知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

腸内カプセルガス診断

 カプセル内視鏡分析では、カプセルで、

マイクロマシンによるカプセル型手術

装置のようなものができるといいね、

というようなことを書きましたが、

マイクロマシンではないですが、ガス

センサーを備えたカプセルを飲み

込んで、疾患診断に役立てよう、と

いう技術を、ロイヤルメルボルン

工科大学が開発しているという話が、

「日経テクノロジー展望2017 世界を

変える100の技術」(日経BP社2016年

10月25日発行 ¥2200+税)という

のに出ていました。

 

 調べると、この技術は、2016年の

3月に公開されていますので、今回は、

これを調べてみましょう。

 

 公開番号は、WO2016/033638、

発明の名称は、「GAS SENSOR

NANOCOMPOSITE MEMBRANES」と

いうもので、ガスは透過するのですが、

液体は透過しないメンブレンフィル

ターを使い、胃腸内のガスを選択的に

透過させてチェックする、カプセル

センサーだそうです。

内視鏡ではないため、カプセル

内視鏡という名前はふさわしくない

のですが、この場合は、何と呼べば

よいのでしょう??)

 

 ガスセンサーはポリマーで構成され、

ガスセンサーのほかに、圧力センサー、

温度センサー、MPU、バッテリー、

無線通信部を備えています。

 

 

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 上の11は、ガスセンサーで、胃や腸

管内に存在し、健康状態と直結する、

CH4、H2、CO2、NOx、H2Sや、

ブチラート、アセテートなどをメイン

成分とする揮発性有機物用センサー

です。

 

 12は温度センサー、13は圧力センサー

(pHセンサーも組み込むことができ

ます)などで、14がメンブレンフィル

ターになっており、ここで、ナノコン

ポジットの透過、不透過を選択的に

おこないます。

 

 16はデータ収集システムややスイッ

チング回路、モジュレーターなどの

電子回路、17はバッテリー、18はワイ

アレスアンテナシステムとなっています。

 

 これまで、診断ツールとして、

カプセル内視鏡や呼気分析等が研究

され、また、胃腸内ガス成分と種々の

病気との因果関係という論文も多数

発表されているのですが、これを適切に、

簡単に測定できるツールの開発が遅れて

いたそうです。

 

 また、カプセルを使った、USA2009/

0318783「System and method of evaluating

a subject with an ingestible capsule」、

WO2013/003892「SYATEM.METHOD

AND DEVICE FOR MEASURING A GAS

IN THE STOMACH OF A MAMMAL」、

USA2013/0289368「DIAGNOSTIC

DEVICE」などの発明もあったのですが、

実施にはいろいろ困難な問題もあり、

この発明に至ったそうですよ。

 

 ここで、メンブレンフィルターには、

透過ポリマーのpolydimethylsiloxane

(PDMS)や、polyacetylene、poly(1-

trimethylsilyl-1-propyne)(PTMSP)などを

使うそうです。

 

 ということで、実施例なども書かれて

いますので、興味のある方は、公開

文献を見てください。

 

 話は違いますが、同じ書籍に、

カプセルセンサーではないですが、

産総研で、呼気中のガスを測定し、

腸内健康状態を調べる検査機器を

試作した、という話も出ていますので、

この発明も調べてみると、特開2008-

256680「呼気中の生体ガス濃度を

測定する方法及びその簡易型測定

装置」となっており、ご参考まで。

(残念ながら拒絶査定となって

います)

 

【課題】

 呼気中の生体ガスを簡便かつ高感度に

計測し、定量する方法及びその簡易型

測定装置を提供する。

 

【解決手段】

 熱電式ガスセンサを用いて呼気中の

生体ガス濃度を測定する方法であって、

生体ガスと触媒材との触媒反応による

発熱を、熱電変換により電圧信号に

変換し、それを検出信号として検出

することにより呼気中の生体ガス濃度を

測定することからなる呼気中の生体

ガス濃度測定方法、ヒトの呼気を採取し、

該呼気中に含まれる水素又は一酸化

炭素等の生体ガス濃度を定量測定する、

前記の方法、及びその簡易型測定装置。

 

【効果】

 ヒトの呼気中の水素又は一酸化炭素

等の生体ガスを高感度に高選択的に計測、

測定する方法、及びその簡易型測定

装置を提供し、被験者の病態生理学的な

解析を簡便かつ高感度に行うことを

可能とする新規診断手法を提供する

ことができる。

 

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  話は違いますが、レーザー治療中に、

腸内ガス(おならの素ですね)に引火

して、やけどを負ったなどという記事も

出ていますので、腸内ガス診断は重要??

ですね。

 

http://mainichi.jp/articles/20161029/k00/00m/040/161000c

 

 先ほどの公開公報にも、ガス成分に、

メタンガス(CH4)などがありますので、

着火しやすいメタンガスや、くさいおなら

の素の硫化水素(H2S)が主成分の、私の

腸内ガス君にも、気を付けてもらいま

しょう。