。 つまりは、

勝ち負けは、当事者が何を言うかにかかっており、裁判官は

もし知っていても(そんな場合はないでしょうが)、「ボク、これ

知ってるから、片方のほうが勝ち!!」とかは言いません。

(ちょっとニュアンスが違いますが弁論主義とも呼ばれます)

 

 つまりは、この手の裁判は言ったもん勝ち!!ということに

なり、知っていても言わなかったら損ということになります。

したがって、うまく言いくるめる?ことができる弁護士を雇いた

がるわけです。

 

 過去に同じような裁判例があれば裁判官もそれを参考

にして、サクサクッと勝ち負けを決めることができるの

ですが、今回は、新しい内容の裁判なので2人の話を

聞いてもよくわからず、困ったことになったなと思っていた

ところ、名案が浮かんだのでしょう。 

 

 そうだ、自分でみんなに聞かなくても、2人に聞いてもらって、

それを裁判所で話してもらえばいいんだ!!ということになった

のだと思います。

 

  当事者も争点も同じような裁判を、違う場所で複数おこなう

などということもあるのですが、言ったもん勝ちということと、

裁判官も違うので、全く逆の判決が出ることがあります。

最高裁1か所なので原則最終決定ですが。 尚、裁判所は

管轄権というのがありますので、どこにでも訴え出ることができる

わけでもないですが)

 

 それでは、「当事者主義」の反対の言葉は何だろうと見てみると、

そーなんです、知財関係の中にあるんです。 よくニュースなどで、

警察が職権乱用したなどと報道されることがありますが、反対の

意味では、「職権主義」というのがあります。

 

 これは、特許法150条に書かれているのですが、「審判に

関しては ~ 職権で、証拠調をすることができる」となっています。

(条文では、調べの「べ」は書かれていません)

 

 この証拠調べをする場合には、職権主義の中の、職権探知

主義とも呼ばれます。

 

 なぜ特許法(実用新案、意匠、商標法なども同じです)はこの

ようになっているかというと、一度権利が成立すると、全部の人に

効力が及んでしまうことになりますので、審判官は積極的に(汗水

たらして?)、証拠調べをして、それを採用しても良いですよと

なっています。

 

 この全部の人に効力が及ぶことを対世効(同じような言葉で

第三者効というのもあります)といいますし、当事者同士にしか

効力が及ばないのは当事者効とよばれます。(民事裁判などは

一般的に当事者効です)