知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

麻酔で輸送のおさかなさん

 この前、「ヒラメの冬眠」というのを書き

ましたが、おさかなの冬眠や麻酔方法を

研究しているところは、当然多い訳でして。

 

 今回はそのうちの一つ、発明の名称が、

「魚介類の麻酔方法および装置」という

のを調べてみましょう。

 

 これを発明したのは、久木野憲司さん

というかたで、出願人は、「マリンバイオ

テクノロジー株式会社」となっていますが、

この発明者の方は、長崎県立大学の先生

(教授)です。

 

 出願人のマリンバイオさんは、福岡に

本社がある、活魚の販売や輸送、輸出入

などをおこなっている会社です。

 

http://www.mbtj.co.jp/index.html

 

 話は違いますが、この先生、以下の

ように、訴訟などもおこなっているんです。

(今回の話とは関係ないですが)

 

http://ib-specialist.jp/2013/07/post-49-0726-ymh-1.html

 

 ということで、話を戻して、この発明に

ついては、日経新聞日経産業新聞

取り上げられていました。

(日経さんでは、一つの取材で二度おいしい

という記事でした。 日経さん、いろんな

雑誌も出していますので、もっとおいしいの

かもしれませんが。 ファイナンシャル

タイムズも買収しましたので、さらに

おいしい記事が出てくるのでしょう)

 

 おさかなさんは、二酸化炭素(CO2ですね)

を吸い込むと麻酔がかかった状態となる

そうで(さかなクンではないので、念のため)、

寝ている間に輸送をすることにより、老廃物の

排出を抑えられ、輸送量の増加と、長距離

輸送が楽になるそうなのですが、残念

ながら、そのままでは、酸欠で死んで

しまうため、酸欠対策が必要だったん

ですが、久木野さん、酸欠対策を発明

したんです。

 

 ということで、久木野先生の発明を見る

前に、おさかなさんの輸送方法には、どの

ような特許出願があるのかを、まずは見て

みましょう。

 

 どのような検索キーで調べましょうかね。

 

 IPCには、A01K63/02「生魚輸送のために

特に適合した容器」というのがあるのですが、

日本の特許出願を調べたいですので、FIの

A01K63/02@A「活魚輸送」というのを使い

ましょう。

 

 ということで、「プラピ(J-PlatPat)さん、

お願いね」と打ち込んで、輸送関係だけを

最新20件抜き出すと、以下のようになり

ました。

 

f:id:oukajinsugawa:20150730094454j:plain

 

 この前書いた、「ヒラメの冬眠」は、上から

3番目で、今回の久木野先生の出願は、上から

6番目にありますよ。

 

 技術内容は、おおまかに、水無し梱包方法

や、輸送容器、輸送システム、前記の排せつ

物対策などで、皆さん、これらを研究開発

しているんですね。

 

 それでは、久木野先生の、「魚介類の麻酔

方法および装置」というのを見てみると、

課題は、「溶存二酸化炭素を含む環境下に

おいて安全かつ実用的な簡便さをもって

魚介類に長時間の麻酔を施す」ことで、

解決手段は、「気体酸素を含む酸素気泡を

魚介類の鰓上皮細胞膜表面に接触させる

ことで、[水中溶存酸素分圧]-[鰓の毛細

血管内溶存酸素分圧]の分圧差を超えた

[気体酸素分圧]-[鰓の毛細血管内溶存

酸素分圧]の分圧差を生み出し、鰓薄板

毛細血管に摂取される酸素量を顕著に

増加させることにより麻酔によって抑制され

た自発呼吸運動下において発生する呼吸

不全を回避し、通常魚介類を取り扱う水温

(20℃前後)下での長時間二酸化炭素

麻酔を可能にした」んです。

 

 請求項は6つあるのですが、

「魚介類に対して麻酔効果を奏する二酸化

炭素濃度を水中に生成する工程と、水中に

酸素を含む酸素気泡を供給する工程を含む、

魚介類の麻酔方法で、さらに前記酸素

気泡を前記魚介類の鰓に接触させるように

供給する工程で、酸素気泡の粒径の

最頻値を300nm以下にし、酸素気泡を

4000万個/ml以上の密度で供給する」

のが肝なんです。

 

 さらには、この方法を実施するための装置

が、魚介類を収容する水槽と、水槽内に

二酸化炭素を供給する手段と、水槽内に

酸素を含む酸素気泡を供給する手段を備えた

魚介類の麻酔装置も発明したんです。

 

 実験では20時間で覚醒させたんですが、

大丈夫だったんだそうですよ。

 

 ということで、どのような産業上の可能性

があるかというと、

「麻酔によって鎮静化させた魚介類の

長時間・長距離輸送を行うことが可能となり、

麻酔によって鎮静化させた魚介類は生理・

代謝活性が低下しているため、水質悪化を

抑制することができ、限られた水槽内に

おける積載率を向上させることができ、

さらに、魚介類に対して安全な長時間

麻酔を施した後、再び元の覚醒状態に

もどして活魚として泳ぎ回ることを可能に

した新たな麻酔技術によって、陸路、空路、

海路、いずれの輸送手段においても、

従来不可能とされた遠距離まで生かした

まま魚介類を運ぶことが可能となり、魚の

養殖現場などでは、疾病予防のための

ワクチン接種、トラフグの噛み合い防止の

ための歯切りなど様々な場面で、魚体の

損傷及び消耗を防止するための魚の

鎮静化に使用することができる」

そうですよ。

 

 ということで、何の関係もないですが、

明日から8月、楽しい夏休みですね。