知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

ペーパーグラス???

 

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 今日は、金曜日の朝日新聞朝刊の記事を

取り上げます。

 

 これは、鯖江の老眼鏡「ペーパーグラス」

というのが取り上げられた記事でした。

 

 福井県鯖江市は眼鏡生産で有名な

町で眼鏡製造では100年以上の歴史を

持つそうで、現在でも眼鏡フレームシェア

国内9割、世界全体でも2割のシェアだ

そうです。

 

 しかし、最近は安価な中国製品に仕事を

奪われ事業者数も10年間で4割減少

したそうです。

 

 私も眼鏡をかけているのですが、昔の

眼鏡は高くて当たり前という感じでしたが、

最近は、どうしてそんなに安いの?昔は

何だったの?と驚くばかりです。

 

 これを打開するために、眼鏡用極小ネジの

加工を手がけてきた株式会社西村金属が

「下請けだけでは未来はない」と独自商品の

開発を始め、折りたたんだ際の厚さが2mm

の「ペーパーグラス」老眼鏡というのを

開発したそうです。

 

【老眼鏡 おしゃれ】薄さ2mmの折りたたみ老眼鏡通販ペーパーグラス本店

  

チタン加工・精密部品加工専門 小径/微細のチタン精密切削部品加工 チタン加工の西村金属

 

 記事では、イタリアミラノに経産省などが

設けたショールームに出展したところ、現地

バイヤーから「展示品でもいいから売って

欲しい」などと質問攻めにあったそうです。

 

 出展したのは、西村金属の子会社で社員

3人の西村プレシジョンというところですが、

世界的な老眼鏡ブランドというのがないので、

老眼鏡としてのブランド確立をしたいとのこと

です。

 

 日本で注目されてなくても、海外で注目

されると一気に日本で注目されるというのが

よくあることですが、HPによると現在品切れ

とのことで、さらに今回新聞で取り上げ

られましたので、今後、問い合わせがすごい

のではないでしょうか。

 

 記事によると、特許を取得したとなっていま

したので、どのような特許を取得したのか見て

みましょう。

 

 まず、西村プレシジョンで検索すると、ヒット

数ゼロでした。 このため、西村プレシジョン

社長の「西村昭宏」さんを発明者として特許

公報を調べると、ありました。

 

 特許出願2007912日で、登録日

2011129日、発明の名称は、その

ものずばりの「薄型メガネ」というものです。

 

 課題としては、「メガネフレーム」と「つる」の

折りたたみ連結部分がどうしても出っ張って

しまうので、これを工夫して一平面となるよう

にしたというものです。

 

 模造品が出てきた場合、有効に差止めが

できる内容か?というのは今の時点ではよく

わかりませんが、いずれにしろ模造品が出回ら

ないよう、常にチェックする必要があるでしょう。

 

 ところで、この発明の発明者は西村昭宏

さんでしたが、出願人は西村金属さんでした。

 

 株式会社西村金属は同族会社ですので、

西村金属の知的財産権戦略はどうなって

いるのか調べてみましょう。

 

 西村金属さんは、HPのように従業員30人の

眼鏡用極小ネジなどの精密部品加工業です

ので、最終製品に関係する意匠権、商標権

などの保有はありませんでした。

 

 それでは、特許、実用新案関係はどうかと

いうのを見てみましょう。検索は「西村金属」で

検索をするとして、数が少ないのでエクセル

表で見てみます。

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 上記のように、14件の出願がありましたが、

残念ながら未請求取り下げや、拒絶となった

ものが非常に多いということがわかります。

  

 工数をかけて(お金をかけて)出願するの

ですから、非常にもったいない気がします。

 

 さらには、登録された薄型メガネですが、

こちらも残念ながら国内だけの権利取得

でした。 西村プレシジョンさんは、海外で

売っていくことを考えているでしょうから、

海外での模倣がされても文句が言えない

ということで、まことに残念です。

  

(私の検索の仕方が悪かったというのなら

問題ないのですが・・・・)

 

 HPによると、完成までは100を超える

工程を経て手作業で仕上げているとのこと

です。

  

 日本での出願があるということは、ノウハウ

だけでは守りきれないというところを出願したの

だと思いますので、出願するなら、販売する

(製造する)国を徹底的に抑える必要があるし、

ノウハウで抑えるなら徹底的に隠し通す

必要があります。

 

 知財関係の出願の際には、どこの市場を

狙うのかをよく考えていただいて、是非出願

戦略、ノウハウ戦略を含む知財戦略を立てて

欲しいものです。

 

 せっかく特許出願しても、海外メーカーに

技術を教えているだけ・・・とならないために。