知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

知られざる特許の旅 第4回   明治時代の技術分類

 前回の続きです。

 

 今回はどんな技術分野が多かった

のかというのを見て行くわけですが、

その前に、最初の日に出願された、

そのほかの登録特許を見てみましょう。

 

 わかりやすいように、この前と同じ表を

貼り付けておきます。

 

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 まずは、工夫かんざしですが、以下の

ように、「ロ」が「印鑑」として、

「ヘ」が「鉛筆」として取り外して

使えるかんざしなんです。

 

 便利でしょう?

(明治時代に、そんなにしょっちゅう

「はんこ」や「鉛筆」を使う女性が

いたのか?という疑問が残りますが)

 

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 次は、「納涼団扇車」です。

 

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 こちらのほうは、手前にある取っ手を

回すと、扇風機のように団扇が回転

するわけですが、両側にいる人が涼しく

なるんだそうです。

 

 「てゆーか、回している奴は暑くなん

ねーか?」と思うのですが、きっと、

お金持ちが、お手伝いさんに回させる

のでしょう。

 

 ということで、「この発明は、本当に

売れたのか?」というと、明治19年の

7月から1円35銭で売り出して、明治21年の

4月までで、なんと、1台売れたそうで、

儲けが25銭だったそうです。

 

 自分で作って自分で売ったので、材料代が

1円10銭と、原価率が81%というのは、

当時としてはリーズナブルだったのでしょうか?

はたまた高すぎたのでしょうか?

宣伝広告費も入っていたりして???

ただし、特許登録料も考えると、大赤字ですね)

 

 次は蚤除夜具です。

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 この夜具は、袋状になっていて、

寝袋のように中に潜り込むと、

虫が入って来ず、湿気を防ぎ安眠が

得られるんです。

 

 旅行や、非常時にも使え、昔も寝袋

があったんですね。

 

 どうやって、虫を防ぐかというと、

アサガオ、コブシ、昔日本でシラミや

ノミの予防に用いたビャクブコン、

線香の原料のリュウノウ、ギンナン

クローブを一定量混ぜ合わせ、この

薬汁を折り返した布目に塗っておく

んだそうですよ。

 

 洗濯は3か月から5か月に1度でよい

そうで、洗濯後にまた薬汁を塗って

おくんです。

 

 「なんか、汚くねーか?」と思う

のは私だけ?

 

 ということで、最初の登録特許は

これぐらいにして、今日の本題の、

専売特許条例黎明期にはどんな技術

分野が多かったのか?というのを

調べてみましょう。

 

 使用するのは、特許第1号から400号

までにしてみましょう。

 

 登録期間は明治18年8月14日から

明治20年11月4日になります。

 

 どうやって調べるんだ?ということ

ですが、下のように、特許第400号と

書かれているその下に、「第114類」

と、分類記号が書かれているんです。

 

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 まず、この分類記号を説明すると、

世界共通の特許技術分類IPC第1版が

発効したのは、1968年9月1日ですので、

明治時代にはIPCなど影も形もなかった

わけでして。

 

 ということで、この分類は日本独自の

分類で、専売特許条例の施行と同時に

特許分類表が作成されて、日本独自

分類として当時から使用されてきま

した。

 

 まあ、そうは言ってもこの特許400号に

付されている特許分類が専売特許条例

制定時の分類か?というとそうではなく、

何度も改訂がされて、明治42年から

44年にかけてそれ以前の明細書の復刻

事業がおこなわれ、この復刻事業

際に、明治42年の分類表に基づいて、

明細書に新しい分類が付されたよう

です。

 

 この辺の経緯は、以下の特許庁

方の資料に詳しいですので、興味が

ある方は見てください。

 

http://www.tokugikon.jp/gikonshi/260/260kiko5.pdf#search='%E6%98%8E%E6%B2%BB%E6%9C%9F%E3%81%AE%E7%89%B9%E8%A8%B1%E7%99%BA%E6%98%8E%E6%98%8E%E7%B4%B0%E6%9B%B8%EF%BC%88%E5%85%AC%E5%A0%B1%EF%BC%89%E3%81%AE%E3%83%8A%E3%82%BE'

 

 この資料によると、昔からの紙の

原本は、大正12年の関東大震災の際に

すべて消失してしまい、公報として

発行されていて、幸いにも消失を

免れた地方などから寄贈などをして

もらい、整理製本後、昭和61年に

電子化されたんだそうです。

(ということは、昔の包袋などは

見ることができないんですね)

 

 ということなので、明治42年から

44年にかけての復刻版が捕まらなかっ

た明細書は、前回の第1号のように、

分類は付されていません。

 

 ということで、特許1号から400号

までのうち分類が付されているのは

333件でしたので、この333件を調べて

みましょう。

 

 この明治42年版の特許分類表は、

特許庁図書館にあるそうですが、

調べに行くのは面倒なので、私の

ほうで、技術分類は推定しましょう。

 

 この当時の技術分類は1から136

まであるのですが、集計すると、5件

以上の登録は13技術分類で、以下の

ようになっていました。

 

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 当時は生活に密着するような(まあ、

今でもそうですが)、身の回りの製品

が多かったようで、そのほかは、工業

製品は少なく、製造と言ってもお店に

密着するような機械が多かったようです。

 

 ということで、次回は、これらの

技術の詳細を見て行くことに致しま

しょう。