「はい、お答えいたしましょう。」てなわけで、
「お答えいたしましょうシリーズ」なわけでして。
以前に、安藤百福さんと張国文さんの発明に
ついて以下のように取り上げました。
それではこれ以前に及びこの時代に、同じ
ような発明はなかったのか?というのを今回は
調べてみましょう。
ところで発明というのは、特許法では、第2条の
定義というところで、「自然法則を利用した技術的
思想の創作のうち高度のものをいう。」と定義され
ています。
我々は単に「発明」とひとくくりで話をしていま
すが、法律では、この「発明」のほかに、「考案」と
いうのも用意されており、これは実用新案法で定義
されており、実用新案法の第2条では、「自然法則を
利用した技術的思想の創作をいい」、第1条で、
「物品の形状、構造又は組合わせに係る」ものが
考案ですよーと書かれています(編集しているため、
正確な定義を見たい方は条文を参照してください。)。
(上記の実用新案法の条文はいわゆる現在使われ
ている昭和34年法から抜粋しており、最初に制定され
た明治38年法では多少文言が異なりますが、まあ
こんなもんだということで読んでください。)
ということで、昔の発明はどんなものがあったのか?
というのを調べるのに発明だけを調べるのは片手
落ちになると思いますので、発明と考案を調べる
ことに致しましょう(一般的にはあんまり関係ない
ですが、弁理士的には重要なのでこだわって書いて
います。
すんません。
)
ちなみに、前回書いたように、発明のほうは
昭和50年に改正されるまで食べ物が特許化されず、
方法でしか特許を取ることができませんでしたが、
逆に考案のほうは昔から(今でも)方法では登録を
受けることができません。
これから、特許出願と実用新案登録出願を検索
してみますが、結果を見るときには、上を思い出し
ながら見てください。
今回は、いきなり結果を見るのではなくて、まずは、
どのように調べるんだ?というのから見て行きましょう。
まずはおなじみのプラピさん(J-PlatPat)にお願い
するわけなのですが、2018年3月に機能が新しく
なって、昭和46年以降に発行された公報からキー
ワードで検索してくれるようになりました。
しかし、依然としてこれより前のものはテキスト検索
ので、やはりテキスト検索はできません。
それではどのように調べるんだ?というと、安藤さんと
張国文さんの出願公告がわかっていますので、ここから
出願公告日を拾い出すと、両方とも昭和35年11月16日
であるのがわかります。
そこで、これを用いて以下のように入れてみましょう。
(やりかたはそのほかにもいろいろありますが、これは
1例です。)
https://www7.j-platpat.inpit.go.jp/tjk/tokujitsu/tjkt/TJKT_GM201_Top.action
安藤さんと張国文さんの公告番号は16974と
16975でしたので、これのFIを見ると両方とも
A23L1/162とA23L7/113であるのがわかります。
それではそれではということで、このFIは
なんじゃい?ということでパテントマップ
ガイダンスを見てみると、以下のようになります。
https://www5.j-platpat.inpit.go.jp/pms/tokujitsu/pmgs/PMGS_GM101_Top.action
ということで、途中は省きますがどんどんクリック
していきA23Lをクリックすると以下のように、「あん
れーA23L1なんてねーじゃん。とんでもはっぷん。」
(古いですね。)となるわけです。
この場合には、「ふむふむ、きっとFIが改正されて
るんだな?」などとつぶやきシローさん状態で前の
画面に戻ると、「FI改正情報」というのがあります
ので、「しめしめ。」とか言いながらこれをクリック
致しましょう。(ほかの方法もあります。)
これをずーっと下のほうまで見ていくと、
以下のように、A23L1/162というのがあって、
半ゆでやインスタントのものであり、改正された
ものはA23L7/113であることがわかります。
最初にFIを調べたときにA23L1/162と
A23L7/113でしたので、古いものと新しい
もののFIがリストアップされていたんですね。
ということで、内容がわかりましたので、安藤
さんと張国文さんの出願は1958年と1959年
ですので、今回は出願で1960年までを調べること
にして以下のように入れましょう。(FIは片方
だけ入れても大丈夫ですが、念のため両方での
論理和を取っています。)
(ちなみに今回は1961年からは調べませんが、
調べるとこれ以後、即席めんの出願は増加
します。)
そうすると18件以下のように出てきました。
(漢字は今のものに直しています。)
安藤さんは、義母さんが出願人のものと、
呉百福さん名義のものがあることがわかります。
呉百福さん名義の発明の1ページ目は以下の
ようになりますよ。
それでは、明治時代に出願された(明治43年)
常盤麺というのはどういうものかというと、乾麺、
味の素、海苔、乾醤油などを乾湯葉で包み、これに
お湯を注ぐだけで食べられるもので、明治時代から
インスタント麺があったんですね。
また、特公昭31-008673「携帯用即席味付麺類
製造法」の1ページは以下のようになっています。
ということで、最初の答えに戻ると、安藤さん
より前の明治時代からお湯を注いですぐ食べられる
即席めんのアイデアはいろいろありましたが、
先人たちがこれらに改良に改良を重ね、おいしい
即席ラーメンに仕上げてくれたというところですね。
ところで、日清食品さんのインスタント
ラーメンはこのようにしてできたわけですが、
それではカップヌードルはどうだったのか?と
いうと、カップヌードルの発売は昭和46年
(1971年)だそうですが、それまで上で取り上げ
たほかに、そのほかにも安藤さんのインスタン
ト麺の出願がありましたが、ついに以下のカップ
ヌードルの発明となったんです。
(いずれも1ページだけ貼り付けておきます。)
・ 特願昭45-69928(特許810555)
「容器入り味付即席麺類の製造法」
・ 特願昭46-18167(特許924284)
「カップヌードル及びその製造法」
ただし、この「カップヌードル及びその
製造法」は補正がかかったようで、出願公告は
発明の名称が以下のように変わっています。
この特願昭46-18167はすんなり登録されな
かったため、拒絶査定不服審判を起こした結果
以下のように無事登録となり、その後同じく
以下のように無効審判をかけられたりしましたが、
めでたく登録を維持できました。
さて、ということで、今日の昼飯は、先人達に
感謝しながら日清カップヌードルシーフード味に
ライスを付けて、ラーメンライスに致しましょう。
(炭水化物ばっかりですね。)