知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

エクセル関数とエクセルVBAを使った簡単特許調査 その2

 前回の続きです。

 

 前回は、エクセル関数を使い、所望の

キーワードが含まれる文献に丸付けした

わけですが、今回は、マクロによりセル内の

所望のキーワードのみに色付けする方法を

調べてみましょう。

 

 まずは、マクロってなんじゃい?という

わけですが、今回はマクロの詳細を説明

するのが趣旨ではありませんので、詳細を

知りたい方は、WEBなどを検索して勉強

していただければと思いますが、簡単には、

マクロというのは、作業の自動実行、すな

わち、セルを選択しーの、文字を選択しーの、

その文字に色付けしーのなどの手作業で

おこなう処理を、自動で一括して実行して

くれることを言い(自動実行プログラムの

ことをマクロと呼ぶこともありますね。)、

このプログラムを書く言語をVBA(Visual

Basic for Application)、このVBA

マクロを編集する場所や編集するツールを

VBEVisual Basic Editor)と呼んでいます。

 

 ということで、まずは、マクロ作業をおこ

なうために、この前と同じように、「まっくろ

クロすけ出て来いやー」と叫ぶわけですが、

このままでは、何もしていないと、「クロ

ちゃんでーす」とクロちゃんは出て来ない

わけでして。

 

 まずは、クロちゃんにマクロをお願いでき

るかどうかを調べるために、何でもよいです

ので、エクセルを開いてみましょう。

 

 ここで、以下のように、どこにも「編集」と

いうタブがない場合には、クロちゃんが

作業をしてくれません。

(下はエクセル2010で説明しています)

 

f:id:oukajinsugawa:20170403110414j:plain

 

 このような場合には、以下のようにして

クロちゃん環境を作りましょう。

 

 ファイルをクリックして以下のように表示

させましょう。

 

f:id:oukajinsugawa:20170403110457j:plain

 

 

 次に、「オプション」をクリックしましょう。

 

f:id:oukajinsugawa:20170403110514j:plain

 

 次に、「リボンのユーザー設定」をクリックしま

しょう。

 

f:id:oukajinsugawa:20170403110534j:plain

 

 

 次に、「開発」にチェックを入れて、OK

クリックしましょう。

 

f:id:oukajinsugawa:20170403110550j:plain

 

 そうすると、以下のように開発タブが現れ、

クロちゃんに作業をしてもらう環境が整い

ましたので、所望のキーワードだけに色付け

する方法を調べて行きましょう。

 

f:id:oukajinsugawa:20170403110619j:plain

 

 前回の例では、

 

  ① 要約の中の「多孔質」

  ② 請求の範囲の「固体電解質

 

を選んでいます。

 

 まあ、マクロの実行には、完全自動に

することもできますが、エラーが出た場合

にもパープリン王花陣が慌てないように、

はたまた、マクロがわからない方でも簡単に

コピペしたり、キーワードを書き換えたり

して汎用性が効くように、非常に簡単な

マクロ処理に致しましょう。

 

1 要約に「多孔質」の文字が含まれていれ

 ば、青色付けし太字にするマクロ処理

 

Sub 要約の多孔質()

Dim KW As Range                                     '変数はKW

    For Each KW In Range("D2:D141")       'セルD2からD114まで繰り返し

        r = InStr(KW, "多孔質")                 'キーワード多孔質が含まれる文字までの数をカウント

        If r <> 0 Then                           '多孔質が含まれていれば次の処理

            With KW.Characters(r, 3).Font    '多孔質の最初の文字から3文字まで以下の処理

                .ColorIndex = 5                '文字を青色にする

                .Bold = True                     '文字を太字にする

            End With                            '文字色付け等終了

        End If                                     '文字処理終了

    Next                                        '次のセルの処理

End Sub                                                     'マクロ処理終了

 

2 請求の範囲に「固体電解質」の文字が含ま

  れていれば、赤色付けし太字にするマクロ処理

 

Sub 請求の範囲に固体電解質()

