知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

透明な氷

 「氷っていったら透明だろ?」という声が

聞こえてきそうですが。

 

 考えてみると、冷蔵庫の製氷皿で作る

氷って、透明じゃないですよね。

 

 氷屋さんでの分厚い氷も、透明なようで

まったくの透明ではないようです。

 

 ということで、究極の透明な氷を作る

方法を、長岡技術大学の上村靖司教授

というかたが開発したという記事が出て

いました。

(専門は、雪氷工学だそうで、いろんな

研究分野があるものです)

 

 どのようにするかというと、零度より

温度が高い環境で凍らせ、水の分子が

完璧に並ぶ単結晶にするんだそうです。

 

 コンビニなどで売られているきれいな

氷は、零下10℃程度でゆっくり冷やし、

気泡を外に逃がしながら凍らせるそう

で、残念ながら完全透明とまでは

行ってないですよね。

 

 この方法は、気温が零下でなくても

池とかに氷が張るという、放射冷却現象

を応用するそうで、この方法だと単結晶の

氷となり、透明になるんだそうです。

 

 ということで、わかったような、わからない

ような気がしますので、特許出願があるか

調べてみると、ありました、ありました。

 

 出願が2006年、登録が2012年11月

発明の名称は「製氷装置」、そのものずばり

ですね。(拒絶理由通知が来て、これに

応答し、発明の名称も減縮していますので、

出願公開時の発明の名称は、「液体の

固化方法、製氷方法および製氷装置」

でしたが)

 

 先ず課題ですが、透明度が高く商品価値の

高い単結晶氷を、任意形状をもって連続的に

製造できることだそうです。

 

 透明度が高いと商品価値が高いと書かれて

いますが、どの程度価値が上がるんでしょうね。

 

 まあ、コマーシャルで、「透明氷」でがんがん

宣伝すれば、かなり売れるのかもしれません。

(バーやクラブでもどんどん使ってくれるかも

しれません)

 

 この方法は、水で実施例が書かれていますが、

固化する液体として、たとえばアルコールにも

適用することができると書かれています。

 

 まあ、アルコールに応用できれば、飲む

アルコールではなくて、なめるアルコール

とか、そのままコップに入れて溶かして

飲むとか、私も買ってみたいものです。

(この場合には、別に透明でなくても

よさそうな気もしますが)

 

 尚、単結晶ですと、溶けにくいという

メリットもあるそうで、溶けにくい氷は

暑いときにはよさそうです。

 

 それでは、今度はその装置です。

 

J-STORE(明細書~製氷装置 特願2006-271669~)

 

 上記の一番下に図がありますので、

これを見ながら以下を読んでください。

(タイミングによって、図が出て来ない

ことがあるかもしれませんが)

 

 まず、水を入れる容器が必要ですね。

 

 この容器の外側は熱を処断するために、

断熱材で覆われており、この容器の上部は

開口部となっています。

 

 この容器の開口部はその上にある箱状の

真空槽に接しており(つまり、真空層が箱の

上に乗っかているので、開口部は塞がれて

います)、その真空槽の上にペルチェ素子、

さらにその上に放熱板と電動ファンが備え

られています。

 

 おーっと、ここで、ペルチェ素子なるものが

出てきました。

 

 ペルチェって、中学だか、高校で習った気が

しますので、ちょっと調べてみましょう。

 

 調べると、ペルチェ素子とは、電気を流すと

片方が暑くなり、片方が寒くなる(うそです。

片方が熱くなり(発熱)、片方が冷たくなる

(吸熱)です)もののようです。(流すのは

電気ではなくて、直流電流ですが)

 

 フランスのJean Charles Peltierさんが発明?

ではなくて、発見したのでこう呼ばれています。

 

 英語読みならチャールズさんですが、フランス

のかたなので、シャルル ペルティエさんなの

ですね。

 

 これの逆が、いつもお世話になっている

熱電対のゼーベック効果です。

(「おれはお世話になってないぞ」というかたも

おいでと思いますが)

 

 ということで、ペルチェ素子の下部が冷たく

なるように通電し、上部の熱は放熱板と冷却

ファンで逃がすということをすると、ペルチェ

素子冷却部側に接した真空槽は、槽材料を

伝って熱移動が起こり、その下にある水を

ゆっくりと冷やすことができるようになります。

(今回の真空槽は合成樹脂材料を使用

しているそうです)

 

 この透明氷を売り出したという話を

まだ聞かないのですが、効率を高めたり

して、どこかの企業と作戦を練っているの

かもしれませんね。

 

 それではまた。