知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

知財戦略入門編   あれれ???

 35日に「事業戦略と知的財産マネジ

 メント」という教材の話を書きましたが、

 独立行政法人工業所有権情報・研修館

 問い合わせれば大学・大学院・高専には

 無償配布すると書かれていました。

  

 学生全員に配布できるのかどうかは

わかりません。

 

 ところで、私が持っているものは2011年 

99日発行の初版2刷です。

  

 この版ではバイオテクノロジー分野に 

おいて困難といわれたインターフェロンの 

量産をはじめ、機能性食品素材などの開発に 

よって世界トップレベルの製品を送り出して 

いるとして、林原グループが研究開発型中堅・ 

中小企業の知財マネジメントモデルとして 

取り上げられています。

 

下記のコマーシャルでおなじみの会社です。 

YouTube

  

http://www.youtube.com/watch?v=k8vVYoV6HVs

  

 経営の特徴としては、

  

1) 家業であることを利点として、短期 

利益志向ではなく長期的に先端的・独創的 

開発に取り組む戦略(研究開発戦略)

  

2) 開発した技術を徹底的に守りつつ、 

これらの特許群と連動させながら製造ノウ 

ハウを「非特許障壁」として他社の追随を 

拒むこと(知財マネジメント)

  

である「オンリーワン戦略が取り上げられて 

います。

 

 さらにこれらを細かく、

  

① 長期の研究開発テーマを選ぶ

  それも他社が手をつけていない分野

  

② 大企業と同じ土俵で戦わない

  

③ 研究開発テーマの成功確率を高く 

 する工夫をする。

  

④ 基礎研究から始め、それにこだわる

 

⑤ 独自技術の蓄積を強みとする

 

 と説明されています。

 

 ここで、①に関するものとして、林原の 

主要6商品は開発開始から製品化・量産化・ 

ライセンス開始等、製品として世に出るのは 

平均12.5年となっており、1020年かけて

いる研究テーマが全体の約4割あると

書かれいます。

 

 さらに、長期の研究開発に取り組むことは 

成功確率が高くなり、結果的にオンリーワンを 

導く可能性が高くなり、複数のテーマを次々に 

走らせ、それを寝かしておき、現時点で直接の 

ビジネスチャンスがないように見える多様な 

研究成果を多数集めておく(これを「林原の 

おもちゃ箱」と呼ぶそうです)、戦略を取って 

いるそうです。

  

 この林原グループは模範例として取り 

上げられているのですが、残念ながら 

2011年の22日に会社更生法の適用を 

申請して倒産してしまいました。

 

 幸いなことに長瀬産業が名乗りを上げ、 

現在は長瀬産業100%子会社として存続 

しています。

  

 倒産原因は、創業者一族による粉飾決算や 

不動産投資などの事業拡大などといわれて

います。

 

 まあ原因はそんなところにあるのでしょうが、 

もう一つの要因として、研究開発から製品化 

への期間が長過ぎたというのもあげられるの

ではないでしょうか。

 

 本業が順調に行っている間は問題ない 

ですが、ヒット作というのはそうそう出る 

ものではありませんので、研究開発費が

どんどん負担になって来るでしょう。

  

 1020年かけている研究テーマが4割 

あるとのことですが、通常の企業であれば、 

「集中と選択」という名のもとに整理されて 

しまうでしょう。

  

 期間が長すぎる研究開発はすべて切って 

しまえという意味ではなく、知財戦略としては、

やはり短期で製品化できる開発と長期的な

視野に立つ研究開発をキャッシュフローを 

考えながらうまくミックスする必要があるで 

しょう。

  

 ということで、知財戦略は、経営戦略、研究 

開発戦略と三位一体を成すものでなくては 

なりません。(最近はこれに財務を加えて 

四位一体という考え方もあります)

  

 ところで、発明推進協会の新刊本のご案内

というところには、未だにこの20119月版が 

紹介されています。

 

 ということは、林原の例は、会社更生法の 

適用を受けた今でも模範例として取り上げられ 

ており、このままで記載を変更しないでよいのか?

という疑問が残ります。

 

 会社更生法の適用を受けたのは、あくまで 

事業の失敗であって、知財マネジメントは 

間違っていなかったから直す必要がないのか? 

それとも、記載の変更をするのが間にあって 

いないのか?

  

 理由はどちらなのでしょう?  

 

 現在の知財戦略情報が株式会社林原の

HPに載っていないので、よくわかりません。

  

http://www.hayashibara.co.jp/

 

(教材の考え方が間違っているという

非難の意味ではありませんので念のため)