知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

知財戦略中級編  不思議ちゃんを解明しよう

 前回は、不思議ちゃんで終わりました。

 

 なぜ職務発明と職務著作が違う扱いなのかと

いうのは、何しろ法律が古くて、その頃法律を

制定した人が生きていないので、よくわかって

いないんです。

 

それなら、ほかのことはなぜわかっているんだと

いうことになりますが、職務著作については

むかーし昔きちんと書いてくれていなかった

ようです。

(ここのところは推測です。すみません)

 

 後で書きますが、職務発明はなぜこのような

法律体系となっているのかというのは、わかって

います。

 

 しかし、職務著作の理由がはっきりとわかって

いません。

 

 弱りましたね。

 

 ということで、私のほうでいろいろ書かれている

ものから推測してみましょう。

 

1 民法の雇用の原則(民法623条)説

 労働者は労働を提供し、給与を得ているんだから

そこで作られた成果物は、使用者のもの、

という考え方。

 

 職務著作制度が昔から何も問題になっていないん

だから、この理由じゃね?というものです。

 

2 法目的説

 著作権法には別に著作者人格権の権利行使による

著作物の利用の弊害の問題があり、これが一身専属で

あるため(著作権法59 条)、著作者人格権の処理を

統一的に行い著作物の利用を円滑に行う必要が

あるという説。

 

 要は、著作権法の目的を実現するために、このような

制度となっているんだーというものです。

 

3 保護客体の違い説

 保護されるのは、発明はアイデア(情報)だし、著作物は

爆発なので(・・・うそです。 表現です)、発明の範囲という

ものは広く、著作物の範囲というのは表現それだけ、

すなわち狭いものとなりますので、こんな狭いものは

使用者に帰属させてもいいんじゃね?というものです。

 

4 成立要件説

 職務発明は、過去の職務も含むので広く、職務

著作は、法人の発意によるものでなければならないので、

非常に狭く、法人に帰属させてもOKでは?という

ものです。

 

 まあ、そのほかにもいろいろ言われていますが、

職務著作についてはこの辺でおいておいて、まあ、

産業の発達を目的とする(特許法1条)ことと、文化の

発展に寄与するというこの法目的の違いによるもの

のような気がしますがいかがでしょう。

 

 尚、現在えらーい先生方が、1月2回ほど集まって、

職務発明制度をどうするかという論議がされています。

 

産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会 | 経済産業省 特許庁

 

 上記を開いてもらって、上の分科会(7月14日の時点で

7回までの内容が公開されています)のほうがそうです。

 

 特許を受ける権利を誰に帰属させるかというのが

論点ですが、各国での取り扱いについてもこの会議の

中で公開されています。

 

http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/newtokkyo_shiryou006/05.pdf

 

 各国で違いますよね。

 

この改正論議については、広く意見も募っており、

企業側からは、「特許を受ける権利は、使用者(法人)に

帰属させてくれー」という意見だし、労働者側(労働組合

からは、「現状と同じ従業者に帰属するのは当然だ―」と

いう意見が出されています。

 

 それぞれの立場からすれば、当然って言っちゃ当然の

意見ではないでしょうか。

 

  日本では大正10年に法改正されるまでは、使用者に

帰属するとされていました。

 

 昔は、労働者の権利というのがそれほど強くなかった

のですが、労働者の力が強くなってきたからといわれて

います。

 

http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/newtokkyo_shiryou004/02.pdf

 

 上記では、デモクラシーの黎明期にあった当時の

社会的影響が反映されたと書かれています。

 

 したがって、法改正というのもパワーバランスが関係

しているといっても過言ではないでしょう。

 

 著作権法では、昔制定された著作権法の中の

職務著作制度が、大正デモクラシーの嵐の中でも、

文句が出なかったため、そのままになっていると

いうのが本当のような気がします。

 

 今日はこの辺で。