知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

アイハートさんのiPS細胞シート特許

 iPS細胞、超有名ですね。

 

 プラピ(J-PlatPat)さんの「発明の

名称」で、「iPS細胞」や、「多機能性

幹細胞」などと入れるだけで、ズラーっと

出て来るわけでして。

 

 いろんなところで、いろんな研究開発が

おこなわれているわけですが、京大発の

ベンチャー「アイハートジャパン」さんで、

シート化した生きた細胞を積み重ねても、

壊死させない積層化技術を開発したそうで。

 

 iPS細胞を使って作製した心臓細胞など

は、内部に血管構造を持たないために、

塊にすると、壊死してしまうという課題が

あったんだそうですが、壊死しない構造を

開発したそうで、アイハートさん、2018年の

臨床試験と2020年以降の実用化を目標と

してるんだそうです。

 

 私の心臓も長いことなさそうですので、

期待を込めて、どんな特許なのか、早速、

調べてみましょう。

 

 「プラピさん、お願いね」、と念じると、

出ましたね、特許5862915「ハイドロゲルを

組み込んだ積層化細胞シート」、PCTの

出願で、国際公開番号はWO2014/192909

となっています。

 

 それでは、詳細な説明を見てみましょう。

 

【0001】

  「本発明は、ハイドロゲル、好ましくは

ゼラチンハイドロゲル、より好ましくは

ゼラチンハイドロゲル粒子、を組み込んだ

積層化細胞シートおよびその作製方法に

関する。」

んだそうで。

 

【0002】

  「近年、疾患または損傷等により細胞を

欠損した組織へ細胞を補充する医療として、

細胞シートを用いた細胞移植治療が検討

されている。特に、成人の心筋細胞は、

ほとんど増殖しないため、虚血性心疾患等で

欠損した心筋細胞は不可逆的な損傷となり、

心筋細胞の補充療法が検討されている。」

 

 なーるへそ。

 

【0003】

  「そこで、心筋細胞から作製された心筋

細胞シートを用いることが提案されているが、

このような心臓再生治療の成功には心臓

血管細胞分画の十分な生着が不可欠で

ある。また、このような心筋細胞として、

胚性幹細胞(ESC)または誘導多能性幹

細胞(iPSC)由来の心臓細胞分画を用いる

方法が検討されている。」

 

 ふむふむ。

 

【0004】

  「これらの細胞から作製した3層の心臓

組織シートを移植することで、心筋梗塞

ラットの心機能低下を抑制することが確認

されたが、これは誘導心筋細胞の直接的な

効果よりも、細胞から放出されたサイトカイン

等による血管新生を始めとした間接的パラ

クライン効果による左室リモデリングの抑制

によるものであった。」

 

 なんか難しくなって来ましたね。

 

【0005】

  「従って、心筋細胞シートを心筋層へ生着

させるためにはより多くの心筋細胞を投与

する必要があり、そのためには、より厚く

多量の心筋細胞を含んだシートが求め

られている。しかし、血管が無い心筋細胞

シートを4層以上積層化させても、酸素や

栄養が及ばない細胞が死滅するために、

結果として、生着する細胞数に変化が

ないことが確認されており、細胞補充

療法において有効な心筋細胞シートを

作製するためには、更なる技術開発が

必要であると考えられている。」

 

 要するに厚くする必要があるんですね?

 

【0006】

  「ゼラチンハイドロゲルは、細胞培養基質や

足場材料として使用されうる生分解可能な

生体材料であり、例えば培養細胞凝集体の

中に該ゲルの粒子を含有させるとき酸素の

供給等が良くなり細胞状態が改善されると

いう報告がある 。」

 

 そうなんですか。

 

【0007】

  「また、移植用細胞シートの作製のために

ゼラチンハイドロゲルを使用する方法として、

細胞シートを細胞培養基材から剥離させ

易いようにするためにシートにゼラチン

ハイドロゲルを付着させる方法が知られ

ている。」

 

 全然知りませんでした。

 

【発明が解決しようとする課題】

【0010】

  「本発明の目的は、ハイドロゲル、好まし

くはハイドロゲル粒子、より好ましくは

ゼラチンハイドロゲル粒子、を組み込んだ

積層化細胞シートあるいはこのシートを

含む医薬組成物、およびハイドロゲル、

好ましくはハイドロゲル粒子、より好まし

くはゼラチンハイドロゲル粒子を用いて

細胞シートを積層化する方法に関する。」

 

 製造方法に特徴があるんですね?

 

【0012】

  「本発明者らは、上記の課題を解決すべく、

特定の種類のハイドロゲル材料、好ましくは

ゼラチンハイドロゲル材料、より好ましくは

ゼラチンハイドロゲル粒子、を用いて細胞

シートを積層化させることで、シート内の

生存細胞数が有意に増加することを見出

した。さらに、この方法でシートを5枚以上

重ねた場合においても、細胞が生存、その

機能が改善することを確認した。」

 

 改善しましたかー。

 

【発明の効果】

【0015】

  「本発明の方法により、細胞が生存した

まま細胞シートを積層化することが可能と

なる。また、得られた細胞シートを用いて、

細胞補充療法への応用が可能となる。」

 

 要するに、ハイドロゲルをうまく組み

込むことができたんですね?

 

f:id:oukajinsugawa:20160506131005j:plain

 

f:id:oukajinsugawa:20160506131015j:plain

 

 ということなのですが、アイハートさんでは、

このほかにも、再表2013/137491「人工多能性

幹細胞から心筋および血管系混合細胞群を

製造する方法」や、多能性幹細胞から内皮

細胞を効率よく製造する方法の、 特許

5842289「効率的な内皮細胞の誘導方法」

などもありますので、早いところ、実用化の

目途を立ててほしいものですね。