知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

お魚さんを、養殖しましょ。。。。

 近大マグロの話題で持ちきりですが、

この前の日経産業新聞一面に、魚介類を

今までの「捕る」から「買い付ける」

「加工する」へ水産会社が進化を遂げて

来ているものが、さらに、「育てる」へ

進化をしており、クロマグロの完全養殖が

試金石になる、というのが出ていました。

 

 マルハニチロ日本水産極洋の3社合計

で、年間数万尾の安定供給に道筋がついた、

と書かれています。

 

 水産大手がクロマグロの養殖に力を入れる

背景には、国際的な規制の強まりがあり、

規制に左右されない「育てる」業態への

シフトチェンジが必要なようです。

 

 マグロの養殖は、近大マグロが有名ですが、

採卵、受精、孵化、育成までを人間の手で

おこなう完全養殖は非常に難しく、近大が

2002年に世界で初めて成功させましたが、

大量に養殖するのはまだまだ困難のよう

です。

 

 新聞によると、人工授精で100万個の

卵が産まれても、いけすまでの生存率は、

最も高くて3%の3万匹(マダイは50%)、

いけすでは、衝突死や、成長不良などで、

出荷までにはその30%の1万匹以下に

なってしまうそうです(マダイは80%)。

 

 民間企業での世界での完全養殖の成功は

マルハニチロで、2015年から「ブルークレスト」

というブランド名で出荷を始め、日本水産は、

2017年冬に、「喜鮪(きつな)金ラベル」と

いうブランド名で出荷を始める予定で、

極洋も2017年度に出荷を始める予定だ

そうです。

 

 ということで、うなぎの完全養殖もまだまだ

ですし、おいしいお寿司や、おいしい、うな重

なども食べたいところですので、魚の養殖関係は

どうなっているのか?というのを日本の特許

出願から分析してみましょう。

 

 先ずは、検索をおこなうために、FIが使え

ますので、FIを調べると、以下のようになって

います。

 

A : 生活必需品

A01 : 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業

A01K  : 畜産;鳥,魚,昆虫の飼育;漁業等

A01K61/00 : 魚,貝,かに,えび,海綿,真珠の養殖

      A 魚        

              B ・魚病の予防,治療

              C ・孵化                                           

              D ・魚、貝、魚卵などの選別

    E 貝〔除,真珠〕                                                

              F ・養殖篭〔除,真珠用〕                     

              G 真珠                               

              H ・養殖篭         

              T ・真珠核                        

              J 甲殻類           

              K 環形動物〔例.ゴカイ,イソメ〕       

              L 動物プランクトン〔例.ワムシ,ミジンコ〕

              U その他の水産生物の養殖〔例.海綿,ウニ,ナマコ〕 

              V 養殖装置の筏,フロ−ト〔生簀のものを含む〕  

              W ・筏,フロ−トの連結具,係留索       

              Z その他のもの                              

     311 ・人工魚礁                                     

     313 ・・ブロツク型(一体成型)                 

     315 ・・組立型                                    

     317 ・・浮き型(含,人工海藻)                 

     319 ・・タイヤを利用したもの(315,317より優先) 

     321 ・・沈設方法,装置                                        

・61/02 ・魚用給餌装置 

 

 ということですので、今回はマグロに

限定せず、お魚さん全般を調べることと

して、FIのA01K61/00のA、B、C、Dで

検索をかけてみましょう。     

(ちなみに、B、C、DはAの下位階層です。        

尚、養殖関係のFタームテーマは、2B104

です。)

 

(正確に調べるためには、2B104関係のFIで、

さらに以下がありますが、絞り込むのが面倒

ですので、今回は、61/00だけで検索することに

します。 

63/00 生魚容器,例.アクアリュウ

   A 観賞魚用水槽〔例.金魚鉢〕 

   F ・水槽の組立

   B ・水槽の付属具 

   C 養魚池,養魚槽 

   D 生簣 

   E 養魚場〔例.入江や内湾を網で仕切つたもの〕

   Z その他のもの

63/02 ・生魚輸送のために特に適合した容器

   A 活魚輸送 

   Z その他のもの 

63/04 ・生魚容器に特に適合した水処理のための装置 

   A 濾過 

   B ・簡易濾過器 

   C 曝気 

   D ・ポンプ及びその取付装置 

   E ・空気の浄化 

   F 水の浄化〔除,濾過,曝気〕

   Z その他のもの 

63/06 ・生魚容器の中にある,または取り付けられた,加熱または照明装置

   A 生魚容器の温度調節 

   B ・養魚池,養魚槽の温度調節 

   C 生魚容器の照明装置 

   Z その他のもの  )

 

 以下は、出願公開を検索したものです

 

・ 出願人

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・ 出願年での最近の出願人の傾向

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 三菱重工さんは、昔に研究をしていたよう

ですね。

 

・ 出願年別研究課題

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・ 出願人別研究課題(三菱重工は省いています)

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 高津さんという方は、北海道の方で、

仔魚床敷設材、仔魚育成材、浮上槽などを

発明しています。

 

・ 養殖魚類

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 上は、Fタームで分類していますが、

Fタームに、マグロという分類はないため、

マグロは、魚類(一般)に含まれます。

 

 科学技術振興機構というのは、文科省

傘下で、研究資金を研究者に割り振って

いますので、自分で研究しているのではなく、

研究成果を肩代わりして出願をおこなって

います。

 

 下は、近大の公開公報ですが、上でも

わかりますが、マグロだけでなく、フグなどの

養殖研究もおこなっているようです。

 

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 ちなみに、最近の公開20件を挙げると、

以下のようになり、寄生虫駆除や養殖装置、

飼料などいろいろな研究課題があり、

JFEエンジや、ジャパンマリンポニックス

さんなども出てきています。

 

 

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