知財アナリストのひとりごと

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知られざる特許の旅 第13回 専売特許と新案特許?

oukajinsugawa.hatenadiary.jp

 

 知られざる特許の旅第3回で、亀の子

束子について取り上げましたところ、

「米田英夫の姉の孫」さんから、亀の子

束子の話が載っている「特許のかぎ」と

いう書籍があるぞという、貴重な情報を

いただきました。

 

 米田英夫の姉の孫さん、再度の御礼を

申し上げます。

 

 ということで、早速この書籍を購入して

みました。

 

 この書籍は、特許局で審査をおこなって

いた米田英夫さんと高島宗三さんの共著で、

大正10年(1921年)初版発行、大正12年

(1923年)訂正再版、私の購入したものは、

以下のように、昭和5年(1931年)増訂改版

9版です。(古本を検索すると、その後の

増訂改版もあるようです。)

 

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 上のように、「高嶋」という押印があり

ますので、著者の高島さんの蔵書だったん

ですかね?

 

 特許法の歴史を紐解くために、青本特許庁

編工業所有権法(産業財産権法)逐条解説)

から抜粋すると(ちなみに、最新版は20版です)、

「我が国工業所有権制度の歴史は、明治18年

の制度創設」(その前に明治4年の太政官布告

第175号の専売略規則もありますが)に始まり、

小さな法改正はありましたが、昭和34年の現行

制度以前は、「現行の工業所有権法は大正

10年に制定され」となっていて、「昭和35年

4月1日施行の現行法は、大正10年以来

約40年振りの大改正である。」となって

います。

青本の第1版は昭和34年(1959年)8月

1日発行です。)

 

 ということですので、昭和34年の改正以前

には、逐条解説というものはなかった(よう)

ですので、この大正10年初版で、大正10年

新法について解説しているこの書籍は、非常に

貴重なものでは?と思います。

 

 それでは、亀の子束子は、どこに載って

いるのか?というと、実は、初版と第2版の

訂正再版は、国会図書館でデジタル化されて

おり、以下のようになっています。

(同じ名前ですが、上が初版、下が訂正

再版です。)

 

国立国会図書館デジタルコレクション - 特許のかぎ

 

国立国会図書館デジタルコレクション - 特許のかぎ

 

 亀の子束子については、初版、訂正再版

共63ページに書かれていますので、是非

どうぞ。

 

 初版の最後のページは216ページ、訂正

再版の最後のページは234ページとなって

いますが、私の購入した増訂改版は、いろ

いろ付け加えられて300ページとなっており、

この増訂改版はデジタル化されていません。

 

 それはともかく、WEBなどを見ると、専売

特許とか新案特許、と書かれているものが

出て来ることがあるのですが、この書籍では、

この言葉にも触れていますので、ちょっと

抜粋してみましょう。

(現在の漢字、仮名使いに直して抜粋編集

しています。)

 

 「時として、専売特許若しくは新案特許なる

言葉を講演あるいは広告等に見聞することが

あるが、現在の法律にはこれらの言葉は無い

のである。

 

 専売特許というのは、昔の法律で言った

ことで、それが現在に波及して、特許なる

ものの代わりに習慣上使用されているの

だろうと思う。

(注:明治18年の法律は専売特許条例と

いい、明治21年法改正で特許条例、明治

32年法改正で、今の特許法となっています。)

 

 いやしくも、発明考案が新奇を尊ぶもので

ある以上、このごとき旧式の名称もやめたい

のである。

 

 また、新案特許というのはその出所が明ら

かでないが、おそらく実用新案の標記には、

「登録新案・・・号」とすることに規定され

てあるので、その新案を採り、かつ、専売

特許なる語に対して言われたことと思う。

(注:実用新案法という名前は、明治38年

制定以来変わっていません。)」

 

 というこのようですので、昔のおもちゃ

とか機械とかに、新案特許という名称が付さ

れていたら、もしかして実用新案か?とか

思いながら、これからは眺めるように致しま

しょう。