知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

ん? 日本ハムが特許を取り下げ??

 日本ハム、調子いいですね。

 

 大谷君、負け無しですし。

 

 野手のほうは、中田選手はホームランは

多いですが、皆さん高打率というわけでは

ありませんので、つながりが良いのでしょうか。

 

    昨日も逆転勝ちでしたし。

 

 ということで、今日はプロ野球の話題で

お茶の間を賑わそうという趣旨では

ありませんので、話を戻して、今、効果を

偽って特許を取得したとして話題になって

いる、日本ハムの話です。

 

http://www.nikkan.co.jp/newrls/pdf/20150529-24.pdf#search='%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%8F%E3%83%A0+%E7%89%B9%E8%A8%B1'

 

 上のように、日本ハムさんが、「ごめんなさい」

ということで、特許の取り下げ手続きに入った

そうなんです。

 

 「別に嘘言って特許登録したっていいじゃん」

てなことを私が言っていてはまずいわけでして。

 

  これが、体に悪いものが何か入っていたら、

大変なことになっていましたね。

 

 嘘言って、他社にライセンスしていたそうです

ので、ライセンス料はお返しするそうですが、

ライセンスを受けていた会社はさぞや怒って

いることでしょう。

 

 特許庁さんでも、次からは、日本ハム

特許出願には疑心暗鬼になることでしょう。

 

 ということで、まあ、取り下げ手続きするのは

当然だよね、というところなのですが、てゆーか、

特許になったものって取り下げなんてできたっけ?

というのが今日のお話です。

 

 その前に、まずは、どんな特許か見てみると、

発明の名称は「イムノグロブリンA誘導能の

高い新規乳酸菌」、出願日は2009年3月30日、

特許番号4565057号で2010年に登録がされて

います。

 

 しかーし、これって、PCT出願と言って、

外国にも出願されているんです。

 

 国際公開番号はWO2010/001509ですので、

得意のespacenetで海外を調べてみましょう。

 

まずは、下をクリックして、下のように打ち

込んで、「検索」をクリックすると、でーたーなー

というところですね。

 

http://worldwide.espacenet.com/advancedSearch?locale=jp_JP

 

f:id:oukajinsugawa:20150602081736p:plain

 

 

f:id:oukajinsugawa:20150602081810j:plain

 

f:id:oukajinsugawa:20150602081844j:plain

 

 日本ハムさん、発表には書いてありません

でしたが、アメリカでも登録しちゃってるん

ですね。

 

 大変なことになっちゃいました。

 

 アメリカはどうするんでしょう?

 

 まあ、それはさておき、「特許登録された

ものを、取り下げできんのか?」というのを

調べてみましょう。

 

 特許法で、「取り下げ」または「取下げ」

という言葉が出てくる条文を調べると、9条、

14条、34条の2、34条の3、36条の2、38条の2、

39条、41条、42条、46条、48条の3、64条の2、

65条、120条の4、120条の5、134条の2、

148条、155条、168条、184条の4、184条の11、

184条の13、193条、195条なのですが、

「特許出願」は、取り下げができると書かれて

いるのですが、「登録特許を取り下げることが

できますよー」などとは一言も書かれて

いないんです。

 

 なぜかというと、「取り下げる」という意味は、

申し出ていたお願いを、撤回することなのですが、

特許出願をしている段階では、申し出ている

お願いは特許庁の手の中にあるのですが

(法律用語で「係属」といいます。(以前に

ケイゾク」と言うテレビドラマがありましたが、

こちらのほうは、係属なのか継続なのか、よく

わかりませんでしたが))、登録されると、

特許庁の手を離れてしまうので、特許庁さん

から、「取り下げなんて言われても、もうボク

関係ないもんね」と言われてしまうからなん

です。

(登録料の事務処理は、毎年続いているって

言っちゃー、まーその通りなのですが、事務

処理はまた別ということで)

 

 「じゃー、どうすんだよー」ということなの

ですが、登録後は、「捨てちゃおー」っていう、

放棄の手続きは可能なんです。

 

 放棄の手続きは、「積極的に放棄します!!」

というものと、消極的に、期限が来てもお金を

払わない、という、二通りがあるわけですが、

今回は、積極的に放棄手続きを進めます、と

いうものなんですね。

 

 この特許権の放棄については、97条の1項

などに出てきます。

 

 なお、高林龍先生の「標準特許法」という

書籍では、特許権の消滅事由として、存続期間

満了、存続期間の延長(の満了)、無効審決の

確定、特許料の不納、権利の放棄、相続人の

不存在、(独禁法100条による)特許権等の

取消し、が挙げられています。

 

 ということで、まーおんなじって言えば結果は

おんなじなのですが、法律的にはこんなもんだぞ

というのを書いてみました。

特許庁さん最近サービスがいいので、法律に

書かれていなくても、サービスで取り下げして

くれちゃったりして?????

  ・・・・そんなことはないと思いますが)