Dim KW As Range                                             '変数はKW

    For Each KW In Range("E2:E141")               'セルE2からE114まで繰り返し

        r = InStr(KW, "固体電解質")                       '固体電解質が含まれる文字までの数をカウント

        If r <> 0 Then                                             '固体電解質が含まれていれば次の処理

            With KW.Characters(r, 5).Font              '固体電解質の最初の文字から5文字まで以下の処理

                .ColorIndex = 3                                  '文字を赤色にする

                .Bold = True                                       '文字を太字にする

            End With                                                '文字色付け等終了

        End If                                                         '文字処理終了

    Next                                                               '次のセルの処理

End Sub                                                             'マクロ処理終了

 

 てなことに致しましょう。

 (今回は、特許調査が目的ですので、

マクロ詳細を知りたい方は、WEBなどで

調べてみてください。)

 

 それでは、先ほどのエクセルを開き、

「開発」タブをクリック致しましょう。

 

 次に、「Visual Basic」をクリック致しましょう。

 

f:id:oukajinsugawa:20170403111107j:plain

 

 そうすると、以下のようになると思います。

 

f:id:oukajinsugawa:20170403111122j:plain

 

 次に、「VBAProject」を右クリックして、

挿入から標準モジュールを選択し、クリック

しましょう。

 

f:id:oukajinsugawa:20170403111139j:plain

 

 そうすると、以下のように、新しくModule1

いうのができて、右側にまっさらな画面(コード

ウインドウと言います)が現れます。

 

f:id:oukajinsugawa:20170403111157j:plain

 

 

  このコードウインドウに、先ほどのマクロ

処理を貼り付けましょう。

(先ほどのプログラムは文字数の関係で、

途中で改行がされているところがあります

ので、貼り付けてから、以下のようになって

いるか確かめて、もしなっていなかったら、

以下のように改行がないようにしてくだ

さい。)

 

f:id:oukajinsugawa:20170403114631j:plain

 

 ということで、クロちゃんに作業を

行ってもらえるようになりましたので、

ホームタブで普通のエクセル画面にして、

前回のように、特許関係データをコピペ

しましょう。

(私の説明では、クロちゃん環境を整え

る説明のため、まっさらエクセルにて

説明しましたが、最初に特許関係データを

コピペしてから、マクロプログラムを貼り

付けたり、処理を行ったほうが早いで

しょう。)

 

 ということで、再度開発タブをクリック

して、以下の画面にして、カーソルを実行

したいマクロ処理に移動して、以下の実行を

クリック致しましょう。

(これ以降は、違うPCで作業したため、

エクセル2013です。 すんません!!

尚、マクロ処理の実行は他の方法もあり

ますので、念のため)

 

f:id:oukajinsugawa:20170403114813j:plain

 

 

f:id:oukajinsugawa:20170403112827j:plain

 

 

 これで、要約の中の「多孔質」の文字が

太字になり色付けされます。

 

 次に、請求の範囲のほうも、同じように

請求の範囲のマクロ処理にカーソルを持っ

て行き実行をクリックすると、太字になり

色付けがされます。(今回は、セル内で目的の

文字が見つかったらその文字に色付けし、

セル内の次からの文字は検索しないで次の

セルの検索に移るようにしています。)

 

f:id:oukajinsugawa:20170403113043j:plain

 

 ということで、さらにキーワードを増やし

たり、キーワードを変える場合には、マクロ

処理プログラムをコピぺしたり、そのまま書き

換えたりして実行してください。(以下のように

新しくコピペしたものは、Subの次のルーチン名が

同じですとエラーになりますので、新しい名前を

つけて、キーワードや色番号などを変更してくだ

さい。(マクロを知っている方は、イタリック体

とか下線を引くとか、変更をお好みでどうぞ。)

 

 

 

f:id:oukajinsugawa:20170403115031j:plain

 

 参考:色は、WEBで検索すると、色コード

がいろいろ出てきます。

(今回は少ない色で色付けする方法にして

いますが、さらに多くの色でも可能です)

