知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

プロダクト・バイ・プロセス・クレーム現代昔おとぎ話

 すいません、最初にあやまっておきます。

 

 「なんか、おれんところの話をしてんじゃ

ねーか?」と思った方には、ごめんなさい。

 

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 なるべく簡単に書こうと思ったら、

こんな話になってしまいました。

 

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 ということで、現代昔おとぎ話です。

 

 むかーし昔、あるところに、ロバさんが

住んでおったそうな。

 

 ロバさんは、おいしいお料理を思いついたので、

「となり村でも、人気になるんではないかい」と

いうことで、「せんばいとっきょにしてもら

おーっと」と思い、となり村にも、「せんばい

とっきょにしてくださいな」と、お願いを

したそうな。

 

 そうすると、お願いをされた村のとっきょ

きょかきょくは、「ロバさん、あのね、

あなたのラミパスラミパスルルルルルー」って

いうお料理は、せんばいとっきょのお願いで、

もう前に出ていたりするんで、「ラミパス

ラミパスルルルルルー」っていうお料理は、

せんばいとっきょにはなりませんよ。」と

言われてしまったそうな。

 

 困ったロバさんは、「背に腹は代えられま

せんなー。最初の一番広いせいきゅうこーは

削除して、何とかほかのもので通してもら

おうーっと」と考えて、再度お願いをした

そうな。

 

 そうすると、とっきょきょかきょくは、

「ロバさん、あのね、あなた、お料理の素の

がんゆうりょうとか、なんかいろいろ、変

ですよ。 これではやっぱりきょぜつの

さていになりますよ」と言われてしまった

そうな。

 

 ロバさんは、「だけどこれじゃーやっぱし

不服だよなー。」ということで、きょぜつの

さていふふくしんぱんというものを請求する

のと同時に、「拒絶だ、拒絶だ―」と言われた

請求項とかを削除し、「作り方も入れたせい

きゅうこーがあるんで、そっちだったら、

だいじょぶそうだから、そっちを使っちゃ

お―っと」ということで、請求項の8だった

請求の範囲をちょっと書き直して、新しい

請求項の1として、

 

【せいきゅうこーその1】

つぎのだんかい:

a)ラミパスの濃縮有機溶液を形成し、

b)そのテクマクマヤコン塩としてラミパスを沈殿し、

c)再結晶化によって当該テクマクマヤコン塩を精製し、

d)当該テクマクマヤコン塩をラミパスラミパスルルルルルーに置き換え、そして

e)ラミパスラミパスルルルルルーを単離すること、

を含んで成る方法によってお料理される、ラミパスラミパス

ルンルンルンの混入量が0.5重量%未満であり、エビピラフの素の

混入量が0.2重量%未満であるラミパスラミパスルルルルルー。

 

及びこれに加え、請求項の9までを書き入れた

手続き補正書で、「えーい、きよみずの

舞台から飛び降りたつもりだい、これで

なんとかしてちょーだい!!」とお願いを

したら、なんとか、せんばいとっきょに

することができたそうな。

 

 めでたし、でめたし??

 

 てゆーか、今回の現代昔話はこれで終わり

じゃなくって、まだまだ続くんです。

(本題ではないですが、拒絶となったり

してあきらめきれなかった請求項は

4回も出願分割したりしたのですが、

残念ながらすべて拒絶になったり、

登録になったものも無効審判を請求

されて登録になったものを訂正したり、

(訂正により、先ほどの請求項1の

重量%が少し変わりました)さらに

さらに、無効審決取消訴訟など起こ

されて、最初は有効と判断されたのに、

さらに、「無効にされるべきだよね」

などと混迷を極めているんです)

 

 この登録で、ロバさん安心していたん

ですが(上のように安心はできません

でしたね)、おんなじお料理を作る

キリンさんが現れたんだそうな。

 

 ここで、「おんなじお料理を作るなんて

だめだよねー。」と思ったロバさんは、

オオカミさんに、「キリンさんがお料理を

作るのをやめさせてくださいな。」

とお願いしたそうな。

オオカミさんと言っても、すんげー

こわいおかみさんとは違いますので、

念のため。

 

ちなみに、キリンさんも、対抗策として、

上に書いたように、無効審判とか、無効審決

取消訴訟とか起こしたそうな)

 

