知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

鮮度保持フィルム

 この前の日曜日の読売新聞に、以前に

書いた蜘蛛の糸のスパイバーさんが、

「優等生ベンチャー企業」ということで、

取り上げられていましたね。

 

 自動車部品会社の小島プレス工業さんと

組んで量産化を目指しているそうで、

頑張ってください。

 

 ということで、今日は蜘蛛の糸の話では

全然なくて、私のところでキャベツを

半分に切ったものを買うと、ラップに

くるまれているんですが、白菜4分の1に

切ったものを買うと、ラップでなく、

透明フィルムにくるまれていて、空気に

さらされていました。

 

 「いきなりわかんねーこと書くなよ。

全然違う話じゃねーか。 まずは何か

説明を書けよな。」というところですが、

皆様の住んでいるスーパーではいかが

ですか?

 

 私のところでも、スーパーによって

包装形態が違うようですが。

 

 「オレは主婦じゃねーからそんなの

わかんねーよ!!」というかたは、

近くの買い物のプロ?に聞いてみて

ください。

 

 なんでスーパーやコンビニによって、

ラップの仕方がみんな違うんでしょうね?

 

 ということで、今回はラップつながりで、

フイルムパッケージの話です。

 

 ブロッコリー、ホウレンソウ、枝豆、長芋

キノコ、バナナ、かんきつ類などなど、

色変わりやしおれを防ぐために、最近

高機能な鮮度保持フィルムが用いら

れているそうです。

 

 住友ベークライト株式会社さんという

ところがあるのですが、この会社さん、

放送のプロなんですってね。

 

http://www.sumibe.co.jp/

 

(ちょっと違って、放送のプロではなくて、

包装のほうの、成果物向け鮮度保持

フィルムの製造販売をしているわけ

ですが)

 

 ベークライトというのは何かというと、

フェノール樹脂なわけで、世界で初めて

植物以外の原料から人工的に合成された

プラスチックだそうです。

 

 住友ベークライトさんのHPでも説明

されており、ベークランドさんが発明した

ので、ベークライトなんだそうです。

 

 この樹脂は、御多分に漏れず熱で硬化

するわけで、硬化後は3次元的な網目構造を

持つんですね。

 

 住友ベークライトさんの資本金は、約

370億円、従業員連結5262名、年間売上

連結2060億円とお金持ちの会社です。

 

 この会社さん、青果物向け鮮度保持

フィルムの製造販売開始が1991年だ

そうで、商品名はP-プラスといって、

P-プラス開発部というところで開発

しているんですね。

 

http://www.sumibe.co.jp/product/p-plus/index.html

 

 内容を見ると、業務用のほかにも、

家庭向けのものも出しています。

 

 この前、新聞に書いてあったのですが、

青果物の鮮度が落ちるのは、青果物が

収穫後も生きて呼吸を続けており、これに

より、収穫前に蓄えた養分を消耗してしまい、

熟成や老化が進み、品質が低下するから

なんだそうです。

 

 このため、鮮度を保つのに、青果物の

呼吸を抑えればよく、低温で保存するのが

よいと書かれていました。

 

 冷蔵庫で保存するのは、今では子供でも

知らない者はいないでしょうが、呼吸を

抑えるためというのは知りませんでした。

 

 知らなかったのは、私だけ?

 

 また、ミクロの孔をあけたフィルムで

包装することで、低酸素、高二酸化

炭素の状態を実現できるそうで、

P-プラスはこの原理を応用して

いるそうです。

 

 孔があいていないフィルムで密封して、

酸素を完全に絶ってしまうと酸欠状態と

なってしまい、嫌気呼吸を起こし、

発酵臭が発生してしまうんだそう

ですね。

 

 呼吸しているのは動物だけではないん

ですね。

 

 私など、空気になるべく触れさせない

ほうがいいんだろうと思って、余った

野菜はラップでぐるぐるに巻いて

冷蔵庫に放り込んでいましたが、

違うんですね。

 

 知らなかったのは私だけ?

 

 奥様方の間では、常識なのでしょうか?

 

 このミクロの孔をあけたフイルムで

包装すると、葉物野菜の鮮度保持期間を

3~4日延ばせるそうです。

 

 難しいのは、青果ごとに呼吸量が違って

おり、これに合わせてオーダーメードで

孔の大きさや数を調整し、最適な呼吸量に

しないといけないんだそうで、このための

Pープラス開発室だったんです。

 

 野菜の皆さんの呼吸量が違うというのも、

またまた知りませんでした。

 

 知らないのは私だけ?

(しつこいですね)

 

 現在、採用実績は約60種類だそうで、

成功例は枝豆だそうです。

 

 枝豆は、昔の色変りを目立たなくする

緑色のネット包装を思い出しますが、最近は

ジッパー付フィルム包装が主流だそうです。

 

 遠隔地で生産される物品が首都圏で

流通するようになったのも、鮮度を保てる

期間が延びたためなんですね。

 

 ただし、ニーズはあるのに、製品化に

至っていない青果もあるようで、夕張

メロンや桃などは、なかなかむずいん

だそうです

 

 さらに製造方法も難しいそうで、確実な

精度で孔をあけたフィルムを大量生産する

というのも高度な技術が必要だそうで、

このため、通常の包装袋の2倍の価格

となってしまうと書かれていました。

 

フィルム需要が急増する食材は、生食用の

千切りキャベツや加熱用の野菜炒めセット

などのカット野菜だそうで、カット野菜も

呼吸しているんですね。

 

ということで、住友ベークライト株式会社

さんの研究がどんなもんなのか、得意の

IPDLを使って特許出願から見てみましょう。

 

 IPDLの公報テキスト検索では、平成5年の

出願からヒットするわけですが、あんれ、まー、

1万884件もヒットしてきました。

 

 平成5年は1993年ですので、年平均、

500件近く出願しているようです。

 

 内容を見てみると、一番多いのはやはり

IPCのC08有機高分子化合物関係で、次は、

半導体用樹脂関係も取り組んでいますので、

H01基本的電子素子関係、その次がB32

積層体と続いていきます。

 

 最近の包装関係の出願を見てみると、

「青果物鮮度保持包装袋」、「凍結真空

乾燥用包装袋」などが出願されていますが、

2010年からの出願に限ると、最近は基本

的電気素子(半導体等)や医療関係を

盛んに研究しているようです。

 

 それでは、この分野でどのような参入企業

があるかというと、三井化学東セロ株式会社

株式会社精工(株式会社精工技研などもある

ので、「株式会社精工」で検索すると、技研さん

もヒットしてきます)などが出てきます。

 

 尚、住友ベークライトさんは、業務用

だけでなくP-プラスの仕組みを使った

家庭用野菜保存用ジッパー袋も作って

いるので、東急ハンズ、ロフト、楽天市場

などでも購入できるそうです。

 

 ということで、私も野菜を買うときには,

P-プラスを注意して見てみましょう。