知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

蛍光L型ブドウ糖による悪性がん診断

 今回は、弘前大学の山田勝也先生の、

「蛍光蛍光L型ブドウ糖を用いたがんの悪性度

診断の可能性」という技術を調べてみましょう。

 

https://shingi.jst.go.jp/kobetsu/amed/2016_amed/tech_property.html#pbBlock16148

 

 山田先生、生物が利用せず自然界にみられ

ないL型ブドウ糖の蛍光誘導体fLGは、高悪性の

がんに取り込まれ、蛍光によりがん細胞が

光ることを見出したんだそうで、この性質を利用

すれば、生物の利用するD型ブドウ糖を使用する

従来法よりも、がんを精度よく可視化できる可能

性があるんそうです。

 

 まずは、山田先生の、どんな特許出願があるのか

調べると、以下のように、グルコースを利用した

研究をおこなっているのですね。

 

f:id:oukajinsugawa:20160608115814j:plain

 

 L型ブドウ糖を使ってがんを調べるというのは、

再表2012/133688で、L-グルコースで蛍光を

発生させ、がん細胞を検出するというものです。

(出願人は、弘前大学、おぼかたおぼちゃんで有名

理化学研究所、株式会社ペプチド研究所の

共願となっています)

 

【技術分野】

【0001】

  本発明は、蛍光標識されたL-グルコース誘導体を

用いてがん細胞又はそのおそれがある細胞を検出

するための方法に関する。本発明はまた、蛍光標識

されたL-グルコース誘導体を含むがん細胞又は

そのおそれがある細胞のイメージング剤に関する。

 

「おーっ、おそれのある物も調べられるんですか?」

 

【背景技術】

【0002】

  がんを精度よく検出することは、その発見や治療の

ために重要である。通例、がん組織は一様な性質を

示す細胞の集合ではなく、様々な形態的あるいは

機能的な特徴、分化の程度を示す細胞の集合である。

また正常細胞の中に混在して存在する場合もある。

そこで、がん診断では、診断を確定するために生検

標本の病理診断を行い、細胞レベルで異常細胞の

評価を行うことが必要となる。しかし、生検標本の

病理診断においては、特に早期がんであるほど、

がん細胞もしくは前がん状態にある細胞が見落と

される可能性、すなわち誤って陰性(False Negative、

偽陰性)と診断される可能性が存在する。特に、内科

診断時に組織のごく一部のみを取り出す生検を行なう

場合、このような偽陰性の診断がなされてしまい、

その後に病状が進行してしまってから初めて気づく

危険性をいかに小さくするかが課題となっている。

同様の問題は、手術後の再発の有無の評価において

も大きな課題となっており、増える一方のがん患者に

対応する多くの臨床科では、担当医の経験や習熟度に

大きく依存せずに、的確に診断可能な方法が求められ

ている。

 

「もしかして、お医者さんの習熟度によって、見過ご

されてしまうんですか?」

 

【0003】

  生検は外科手術時に確認の目的で行われる場合、

内視鏡、気管支鏡、拡大鏡、鼻鏡、耳鏡などを用いた

内科検査時に消化管や気管、膀胱、膣、その他各種

管腔の内側から行なわれる場合、あるいは観察部位

付近の身体に小さな穴を開け、開口部に腹腔鏡や

胸腔鏡などを挿入して組織の外側から行われる場合

などがあるが、侵襲的な操作であることから、いずれの

場合にも的確な生検部位の選定が極めて重要な課題

である。内視鏡検査などでは、発赤やびらん、白色隆起、

微細血管構築の異常を示す領域を認めた場合、拡大

内視鏡を併用した異型血管像の精査などにより生検

部位の選定が行なわれる。しかし、生検に伴う出血に

より、微小ながんではもし生検部位を誤れば病変を

認識できなくなることも多い。一方、正常と区別の

つかない組織を広範に摘出すれば侵襲度が高くなる。

がんの手術においても、再発や再手術を避けようと

正常部分を不必要に大きく切除すれば、QOL(Quality

of Life)改善との兼ね合いにおいてはマイナス要因と

して働く。このため外科手術では、摘出範囲が適切で

あるか否かを調べるため、確実にがんが含まれていると

思われる部分から一定距離離れた部分まで切除を

行っては切断端の迅速病理診断を行う、というプロ

セスを、手術中に何度か繰り返している。しかし、切断

端を迅速病理診断に出し、その結果が得られるまでには

一回につき数十分から1時間といった時間が必要で

あることから、手術時間短縮の阻害要因の一つとなって

いる。手術時に限らず、内視鏡などの検査時に生検が

行われる場合も、診断中、患者には非常に大きな負担が

かかっている。従って検査を少しでも早く終わらせるため、

どこを精査し、生検すべきかを示すイメージング法への

医療現場のニーズは切実である。また、胆道がんや、

バレット食道がんなどのように、検査で発見した時点では

既に手遅れとなっている場合が多いがんでは、早期

発見により生存率の改善が期待され、小さながんを的確、

簡便に発見できるイメージング法が求められている。

更に、ひとたびがんが発見された場合、内腔表層に薄く

存在するがんがどこまで拡がって存在するか(側方

進展あるいは水平進展などと称する)を的確に判定し、

治療に生かす必要があるが、内視鏡でこれを細胞単位

で行うことは熟練した専門家でも困難である。

 

「熟練したお医者さんでも難しいんですかー。」

 

発明が解決しようとする課題】

【0011】

  そこで本発明は、イメージングによりがん細胞又は

そのおそれがある細胞を精度よく検出するための方法、

及びその方法に用いるイメージング剤を提供することを

目的とする。

 

「イメージング剤を提供してくれるんですね。」

 

【課題を解決するための手段】

【0012】

  本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意研究を重ね

た結果、発達した腫瘍細胞(その意味するところは

例えば、異常な細胞核を呈する細胞を細胞塊中に

多数含む程までに発達した段階の腫瘍塊を構成する

細胞である)が蛍光標識されたL-グルコース誘導体を

活発に取り込むことを見いだし、本発明を完成した。

 

「なるほど、鋭意研究を重ねたんですか。」

 

【要約】

  本発明の目的はがん細胞を精度よく検出するため

の方法を提供することである。本発明は、蛍光標識

されたL-グルコース誘導体を用いてイメージングを

行うことを特徴とする。本発明の方法及びイメージング

剤を用いることにより、蛍光標識されたD-グルコース

誘導体を用いてイメージングを行う場合に比較して、

がん細胞と正常細胞との間で高いコントラストを得る

ことができる。また、判定に際して絶食を行う必要が

ないので、患者に負担を強いることなく、迅速に実施

することができる。

 

「おーっ、絶食が必要ないのはいいですね。」

 

 ということで、さらに、鋭意研究を重ねていた

だいて、がんのおそれがある細胞も、検出できる

技術を開発してください。