知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

三嶋電子さんの、水だけ電池

 先週、特大がっちりマンデーというのを

テレビでやっていましたが、結構おもしろ

そうな話がありましたので、ちょっと書いて

みましょう。

 

 東京千代田区にある家族経営の三嶋

電子株式会社というのが取り上げられて

いたのですが、ここのこれからの製品で

(テレビでは今月発売と言っていました)、

水だけで発電できる電池、というのを

やっていました。

 

 しばらく前には古河電池と凸版印刷から、

同じような水を入れるだけの一次電池が

発売されてマスコミでも取り上げられて

いましたね。

 

http://www.furukawadenchi.co.jp/mgbox/

 

 この三嶋電子さんの電池は、非常用と

いうことで、自衛隊向け朝雲新聞という

もので取り上げられていましたが、

どんなものかというのを以前の記事で

調べてみると、以下のように、1.5Vの

乾電池(一次電池)を目指しており、

2015年3月めどと書いてありますので、

製品化が遅れているようです。

 

http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0320141015aaan.html

 

 他の記事では、米沢に工場を新設

しているようで、こちらの生産ラインの

立ち上げが遅れているのかもしれません。

 

http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0520140915cbab.html

 

 ということで、この三嶋電子さんは、

設立1984年、資本金1,000万円、

事業内容は電子部品調達、電子機械

生産等ということですので、米沢に

新ラインを作るのに資金調達などが

遅れたのかもしれません。

 

http://www.mishima-jp.com/

 

 テレビによると、2010年に水電池の

研究を開始し、原理は小学生の理科の

実験と同じなのですが、電圧を上げる

のがネックでしたので、2013年に、

これに成功したとのことでした。

 

 テレビでは、懐中電灯用に開発した

水電池を、水につけるだけで、ライトが

点灯する様子を放送していましたが、

水を補充すれば、つけっぱなしで10日間

持つと言っていましたね。

 

 さらには、水分があれば、なんでもよい

とか言って、オレンジジュースやビール

などでデモンストレーションをおこなって

いました。

(これも、小学生向けにおこなう化学実験

ですね)

 

 売上目標は10億円と言っていましたが、

すごいですね。

 

 これを応用した、キッズ用ライフジャケット

なども考えているんです。

 

http://www.mishima-denshi.jp/

 

 ということで、どんな発明なのか特許

関係を調べてみましょう。

 

f:id:oukajinsugawa:20150713130302j:plain

 

 調べると、上のように4件の出願があり、

3件が登録されていますので、効率が

よいですね。

 

 「水電池」と、これを応用した「救難用

ライト及びジャケット」が関係している

ようですので、「水電池」というのを

見てみましょう。

 

 請求項の1を抜粋編集すると、以下の

ようになっています。

 

  使用時に、電池セルが入ったハウジ

ング内に注水することによって作動する

電池で、正極は、マグネシウムより

イオン化傾向の小さい金属材料で、

負極は、マグネシウム材料で作られて

いて、電解質は、吸水性及び保水性を

有するシート材となっていて、このシート

材は、0.1~0.5wt%のニトロフェノール、

1~26wt%のナトリウム、0.5~8wt%の

クエン酸及び0.1~1.0wt%のポリビニ

ールアルコールを含有するんだそうです。

 

 出ましたね、「イオン化傾向」。

 

 小学校だか、中学校で、イオン化傾向は、

「かかさま、なまぐさくあれ、あてに、

するな ~~」などと暗記した記憶が

あります。

 

 請求項には、正極材質が何なのかは

書かれていませんが、実施形態のほう

には、例として、アルミや銅などが

書かれています。

 

 この前の、古河さんの電池でもマグネ

シウムが使われていましたが、何でマグネ

なの?ということで、近くの専門家に聞いて

みたところ、なるべくイオン化傾向の強い

負極にしたほうがよいのですが、これ

以上イオン化傾向が強いカルシウム

などは、加工性が悪いから、マグネに

しているんだろうと言っていました。

 

 また、正極のほうは、おそらく、銅が

使われてるんだろうとのことでした。

 

 ということで、水をそそぐことにより、

電解質シートが使えるようになり、この

電解質シートが「みそ」のため、電気

化学反応で生じた水酸化マグネシウム

が負極表面に析出することが抑制されて、

長時間安定した放電を維持できるんだ

そうです。

 

 ちなみに、古河さんの電池のほうは、

以下のようになっており、こちらのほうの

原理も昔からのもので、発明の「きも」は、

金属空気電池の外装体を、紙でも可能に

した、というものでした。

 

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 ということで、それではまた。