知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

小野薬品工業さんとMSDさんの、免疫チェックポイント阻害薬訴訟

 この前、免疫チェックポイント阻害薬としての

小野薬品工業さんのオプジーボと、メルクさんの

キイトルーダのそれぞれの特許について書き

ましたが、これに関し、欧米で訴訟が起こって

いると思っていたら、今度は日本でも、小野薬品

工業さんが、メルク日本法人のMSD株式会社を

相手取って特許侵害で提訴したんですね。

 

https://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n16_1024.pdf

 

 調べると、対象の小野薬品工業さんの特許は、

以下のようになっています。 

 

・特許4409430(特願2004-519238

【請求項1】

 PD-1抗体を有効成分として含み、

インビボにおいてメラノーマの増殖または

転移を抑制する作用を有するメラノーマ

治療剤。

【請求項2】

 PD-1抗体が、完全ヒト型抗ヒトPD-1

モノクローナル抗体である請求項1記載の

メラノーマ治療剤。

 

・ 特許5159730(上の、特願2004-519238の分割)

【請求項1】

  PD-1抗体を有効成分として含み、

インビボにおいて癌細胞の増殖を抑制する

作用を有する癌治療剤(但し、メラノーマ

治療剤を除く。)。

【請求項2】

  癌が、肺癌、大腸癌または卵巣癌である

請求項1記載の癌治療剤。

【請求項3】

  肺癌が、肺扁平上皮癌または肺腺癌である

請求項2記載の癌治療剤。

【請求項4】

  さらに、インターフェロン-αまたは

抗CTLA-4抗体と組み合わせることを

特徴とする請求項1記載の癌治療剤。

【請求項5】

  さらに、化学療法剤と組み合わせる

ことを特徴とする請求項1記載の癌治療剤。

【請求項6】

  さらに、癌抗原と組み合わせることを

特徴とする請求項1記載の癌治療剤。

【請求項7】

  PD-1抗体が、完全ヒト型抗ヒトPD-1

モノクローナル抗体である請求項1記載の

癌治療剤。

 

 どの部分について侵害だと言っているのかは、

訴状を読んでいませんのでよくわかりませんが、

そのうち明らかになるでしょう。

 

 それは、ともかく、最近では、この免疫チェック

ポイント阻害薬については、いろいろ研究が

されており、たとえば、オプジーボについて、

皮膚がんの悪性黒色腫メラノーマ患者に

対し、効果を発揮するメカニズムを京大が

解明し、9型ヘルパーT細胞(Th9細胞)が作り

出す分子がメラノーマの進行を抑えるんだとか、

国立がん研究センターでは、キイトルーダに

ついて、キラーT細胞を持つ患者は免疫

治療薬がよく効くことを突き止めたなどが

出ていました。

 

 この前、iPS細胞について事業化への取り

組みをしているという、創薬企業のトップの方に

話をうかがう機会があったのですが、薬と

いうのは、最終的な人間での臨床試験で、

致命的な副作用などが出てしまうと、今までの

開発費(百億単位と言っていましたが)が

吹き飛んでしまい、薬の値段は失敗の値段だと

言っていましたが、まあ、訴訟もいいですが

(創薬会社さんにとってはそうはいかないで

しょうが)、早く、効果があり、安価で、

副作用の少ない薬を開発してほしいものです。