知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

塩野義製薬さんのインフル治療薬

 塩野義製薬さんで、普通は治療に

5日ほどかかるインフルエンザが、1日

薬を飲むだけで治ってしまうという薬を

開発した、ということで話題になって

いますね。

 

 タミフルなどのインフルエンザ薬は、

細胞に侵入し増殖したウィルスを細胞の

中に閉じ込めてしまうという効果をもた

らすそうですが、新薬は、細胞内で

直接ウィルスの増殖を阻害させてしまう

というものだそうで、画期的な仕組みの

新薬だということで厚生労働省が審査

期間を大幅に短縮する「先駆け審査」に

指定して一生懸命審査しているそうで、

早くて2018年頃から販売できるの

では?とされています。

 

 ということで、どんな薬なのかいな?

とWEBを見ても詳しい話は出ていません

ので、ちょっと調べてみましょう。

 

 塩野義さんからは同系統のインフル薬の

特許出願が何件かあり、たとえば、直近の

特開2015-145409「置換された多環性

カルバモイルピリドン誘導体」は総ページ

数437、特開2014-167021「置換された

多環性カルバモイルピリドン誘導体の

プロドラッグ」が総ページ数652と

大力作なわけでして。

 

 ということなので、一番新しい特開

2015ー145409を見てみると、以下の

ように、いろんな国に出願しており、

塩野義さん、「全世界で頑張るぞ」と

いう闘志がみなぎっています???

 

f:id:oukajinsugawa:20151107151555j:plain

 

 まあ、この特許出願を読んでみても

悲しいかな、トーシロの王花陣には

チンカンプンカン?なわけですが、

まあ、わかるところだけ抜き出して

書いてみましょう。

 

 まずは、インフルエンザは、インフル

エンザウイルスの感染に起因する急性

呼吸器感染症であって、日本では毎冬、

数百万人からのインフルエンザ様患者の

報告があり、インフルエンザは高い罹患率

死亡率を伴うし、乳幼児、高齢者等ハイ

リスク集団においては特に重要な疾患で

あり、高齢者では肺炎の合併率が高く、

インフルエンザによる死亡の多くが高齢

者で占められているんです。

 

 抗インフルエンザ薬としては、ウイルスの

脱核過程を阻害するシンメトレル(Symmetrel;

商品名:アマンタジン(Amantadine))や

大魔神ならぬ、フルマジン(Flumadine;

商品名:リマンタジン(Rimantadine))、

ウイルスの細胞からの出芽・放出を抑制

するノイラミニダーゼ阻害剤であるオセル

タミヴィル(Oseltamivir;商品名:タミフル

(Tamiflu))やザナミヴィル(Zanamivir;

商品名:リレンザ(Relenza))が公知だ

そうですよ。

(トーシロ王花陣としては、タミフル

リレンザぐらいしか聞いたことがありま

せん、です、はい。)

 

 ただし、耐性を持った耐性株の出現や

副作用の問題、病原性や致死性の高い

新型インフルエンザウイルスの世界的な

大流行などが懸念されていることから、

新規メカニズムの抗インフルエンザ薬の

開発が要望されているんです。    

 

 ということで、インフルエンザウイルス

由来酵素であるキャップ依存的エンド

ヌクレアーゼは、ウイルス増殖に必須

だし、宿主が有さないウイルス特異的な

酵素活性であるため、抗インフルエンザ

薬のターゲットに適しているんです。

 

 このキャップ依存的エンドヌクレアーゼは

宿主mRNA前駆体を基質とし、キャップ

構造を含む9~13塩基の断片を生成

するエンドヌクレアーゼ活性であって、

この断片はウイルスRNAポリメラーゼの

プライマーとして機能し、ウイルス蛋白質

コードするmRNAの合成に使われます

ので、キャップ依存的エンドヌクレアーゼを

阻害する物質が、ウイルスmRNAの

合成を阻害することで、ウイルス蛋白質

合成を阻害し、結果、ウイルス増殖を阻害

するんです。

 

 このキャップ依存的エンドヌクレアーゼを

阻害する物質としては いろいろ知られて

いるんですが、 塩野義さんは、下の式(II)

で示される置換された3-ヒドロキシー4-

ピリドン誘導体を発見(発明)したんです。

(条件としてはさらに書かれていますが、

割愛します)

 

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 ということで、トーシロ王花陣がこれ以上

解説しても、「おめー、全然わかってねーじゃ

ねーか」と言われるのがオチですので、

このへんで終わりにして、まあ、ともかく、

身体に害がなく、すぐに治してくれるインフル

薬を期待いたしましょう。

 

 

 

2016年4月22日(金)追記:

 昨日のNHKニュースで、塩野義さんのインフル

治療薬で、アレルギー症状を起こし、1人死亡

というのをやっていましたね。

 

 上記のインフル薬はまだ研究段階ですので、

これとは違う、6年前に販売が始まった、重症

患者に使う点滴投与のラピアクタ(ペラミビル)

だそうですが。

 

 まあ、重症患者用点滴薬と、飲み薬では、

薬の許認可方法も違うのでしょうが、この

ような症例が出て来ると、薬の許認可も慎重に

なるのでしょうか?

 

2017年10月27日追記:

 塩野義さんで、1回服用の新薬の、製造

販売承認を厚生労働省に申請した、と新聞に

出ていますね。

 

 世界初の画期的な治療薬として、厚労省

新設した「先駆け審査指定制度」に指定され、

2018年春の販売を目指すそうですので、いよ

いよですね。