知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

特許分類検索上級編 第11回  Fタームの解析年範囲と、特許第1号のFターム

 Fタームのその5です。

 

 Fタームリストが更新されると、原則的に

過去のすべての国内文献は、最新版の

Fタームリストにより再解析されるの

ですが、実は、一部例外的に、解析され

ない場合があるんです。

 

 どういうことかというと、Fタームが解析

される文献の年範囲が限られている場合が

あるんです。

 

 これを「解析年範囲」と言うんです。

 

 Fタームというのは、最新技術に対応

するために、適宜、リストが再作成される

わけですが、この際に、再解析の人的

負担やコストを考慮して、そのテーマに

おける過去の全ての文献に対して最新版の

Fタームを付与することがされない場合が

あるんです。

 

 つまりは、ある年以降の公知日を有する

文献に限って、最新版のFタームを付与

する場合があるということなんです。

 

このようなテーマの場合には、必ず「解析

開始年」というのが書かれています。

 

 じゃあ、それってどこでわかるんだ?と

いうのは以下でわかりますよ。

 

http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/themecode.htm

 

f:id:oukajinsugawa:20151002063841j:plain

 

 試しに2H をクリックすると、以下のように

なっています。

 

f:id:oukajinsugawa:20151002063904j:plain

 

 先ほど書いた、「解析年範囲」のところに、

(解析)「開始年」というのが出ています。

 

 つまりは、たとえば、一番上の2H001の

「解析開始年」は1984年となっていますので、

この年からFターム解析がされていることを

保証しますよという意味になります。

 

 何も書かれていなくて空欄のものは、

解析できるすべての文献が対象です。

(といっても、INPITさんに確認した

ところ、特許第1号にはFタームが

付されているが、第2号には付されて

いないとか、古いものは、現在の

Fタームテーマコードで分類が難しい

ものもありますので、全体では70%程度

の付与率ではないかと言っていました。 

そんな、Fタームなどない時代の、昔の

文献にも、後でFタームを付与していた

なんて、びっくりですね。

(特許第1号には、どんなFタームが付与

されているのかは、聞き洩らしてしまい

ました)INPITさん、情報提供ありがとう

ございました。)

 

 まあ、1984年の場合には、普通はこんなに

古いものを検索する場合はないでしょうから

あんまり関係ないですが、検索期間範囲に

入っているものもありますので、その場合は

注意が必要です。

(たとえば、2H125 のフォトリソ用材料の

場合には、解析開始年は2000年 となって

います。

 ちなみに、古いものはプラピ(J-PlatPat)

では分類検索できませんが、いわゆる審査官

端末(正式名称は、「高度な検索が可能な

閲覧用機器)という、INPITさんに行くと

使わせてもらえるサーチ端末では、Fタームが

付与されていればヒットするそうですよ。

 尚、審査官端末と言っても、これは、

「なんちゃって??審査官端末」のため、

公開前の出願は見ることができません。

と~~~じぇん!!)

 

 「解析開始年」が設定されているテーマに

ついては、「解析開始年」より古い公知日を

有する文献の検索は、作成し直す前の

Fタームリストにより行う必要がありますので、

注意しましょう。

(現在「解析開始年」が設定されている

テーマはおよそ100テーマ程度ありますよ)

 

 と書いたのですが、「解析開始年」が設定

されているテーマであっても、それより古い

公知年を有する文献について、最新版の

Fタームが付与されていることがあるんです。

(おー、煩わしい!!)

 

 これは、作成し直す前のFタームリストで

解析されたFタームのデータから、機械的な

データ処理により最新版のFタームを付与

することができる場合に行われており、

このようなテーマにおいては、実質的に

最新版のFタームリストを用いれば、

過去にわたって全ての文献を検索できる

ようになっています。

 

 まあ、いいかげんな王花陣は、面倒なので、

こんなの無視して検索していますので、だから、

いつまでたってもダメなんですねー。

 

ということで、 皆様は、まじめに検索して

ください。

 

 もう一つ、先ほどのリストを見ると、(解析)

「終了年」というのもありました。

 

 これは、な、な、なんなんだ?というのを

調べてみましょう。

 

 現在、Fタームリストを作成し直した際、

新Fタームリストには新しいテーマコードが

割り当てられることになっており、旧Fターム

リストに割り当てられていたテーマコード

での解析は、新テーマコードでの解析が

始まった時点で終了するんです。

 

 この終了時点の目安となるのが「解析

終了年」というもので、「解析終了年」は、

Fタームリストを作成し直した場合の他、

Fタームの解析を停止し、そのテーマを

FIテーマに変更した場合もあるんです。

 

 つまり、上の表の2H003「電子写真の

帯電」の場合、平成12年(2000年)に

新しく2H200「電子写真における帯電・

転写・分離」に統合されてしまったため、

2H003で解析できるのは「終了年」の

2000年までですよーということになり

ます。

 

 なお、上の場合には、「解析終了年」

と統合終了年の2000年は一致して

いますが、実際にそのテーマコードが

付与された文献の公知年範囲と完全

には一致しないこともありますので、

解析するときには、しっかりテーマ

コード表を確認することに致しましょう。

 

 また、下のように、古いテーマコード

の解析終了年と、新しく統合されたテーマ

コードの解析開始年が一致しないことが

多いですので、こちらのほうも、しっかり

確認するように致しましょう。

 

f:id:oukajinsugawa:20151002064206j:plain

 

 ということで、本日のおさらいです。

 

 Fタームの検索システムは、技術の

進展や蓄積文献数の増加に応じて、

検索精度や検索効率を維持できるように、

常に、Fタームリストを新たに作成し直し

たり、テーマの統合や分割を行ったり、

FIテーマにおいてFタームリストを

作成してFタームテーマ化を行ったり

してるんです。

 

 これらをFタームのメンテナンスと

呼んでいるんですが、現在の運用では、

Fタームリストを作成し直した際には、

上記したように、テーマコードが

新たに付与されるため、メンテナンスが

行われたテーマを検索する際には、

使用する検索インデックスに注意が

必要です。

 

 また、Fタームリストを作成し直し

たり、新たに作成した際には、「再

解析」といって、原則的に、過去に

発行された公報にFタームを付与し

直す作業がおこなわれ、再解析期間

中は、通常、新旧両方の検索インデッ

クスを利用して検索する必要がある

んです。

 

 これらFタームのメンテナンスに

関する情報は、上記したURLにて

調べる必要がありますよ。

 

 ということで、さすが特許分類検索

上級編、ということで、なんだかむず

かしいことだらけですが、さらに調べて

行きまっしょい。

 

 続く。