知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

積水化成さんの、水なし活魚輸送箱

 この前、ヒラメの冬眠の特許出願の

話をしました。

 

oukajinsugawa.hatenadiary.jp

 

 上のブログを書いた時点では、まだ

水無し活魚輸送箱の出願公開はされて

いなかったのですが、この出願公開が

されていましたので、ちょっと覗いて

みましょう。

 

 出願は2014年3月31日、出願番号が、

2014-73552(特開2015-195732)、発明の

名称が、「活魚用容器、及び活魚の収容

方法」で、出願人は、積水化成品工業

株式会社さんと、公立大学法人宮城大学

なっています。

 

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 要約によると、

 

【課題】活魚の無水輸送における生存率を

より高められる容器の提供。

 

【解決手段】活魚を無水で収容する活魚用

容器において、底壁及び底壁の周縁から

立設された側壁14を有する容器本体10と、

容器本体10の開口部を塞ぐ蓋体20と、

容器本体10内に設けられ、活魚が載せら

れる底板33を有するトレイ30と、を備え、

トレイ30と容器本体10の側壁14との間、

及びトレイ30と容器本体10の底壁との間

には、それぞれ離間部が形成され、トレイ

30の底板33は、胴載置部31と尾載置部

32とを有し、底板33には、貫通孔39が

形成され、容器本体10には、トレイ30の

尾載置部32の近傍に保冷剤収容部51、

52が形成されている、活魚用容器100。  

 

 だそうで。

 

 発明の詳細な説明を見てみると、今までは、

活魚の輸送には、タンクに海水を入れ、その

タンク内に空気を送り込みつつ活魚を泳がせ

ながら車両によって運ぶ方法が採用されて

きましたが、ご存知のように、活魚の輸送の

場合、海水も運ばないといけないわけでして。

 

 このため、車両の最大積載量に対して運ぶ

ことが可能な活魚の量が少なく、輸送効率が

悪かったわけですね。

 

 さらに、輸送費用が高い航空機による輸送

には適さなかったり、輸送中に活魚がタンクの

内壁に衝突して、頭部を怪我したり、鰭が折れ

たり、お魚さんにとっても大変なわけなんです。

(お魚さんからは、「結局、食べられてしまう

さかなの身にもなってくれよー」と言われそう

ですが)

 

 これに対して、活魚を、水の無い状態で輸送

(無水輸送)する方法も今までにいろいろ提案

されていて、側壁と底とが一体的に発泡樹脂

にて形成された容器本体を密閉できるように

して、内面側に熱媒体を配設して、均一温度に

できる保持容器や、冷気供給孔を設けた箱状

にして、蓄冷材の冷気供給したりする保冷

容器もあるんです。

 

 これは、容器内を均一温度に維持することで、

活魚の生存率向上を図ったりするわけなん

ですが、 活魚の無水輸送においては、

より高い生存率が求められるんですね。

 

 上に書いた今までの発明では、容器本体

全体が均一に冷却されるんですが、今回の

本発明者らが検討してみると、、容器本体

内を均一に冷却し保冷する場合、活魚の

生存率の向上が図れなかったんだそうです。

 

 これは、活魚の頭部側と尾側とが同じ

速度で冷却され、活魚の頭部側にある内臓

(心臓など)が過剰に冷却された状態と

なるため、と考えられるんだそうです。

 

 このため、今回の発明の活魚用容器は、

トレイと容器本体の底壁との間に、それぞれ

離間部を形成して、トレイの底板には、

貫通孔を形成して、トレイの尾載置部の

近傍に保冷剤収容部を形成させるように

したんです。

 

 このようにして活魚を収容して、保冷剤

収容部に保冷剤を収容した後に、容器内に

酸素ガスを充填して密閉すると、活魚の

無水輸送における生存率をより高めること

ができるんですって。

 

 実施例では、発泡ポリスチレン系樹脂の

成型体容器を作製し、緩衝シートはポリ

ウレタン系樹脂発泡シートを使用したそう

ですよ。