知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

チンパンジーが描いた絵で侵害訴訟を起こせるか?  知財トリビア

 

 昨日の続きで、また著作権の話をして

みたいと思います。

 

 昨日、絵を描けば何もしなくても権利が

発生すると書きました。 

 

 よくテレビで猿が絵を描くとか象が鼻で

筆を掴んで絵を描くとか、ロボットが絵を

描いたなどをやっています。

 

 それでは、はたして、この場合、権利が

発生するのでしょうか? 

 

 一歩譲って、何もわからない子供や赤ん坊が

絵を描いたら権利が発生するのでしょうか?

 

 これは、著作物とは何か?という原点に

立ち戻って考える必要があります。

 

 それでは、著作物とは何か?ですが、

著作権法211号というところに

定義が書かれています。 

 

 書いてみますと、著作物とは

 

 「思想又は感情を創作的に表現したもので

あって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に

属するものをいう。」

 

 と書かれています。

 

 そうなんです。

 

 思想や感情を創作的に表現すればいーんです。

 

 岡本太郎画伯が「芸術は爆発だ!!」と

言いましたが、著作物は、まずは、感情を

爆発させた表現なんです。

 

 判断には、爆発しているか?という視点で

考えましょう。

(それだけでもないですが)

 

 それでは次に権利は誰に発生するかですが、

民法31項に「(人の)私権の享有は、

出生に始まる。」と出ており、とにかく

生まれれば赤ちゃんだろうが子供だろうが

描いた絵には権利が発生し、著作者になり

得るということになります。

(お腹の中の赤ちゃんは権利があるのか

ないのかという争いもあります。)

 

 それでは、動物、さらにはロボットは

どうなのでしょう? 

 

 民法が規定している権利は人だけです。

 

 ここから直接類推というわけにはいきま

せんが、著作権法では、権利が発生するのは

「人」だけと解されています。

212号でも著作者とは「著作物を創作

する『者』をいう」となっています。)

 

 したがって、猿が描いた絵に「猿が著作者だ」

として侵害訴訟は起こせません。

 

 ・・・・・・・原則的に。

 

 「原則的に」と書いたのは、例外があるからです。

 

 絵を描くときに、「あれやれ、これやれ」などと

指揮監督されて調教師の手足として絵を描いた

場合や、調教師が調教して絵を描かせた場合などは、

著作者は調教師となり得ます。

 

 また、ロボットにプログラミングして絵を

描かせた場合など、そのプログラマーが著作者に

なり得ます。

 

 すなわち、動物には著作権はないので侵害

訴訟は起こせませんが(起こせますが門前払い

ということです)、調教師などは起こせると

いうことになります。

 

 著作権についてではないですが、つい最近

アメリカでチンパンジーの代理で訴訟を起こした

というのがありますが、お国柄でしょう。

 

 結果がどうなるのか楽しみです。

 

http://www.cnn.co.jp/usa/35040957.html

 

 ということで、今年のブログは今回でおしまいと

なります。

 

 著作権関係の話はまたそのうち書くとして、

知財戦略、特許情報分析関係の解説は、来年

1月5日から新たな展開で書いていきたいと

思います。

 

 それでは、皆様、よいお年を。