知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

Ig Nobel Prizes その1 金魚すくいロボとカオス理論

 イグ・ノーベル賞、結構有名になり

ましたね。

 

  Igというのはignorantなどの、無知な、

というような接頭辞なわけですが、まあ、

笑えるノーベル賞、というような意味で

名づけているのだと思います(ignoble

(不名誉な)にも引っかけているよう

ですが)が、米国のハーバード大学

出版社が発行している、The Annuals of

Improbable Researchが主催しています

ので、以下のHPに出てきます。

 

Improbable Research

 

 2016年は、以下のように、日本からは、

股覗き効果の受賞が、記憶に新しいところ

です。

 

http://www.improbable.com/ig/ig-pastwinners.html#ig2016

 

「股のぞき効果」研究 日本人2人にイグ・ノーベル賞:朝日新聞デジタル

 

 イグ・ノーベル賞は、下のように、1991年

から開始されていますが、今回のブログ

企画は、これらの受賞した技術というのは

どんなものだったのか?というのを、特許

出願や論文から、シリーズもので調べて

行こうというものです。

 

http://www.improbable.com/ig/winners/

 

イグノーベル賞受賞者の一覧 - Wikipedia

 

 ということで、第1回目の始まり、

始まり―。

 

 ということなのですが、実は、日刊工業

新聞で、次のイグ・ノーベル賞やいかに?

ということで、「発掘!イグ・ノーベル賞」と

いうシリーズものが連載されています。

 

 この1月18日版では、岡山大学の見浪護

先生の、金魚すくいロボが取り上げられて

いましたので、まだイグ・ノーベル賞を受賞

していませんが、今回は、この技術を取り

上げてみましょう。

 

 金魚は、網を近づけると驚いて全速力で

逃げるわけですが、毎回全速力で泳ぐと、

金魚も疲れてしまいますので、これを回避

するために、一定速度で回遊したり、水槽の

隅に逃げ込むなど、その場その場で、いろ

いろ考えているそうなんです。

 

 一方、ロボットに目を転じると、プログラムで

決まった動作しかできず(まあ、これを解消

するために、AIの、Deep Learningなど、いろ

いろ研究されているわけですが)、困った

ものなのですが、岡山大学の見浪先生は、

制御プログラムに、予測できない現象に

対処するカオス理論を導入し、発想を生み

出すロボットの実現を目指しているそうです。

(まだまだうまくいかないそうですが。)

 

 ということで、見浪先生の特許出願を調べ

ると、この関係の出願はないのですが(間接

的に関係あるものもありますが)、見浪先生の

論文は、以下のようになっていました。

(ご存知のように、特許出願は、出願された

ものなので、漏れがなく検索できますが、

論文は、発表されたものを100%検索する

のは困難なため、このほかにもあると思い

ます。また、金魚すくいロボ関係だけ検索を

かけていますので、見浪先生の研究分野が、

金魚すくい、というわけではありませんので、

念のため。)

 

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 たとえば、「Intelligence Comparison between

Fish and Robot Using Chaos and Random」

(2008 IEEE/ASME International Conference

on Advanced Intelligent Mechatronics)を

見てみると、以下のようになっています。

(以下の図は、この論文から抜粋貼り付け)

 

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 最初は、いろいろやってみたのですが、

以下のように、お魚さんの学習効果により、

どんどん捕獲数が下がってしまうんだそう

です。

 

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 ということで、カオス理論(数式がいろいろ

書かれていますが、「えろう難しくて、さっぱり

わかりまへん。」というところですので、省略

します。「ばかやろー、わかんねーのはオメー

だけだ。」という声はスルー致しましょう。)を

採用すると、以下のように改善されるんだ

そうです。

 

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 見浪先生、さらに、この研究を続行して

いるそうですよ。

 

 まあ、イグ・ノーベル賞というか、非常に

質の高い、AI研究ではないでしょうか?

 

 ということで、第1回目でしたが、次回は、

2003年の化学賞を受賞した、金沢大学の、

廣瀬幸雄先生を取りあげてみましょう。

 

 それでは、また。