知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

 知られざる特許の旅 第8回  明治の初めの専売特許権者は儲かった? それとも・・・・・・ その4

 次は、特許第54号の軽便非常長持

です。 

 

f:id:oukajinsugawa:20150826074332j:plain

 

 発明は、神奈川の関口順之助さんで、

地震のときに(そうは書いてなくて、非常の

ときにですが)、簡便に持ち運びができて、

何もないときは畳んでしまっておけるん

です。

 

 便利でしょう!!??

 

 明治19年11月から21年4月までの

販売数量は約100個で、売上約200円で、

1個2円だったんですね。

(当時の貨幣価値については、第1回目で

取り上げていますので、知りたい方は

見てください)

 

 販路は主として東京、横浜で、比率は

7対3、売上げに対する利益はあるん

ですが、そのほかに、工場建設、諸道具

購入費などがあり、全体を見ると、赤字

だったんです。

 

 知る限り侵害者はいないのですが、

類似品を製造する者がいると聞き

及んでおり、どこの時代でも真似を

する人はいるもんです。

 

 次は、納涼団扇ですが、これは、

以前に書きました。

 

 1台売れて25銭の利益だったんですが、

15年の専売特許期間を選択しましたので、

特許局から最初に「金弐拾円也」を取ら

れていますので、大赤字だったでしょう。

 

 次は、「鮨漬箱」で、東京の木村清さんの

発明です。(特許第26号)

 

f:id:oukajinsugawa:20150826074501j:plain

 

 この発明では、寿司を1個1個握る

必要がなくて、一度に作ることができる

ので、有益なんだそうです。

 

 明治19年4月から21年4月までで、

販売数量825個、売上103円75銭

1個12.5銭程度ですね。

 

 販路は相応に開けているそうです。

 

 残念ながら、専売特許権を得たからと

いって、これによる利益は出ていない

そうで、製造販売は木村さんが全部

自分でやっているそうです。

 

 次は、特許第136号の冠り蝙蝠笠で、

長野の横山與一郎さんの発明です。

 

f:id:oukajinsugawa:20150826074536j:plain

 

 これは、蝙蝠傘のように畳むことが

できて、被ることができるので、使用、

携帯とも便利で、日傘にもなるし

雨傘にもなるので、新奇有益なんです。

(「よく考えられた発明だとは思うの

ですが、よっぽど大きな傘でないと、

濡れるんじゃあねーか?」と思うのは

私だけ?

 

 明治19年5月から21年4月までで、

販売数量1,740個、売上額748円40銭

と販路は大きいのですが、費用の問題

などで、製造を拡張するまでに至って

いないんだそうです。

 

 何にお金がかかっているんでしょう?

 

 実施以来の純益は、69円70銭で、

製造は横山さん本人がおこなっています

が、販売のほうは委託してるんだそうです。

 

 儲かっているんですね。