 最初のとーきょーのオオカミさんは、

「ロバさん、あのね、あなた、作り方を

せいきゅうこーにわざわざ入れてるんでしょ。

別に作り方を書かなくっても「これこれを

せんばいとっきょにしてくださいな」って

書けたのに書かなかったんだから、キリン

さんの作り方が違うんだもの、文句は言え

ないでしょ。」と言ったそうな。

 

 ロバさんは、「これには納得いきま

せんなー。」ということで、次には、

もっと偉い、とざいとーざーいのオオカミ

さんにお願いしたそうな。

控訴ですね)

 

 そうしたら、とざいとーざいオオカミ

さんは、「これはえらいこっちゃ」と

いうことで、普通は3人でお話するのに、

5人も出てきて、「どうしようか」と

お話したそうな。

 

 いろいろお話したところ、「まあ、

いろいろあるけど、とーきょーオオカミ

さんの結論には問題はないよね。

当該発明の技術的範囲は、当該製造方法に

より製造された物に限定されるものとして

解釈・確定されるべきであって、他の

製造方法を含むものとして解釈・確定

されることは許されないのが原則であーる。」

と言ったそうな。

 

 ということで、

 

1 本件控訴を棄却する。

控訴費用は,控訴人の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理

申立てのための付加期間を30日と定める。

 

 となってしまったそうな。

 

 そういうことで、これからが物語の

佳境なんですよ。

(佳境までが長いですね)

 

 さらにさらに納得いかないロバさんは、

一番偉い最高オオカミさんにも、お願いに

行ったそうな。

(上告です)

 

 そうしたところ、プロダクト・バイ・

プロセス・クレーム(物の発明を作り方で

書く書き方ですね)について、どんな

場合が侵害なんだ?というのは今までは

定説がなく、このため、最高オオカミさんも、

「気合いが入ったお知らせを出すぞ!!」と

いうことになったそうな。

 

(と言っても、原則は、製法が記載されて

いても製法は関係なく、成分が同じなら

侵害になるという同一説という説が一般

的で、例外的に、作り方などでわざわざ

特定したというような特定な事情がある

場合には、その作り方により作られた

物しか侵害とならない、という、限定説

もありました。

(このほかにも説があったりして、書き方が

粗っぽくて、同業の方が読んだら、「おめー、

きちんと書けよなー」と怒られそうですが、

さらにプロダクト・バイ・プロセスについて

知りたい方は、特許判例百選〔第4版〕の

130ページなどを参考にしてください)

(第3版とかにも書かれていますが、判例

古いです))

 

 それでは、最終的に、ロバさんのお料理は

保護されたんでしょーか?それともキリンさんの

お料理は大丈夫だったんでしょーか?、はたまた

最高オオカミさんはどんなお知らせをするので

しょーか?、ということなのですが、実は、

このように争いのあったプロダクト・バイ・

プロセス・クレームについて、重要(と思われる)

判決が6月5日(すなわち、今週ですね)に出る

ことになってるんです。

 

 ということで、この判決については、

ほかの方が詳しく解説するでしょうから、

興味のある方はWEBを覗いてみてください。

 

 尚、一番重要なのは、どちらが勝ったか

負けたかということではなくて(当人達に

とっては、理由よりも勝ち負けのほうが

大事ですね)、プロダクト・バイ・プロセス・

クレームについての侵害判断をどのように

するか?というのが重要ですので(場合に

よっては、審査基準の改訂もあるかも

しれません)、このへんをしっかり

読むことに致しましょう。

弁理士受験の方々にとっては、今年は

出ないでしょうが、来年このような問題が

出るかも知れませんよ)

 

 尚、今週出る判決については、特許法的に、

このほかに104条の3「特許権者等の権利行使

の制限」とか、104条の4「主張の制限」とか

絡んできて突っ込みどころ満載なのですが、

あんまり関係ないので、これらの話は、次の

現代昔話に譲りましょう。

 

 それではまた。

 

 

 ということで、おとぎ話風に仕立てるために、

かなり脚色をしてしまいました。

 

 関係者の方が読んでいたら、ごめんなさい。

 

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 2015年6月12日(金)追記:

 6月5日に最高裁判決が出ましたので、

「とっきょきょかきょく」から、以下のように、

「少し考えさせてくださいな」というお触れが

出ていますね。

(「とっきょきょかきょく」ではなくて、

特許庁さんですね)

 

プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査基準及び審査・審判の取扱いについて | 経済産業省 特許庁