知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

平成26年度弁理士試験論文式筆記試験 著作権法

 私のブログを読んでくださっている方は、

今日は何か難しいことが書いてあるのか?

と思っておいででしょう。

 

 そんな難しいことは書いていませんので

ご安心を。

 

ということで、まだ商標法が終わっていま

せんが、ちょっと一服いたしましょう。

 

 弁理士試験というのに論文式試験というのが

あるのですが、その中に選択式(専門)試験と

いうのがあります。

 

 修士や博士等の方はこの専門科目の試験は

受ける必要がないのですが、大学卒業などの

方はこの試験を受ける必要があります。

 

 この試験は、自分の専門分野を選択するの

ですが、この中に著作権法も入っています。

 

 今年の論文選択試験というのもすでに

おこなわれ、特許庁では7月28日に問題を

公表しています。

 

 というところで、この問題が結構おもしろいので、

見てみたいと思います。

 

http://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/pdf/h26ronbunshiki_s/test/t6_03.pdf

 

 問題は上記になりますが、まず一番先に背景の

説明があって、これに関して問題が3つ出されて

います。

 

 まずは1番目の問題を見てみましょう。

 

 「事務所の応接室の壁に、有名な揮毫が

飾られていて、写真を撮ったら、写っちゃった」

と、いうものです。

 

 これを月刊誌に掲載したら、侵害になるか?

という問題なのですが、まずは、これが著作物

だったら、普通に写真に撮ったらコピーをした

ことになり原則、「ブー」となります。

 

弁理士試験受験生の方を対象としたブログでは

ないため、専門用語も使わないし、根拠条文も

示しません。 もし受験生の方が書くんでしたら、

正確に、「複製」という言葉や、21条という根拠

条文も必要ですね)

 

 ところで、弁理士試験の論文の場合には、

いろいろ前提を細かくチェックしていく必要が

あり(訴訟の場合も同様です)、いきなり

上のようなことを書いたら、「あんた、バッテン

ね」と怒られてしまいます。

 

 何度も書いていますが、著作権の場合には、

まずは、権利が発生しているのか、はたまた

権利は存続しているのかというのを判断する

必要があります。

 

 まずは、有名な書家が書いたものですので

(赤ちゃんが書いても同様ですが)、権利は

発生しているでしょう。

 

また、書家はまだ生きている大物政治家に

頼まれて書いたとなっていますので、まあ、

権利は存続しているのではないかと思います。

 

(権利の存続期間は原則、死後50年です)

 

 それでは、権利者は誰でしょう?

 

 問題では、「E(有名な書家)の著作権上の

権利を侵害するか」となっており、普通は

ここに、一つ目の落とし穴?が隠されています。

 

(論文試験の問題は、えらーい先生方が、

いろいろ頭をひねって落とし穴を制作?して

いますので、一言たりとも余分な言葉は書かれて

いませんので気を付けましょう。 受験生向けの

ブログではないのに、なんかごっちゃになって

来ましたね)

 

 まあ、論文の書く文字数から考えると、落とし

穴をねらったものではないとは思いますが、

訴訟のときにはしっかり考慮にいれるところ

なので、ちょっと調べてみましょう。

 

(論文では、ちゃんと考慮に入れているぞ!と

いうのをさらっと書くと、加点対象ですね。

「誰の」権利を侵害するかという問題文にはなって

いないので、この問題では検討しなくても大丈夫

ですが)

 

 狭義の著作権というのは他人に譲り渡す

ことができます。 一方、著作者人格権という

のは譲り渡すことができず、一身専属といわれ

ます。

 

 大物政治家がこの著作権を譲り受けていて、

お金をもらって展覧会を開こうなどと考えていたら、

大物政治家の複製権というのを侵害したことに

なりますし、書家が著作権を譲り渡していなかったら

書家Eの著作権法上の権利を侵害することに

なります。

 

(譲渡していても、先ほど書いたように、著作者

人格権は書家Eのもとに残っていますが。

 

 また、大物政治家に著作権を譲渡していたと

しても、大物政治家が内容をチェックしたと書か

れていますので、まあ大物政治家からは文句は

出ないと思いますが、念のため書いてみました。

 

はたまた、著作権と所有権は違うんだ、などと

いう願眞卿事件という有名な事件もありますが、

この問題とは関係ないので置いておいて)

 

 しかーし、論文でここで終わったら、「著作権って、

いろんな権利があるんだけど、あんたそれを書いて

いないじゃん」として、減点されてしまいます。

 

 ということで、何の権利を侵害することになるの

かをきちんと書きましょう。(問題では、「いか

なる権利を侵害するか」とはなっていないので、

ここでは、さらっとでよいでしょう)

 

 長々書いてきましたが、今まで書いてきたことは、

問題(1)での重要な点ではありません。

(論点といいます。 尚、論点でない上記を長々

書いたら論文用紙がいくらあっても足りません

ので、注意しましょう)

 

 じゃー、なんでお前長々と書いて来たんだよと

言われそうですが、何度も書きますが、受験生

ブログではないので、訴訟などのときにはこの

ような部分も検討が必要だ、というのを説明の

ために書いています。

 

 ということで、次回は問題(1)の論点に迫ります。

 

 

 

2015年2月26日追記:

 論文式選択科目の制度が変わる、と特許庁

から発表されていますね。

 

 選択科目に著作権法があるのは平成27年度で

最後だそうで、今年度著作権法で受ける方は

頑張ってください。