知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

ま~もるっもっ、せ~めるっもっ、く~ろがっねっの~~

 戦略は戦争用語だという話をしましたが、

知財戦略というと、攻めの戦略とか

守りの戦略という話をよく聞きます。

 

 しかし、知財について、攻め、守りと

いっても何を言っているのかピンと

来ません。

 

 ということで、今回は、知財についての

攻めの戦略、守りの戦略について調べて

みましょう。

 

 特許法には特許権の効力というのが

書かれている68条というのがあります。

 

 まあ、特許法で一番重要な条文と言って

も過言ではないでしょうか。

 

 これを見てみると、特許権者は、「業と

して特許発明の実施をする権利を専有

する。」と書かれています。

 

 特許法の講義をしていると、まず皆さん、

この「業として」というのがピンと来ない

ようで、いろいろな質問が出て来ます。

 

 今回は、この「業として」というのはおいて

おいて、次の「実施をする権利を専有する。」

の意味を調べることにします。

 

 実施を専有するということは、自分だけが

実施することができるという意味になると

思います。しかし、裏を返せば、他の人が

その発明を実施すれば「やめろー」と言える

ことにもなります。

 

 したがって、特許権実用新案権なども

同様)は、独占的に実施でき、他を排除

できるので、独占排他権とも呼ばれます。

 

 これについては、特許権とは、そもそも

独占権なのか、排他権なのかという学者

先生の論点もあります。

 

 これは学者先生にお任せして、知財

世界では知らなければもぐりだという中山

信弘先生の「特許法」という書籍では、

積極的効力と消極的効力として書かれて

います。

 

 (この本は、「工業所有権法 上 特許法

という名前で10年以上前に出版され、いつ

「下」が出るんだと言われていましたが、

平成22年に名前を変えて出版されました)

 

 この積極的効力と消極的効力から、

攻めは積極的効力である、独占できる

ようにする戦略、守りは、消極的効力で

ある、他を排除できるようにする戦略とも

言えると思います。

 

 しかし、特許権でシェアを奪うのは攻めだと

しても、訴訟をしかけて他社排除を目指すと

いうのも考え方によっては攻めになるし、

何かこんがらかってきます。

 

 つまり、攻め、守りといってもその状況に

よって考え方が違うのではないだろうか、

という考え方もできます。

 

 たとえば、侵害の場面では、侵害者へ

訴訟を仕掛けるなどは攻め、訴訟をしかけ

られたら対応するというのは守り、さらに

相手に無効審判を仕掛けるのは攻め、

最初から訴訟を仕掛けられないようにする

というのも守りということができます。

 

 長谷川暁司氏の「御社の特許戦略が

ダメな理由」では、どんなことを言っている

かというと、

 

 戦略とは相手に勝つための大きな方針で

あり、攻めのイメージは結果的に事業利益を

生み出すイメージ

 

である、と書いてあります。(長い文章なので、

途中をはしょって引用しています)

 

 したがって、違った言葉では、「攻め」の戦略

とは、事業を独占できるようにする戦略、「守り」

の戦略とは、この独占を維持できるようにする

戦略といえるかもしれません。

 

 攻めと守りを書いているいろいろな説明書が

あります。しかし皆さん、それぞれ違った言い方

をしています。

 

  ということは、定説のない漠然としたイメージ

なのでしょう。

 

 私としては、上記の、「攻め」は積極的に事業

を独占するようにする戦略、「守り」は事業独占を

するために、これを脅かす者の排除をおこなう

戦略というのが、一番ぴったりするイメージですが、

皆様は、いかがでしょう。