知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

Ig Nobel Prizes その2 鳩に嫌われた銅像

 金沢大学の廣瀬幸雄先生は、兼六園

日本武尊像に、鳩が近づかないのはなんで

だろう?という疑問から、カラスやハトの鳥害

防止のために研究をおこない、この功績により、

2003年のイグ・ノーベル化学賞を受賞して

います。

 

 いろいろな記事を見ますと、この論文が、

Natureに掲載されたような表現がありますが、

以下のように、論文が掲載されたのではなく、

廣瀬先生がイグ・ノーベル賞を受賞したと

いう記事が、Natureに載った、というのが

正しい表現のようです。

 

http://www.nature.com/nature/journal/v425/n6958/full/425550a.html

 

 それでは、「chemical investigation of a

bronze statue, in the city of Kanazawa, that

fails to attract pigeons」というのがどんな論文

だったのか?というのをいろいろ調べましたが、

ヒットしませんでしたので、特許出願のほう

から調べてみましょう。

 

 廣瀬先生からの鳥害関係出願は、特開

2004-218085「害鳥忌避性銅合金、害鳥忌避

資材、及び鳥害を防止する方法」(出願は

2003年12月19日、出願人は廣瀬先生、広島

化成(株)、(有)ジェイ・スタッフ、

(有)エス・ピー・エスかなざわ、北陸テクノ

(株))、特開2006-115756「害鳥忌避用具」

(出願2004年10月21日)、特開2008-283866

「鳥類排除装置」(出願2007年5月15日)と

なっていますので、イグ・ノーベル賞の受賞

理由となった特開2004-218085を見てみましょう。

(出願日が2003年12月19日とイグ・ノーベル

賞受賞よりも遅くなっていますが、優先権が

主張されており、優先日は2002年12月26日

となっています)

 

【課題】

 反復継続して使用しても学習効果が発現せず、

二次的な薬害を引起こす恐れがない害鳥防止

資材の提供。

 

【解決手段】

 銅70kg、鉛10kg、スズ10kg、及び

ヒ素10kgを溶融炉にて混合し1,083℃に

加熱して全成分を均一に溶融混合した後、冷却

して100kgのインゴットを製造し、任意の

形状に成型加工して、害鳥の飛来個所に載置、

垂下、あるいは張設する。

 

 明細書では、

 

ヒ素をはじめ幾つかの金属を毒性という観点

から検討し、それらを害鳥忌避材として使用する

ことを検討した。」

 

となっており、これが化学賞受賞となったと思わ

れますが、

 

「本発明の合金が共晶状態にあり、銅、スズ、鉛、

及びヒ素本来の性質が幾分維持されているので、

それを鳥が感知して忌避するのではないかと

推断している。」

 

「然しながら、現段階で、鳥が本発明の合金を

忌避する生理学的作用機序等を学術的に

明らかにすることはことはできない。この学術

的な解明は然るべき専門家の手に委ねたい。」

 

となっており、さらにインタビュー記事など

では、

 

「微量の電磁波が発生しているという結論に達

した。100万倍近い感知能力を持つ鳥がその

電磁波を嫌った。」

 

などとも書かれていますので、化学賞より、物理

学賞のほうが適していたのでは????

 

 ということはともかく、この廣瀬先生、特開

2017-12113「梅の漬け込み方法及びそれにより

製造された梅食品」(2017年1月19日公開ほや

ほや!)などという出願もあり(違う人かなと

思い調べましたが、出願人識別番号が同じでした)、

かなりのアイデアマンで、いろんな特許・実用新案

登録出願、登録などがありますので、それらを

覗いてみましょう。

 

 ちなみに、先ほどの梅の漬け込み方法という

のは、

 

【課題】

 塩を使用しない新規の梅の漬け込み方法及び

それにより得られる梅食品の提供を目的とする。

 

【解決手段】

 酸化還元性鉱物と接触して得られた弱アルカリ

水に梅を漬け込むことを特徴とする。

 

 というものだそうです。

 

 それでは、まずは、以下のように、熊本地震

際に、真っ暗な闇を明るく照らし、避難の方々

から大層喜ばれたという、アークライトについて

です。

 

http://www.arc-light.co.jp/index.htm

 

 このアークライトの開発は、有限会社アーク

コーポレーションとの共同で、廣瀬先生が

発明者に名を連ねているのは、一番最初の

特開2008-288625「災害発生時通信装置」と

いうものです。

 

 これは、当初は以下のように、レーザー光線

のような指向性の高い光線を用い、通信に

用いようとしたものだったようです。

 

【課題】

 災害発生時において、連絡の信頼性が高く、

設置容易な通信装置の提供を目的とする。

 

【解決手段】

 指向性光線を用いた信号の送信手段と

受信手段とを備え、送信手段及び受信

手段は信号変換装置をそれぞれ有し、

信号変換装置は文字情報とモールス信号

との相互変換機能を有していることを特徴

とする。

 

 これを、有限会社アークコーポレーション

さんがいろいろ改良し、アークライトの

発明にしています。

 

 したがって、以下は、廣瀬先生は発明者に

入っておらず有限会社アークコーポレーション

単独の出願となっています。

 

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 いろいろ、スマートになってきた感じが

しますが、いかがでしょう?

 

 ということで、ひとつひとつ説明していくと、

長くなりますので、発明の名称だけ貼り付け

ますが、以下のように、多種多様な発明が

あり、本当に廣瀬先生の出願か?と思って

しまうのですが、間違いのないよう、識別

番号で確かめてあります。

(廣瀬先生は、自分で出願しており、大学

が出願人というのはありません。)

 

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 廣瀬先生、全国で唯一「コーヒー学」の講義を

おこなっているそうで、上のように、焙煎装置を

発明したり、超高温の水蒸気で臭いを消し去る

無臭トイレ(特開2012-239835「減容型簡易

トイレ」)や、遠赤外線シートを使った、尿もれ

防止パンツなども開発したそうで、この前、

所さんのテレビ番組でも、取り上げられて

いましたよ。

 

 次は何を発明するのでしょう???