知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

ウィキを見ると新井式回転抽選器というのがあるのですが、日本で最初の回転抽選機なんですか?

 一昨日、商標法での抽選機の話を書き

ました。

 

 前回は、ウィキに、「新井式回転抽選器は、

かつて東京で帽子屋を営んでいた新井卓也が

客へのサービスとして考案したためこの名が

ある。現在は東京抽籤器研究所の専売特許で

ある。」と書かれており、特許なんですかね?

というところで終わりましたが、今回は、この

発明だか考案だかを調べてみましょう。

 

 尚、ウィキは以下になります。

 

抽選器 - Wikipedia

 

 まずは、新井卓也さんの権利化されたものは、

以下となります。

 (漢字は現在の漢字にしています。)

 

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 ちなみに、「追加」とあるのは、追加の特許の

ことで、大正10年改正法(昭和4年改正法でも

同じ)の第二条では、「特許権者又ハ特許出願

者ハ其ノ発明ノ改良又ハ拡張ニ係ル新規ノ発明ニ

付独立ノ特許ニ代ヘ追加ノ特許ヲ受クルコトヲ得」

となっており、第四十六条では、「追加ノ特許権

特許権ニ附随ス」となり、第四十三条では、

「4 追加ノ特許権カ独立ノ特許権ト為リタルトキハ

其ノ存続期間ハ原特許権ノ残期間トス第五十三条

第二項ノ規定ニ依ル各別ノ特許権ノ存続期間ニ

付亦同シ。」と、関連意匠制度を彷彿とさせ

ますね。(その頃、私は影も形もありません

でしたので、よくわかりませんが。)

 

 ・ 特許86284

 

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・ 特許89694

 以下に、得体のしれないものが薄く写って

いますが、公報自体がこのようになって

います。

 

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・ 特許98145

 

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・ 特許175714

 

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・ 実用新案出願公告昭30-2601

  以下は、年末ジャンボ宝くじの抽選機の

ようにも見えますが、こちらも穴から球が

出て来る抽選機です。

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 ということで、新井さんの一番古い出願は、

昭和4年8月1日なのですが、それでは、

これ以前に同じような機構のものがなかった

のか?というと、いくらでもあるんです。

 

 一番古いものは、実用新案登録15076

「抽選機」大阪市松本秋津、出願明治42年

7月9日、登録明治42年10月23日、と

いうもので、以下となります。

 

 

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 特許で最も古いものは、特許22862「平田式

公平抽選器」広島県賀茂郡平田岩太郎、出願が

明治45年1月30日、登録大正元年10月14日と

なります。

 

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 ということで、タイトルへの回答は、新井

さんの一番古い登録は、昭和4年8月1日の

もので、回転式抽選機の権利化された古い

ものはこれ以前に沢山あり、明治時代から

いろいろ出願、権利化がされていましたが、

現在知られているのは、新井さんのものだけ、

となっています。

(ウィキで、「現在は東京抽籤器研究所の専売

特許である」と書かれていますが、すでに

権利期間は過ぎており、現在は、””専売特許””

ではないですね。)

 

 尚、WEBで新井式回転抽選器というのを

検索すると、「新井卓也氏が開発した、新井式

廻轉抽籤器は亀戸十三間通商店街にあるそうで、

形は今でこそメジャーな八角形ではなく円形で

ある。」と書かれているものがありますので、

この亀戸十三間通商店街の円形のものは、

上のように、戦前の初期の発明のものではなく、

戦後に発明、考案された抽選器が残っている

のでしょう。

 

kotomise.jp

 

 上の写真を拡大すると、プレートに「新井式

廻轉抽籤器 専売特許No.98145・No175714

製造販売 東京抽籤器研究所」と書かれており、

98145は上で説明した特許98145、175714は、

特許175714で、これらの技術を使っていると

いうことなんです。

(だから、ウィキなどには、「現在は東京

抽籤器研究所の専売特許である。」と書かれて

いたんですね。 ただし、「現在は」、では

なくて、「当時は」が正しい表現で、製造

販売が東京抽籤器研究所であるのは確かですが、

権利化時点での権利者は新井さんでしたので、

新井さんが東京抽籤器研究所を興したのだと

しても、権利譲渡があったかどうかは定かでは

ありませんので、当時としても、東京抽籤器

研究所の””専売特許””だったかどうかは、定か

でないですが。)