 

 というように、色付けや選別をしてから、

要約などを読んだほうが工数を削減でき

ます。

 

 さらに内容を読み進めるうちに、新たな

キーワードが見つかったりした場合には、

同じように、再度、選別丸付け、色付け

することにより、すでに読んだ文献に

同じキーワードがなかったっけ?などと

再度読む必要がありませんし、このサイ

クルを回すことにより、一度のダウン

ロード文献で、最終的に、同じキーワード

分類でのポートフォリオ化ができますよ。

 

 また、通常、検索する場合、要約に含ま

れるキーワードで検索をかける場合が多い

ですが、要約に含まれるキーワードは、

論文などと違い、重要なものが含まれて

いることはあまり多くなく(私見です)、

さらに、権利範囲は請求の範囲ですので、

特許分類などで広く検索をかけたもので、

請求の範囲もエクセルに落とし込み、

エクセル内で、さらに特許分類で選別丸

付けをおこない、この母集団ごとに、

請求の範囲でキーワード選別するのが

工数が少なくもっとも漏れが少ない調査

方法ではないかと思います。

(先行文献調査の場合に、詳細な説明

にも同じ発明が書かれていればアウチ!と

いうことを考えれば、一番良いのは、

詳細な説明も含め調査することですが、

言うは易し、行うは難し???)

 

 ちなみに特許庁審査官(外部委託機関)

の調査方法は、以下をどうぞ。

 

oukajinsugawa.hatenadiary.jp

 

 今回は、日本の特許関係で説明しまし

たが、外国文献、論文でも同じように

作業ができますので、試してみてください。

 

注:

エクセルを開いたときに、「セキュリティの

警告 マクロが無効にされました」という

文言が最初出て来ることがありますので、

ウィルスがないことに確信が持てる場合には、

「コンテンツの有効化」をクリックして

ください。

 

 ちなみに、今回はわかりやすいように、

丸付けはエクセル関数を使い、マクロは、

VBE(エディターですね)から直接操作する

方法を書きましたが、私は実際には、丸付けも

キーワード抽出もマクロを使い、丸付けの

色も毎回選べたりそのほかの操作も加えたり

して、マクロの実行も、クイックアクセス

ツールバーに以下のようにマクロ実行ボタンを

作って作業できるようにしています。

 

 以下は2つボタンがついていますが、WEB

から要約などを自動でエクセルに貼り付けたり

(プラピ(J-PlatPat)さんしか使えない環境の

方は、要約や請求の範囲をエクセルに自動で

貼り付けられると便利なので、私はマクロで

組んで、要約などもダウンロードできるように

してあるのですが、方法(プログラム)を公開

すると、プラピさんや、商用DB企業から、怒ら

れる可能性がありますので、残念ながら、公開

できず、ごめんなさい。(WEBから貼り付ける

のには、WEBのソースコードを使用するので、

マクロだけでなくHTMLなどの知識が必要です。))、

自動で文献にリンクを張ったり、その他の操作を

させたりしているので、2つボタンがついています。

(この前、INPITの方と話をしたときに、プラピ

さんで、なぜ要約などを自動で貼り付けるように

していないかを、「公的機関で、民間企業の仕事を

邪魔するとまずいので、最低限のダウンロードに

とどめているんだ。」と言っていました。)

 

f:id:oukajinsugawa:20170704085929j:plain

 

 マクロ実行ボタンの作り方は、WEBを調べると

いろいろ出てきて簡単に作れますので、調べて

みてください。

 

 尚、今回の作業により、何か問題が起きましたら

責任を取ることはできませんので、申し訳ありま

せんが、ご自分の判断でよろしくお願い致します。

f:id:oukajinsugawa:20210309074704j:plain

 

 

20200109追記:

 J-PlatPatは現在機能が改訂され、CSV出力を

選択すると、要約のダウンロードもできるように

なっています。文献のURLもダウンロードされ

ますので、是非どうぞ。

CSV出力にはIDやパスワード設定が必要です)