知財アナリストのひとりごと

特許情報分析・知財戦略をやさしく解説します

パテントマップ特許情報分析編1 出願した特許は強い特許か?

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 ハードロック工業さんは緩まない

ねじにより強みを発揮しましたが、

どのような戦略を取ったのでしょう。

 

 残念ながら古い特許文献は番号が

わかっていないとデータベースの性格上

検索できないため、わかっている

もののみ書いてみます。

 

  まず1971年に若林社長が出願した

「ロックナット」という実用新案が

あります。

 

 強い特許(実用新案も)は、他の

出願審査のときに拒絶理由として引用

されます。

 

 この引用回数(他に引用されるので

被引用回数といいます)が多いほど強い

特許といえると思います。

 

 この「ロックナット」の被引用回数は

7件でした。(上図ではありません)

 

 したがってこの「ロックナット」は

強い権利だっといえるでしょう。

(回数的にどうか?というのは難しい

ですが) 

 

 次に文献番号がわからなくても検索が

可能な1985年以降で見てみると、特許

出願が1985年の特願昭60-111395「ゆるみ

止め装置」が被引用件数10件でした。

(これが上図です)

 

 これを示したのが上記のマップで、

サイテーションマップといいます。

 

 サイテーションという意味は「引用」

という意味で、分析ソフトを使うと引用

文献や、被引用文献を自動でひも付け

してくれます。 

 

 上記マップはエクセルで書きましたが、

特許許分析ソフトで分析すると短い時間で

マップを作ってくれ、多数の出願分析を

するときに便利です。(多数の文献を

指定すると、線ばかりのマップになり

何が何だかわからなくなり、おまけに

時間が大層かかりますので注意が

必要です)

 

 マップの見方は、赤枠が対象特許で、

これにより拒絶理由通知が打たれた

出願が右側に記載されています。

 

 登録されていないものでも被引用

回数が多いものがありましたが、

この登録特許である、「ゆるみ止め

装置」は強い特許として役割を終えた

といえるでしょう。 (他の特許出願

ではこのような被引用回数10件という

ものはありませんでした。)

 

 強い特許はすでに権利期間を過ぎて

しまっていますので、他社は真似をする

ことが可能です。

 

 それでは、どのようにして真似できない

ようにしているのでしょうか。

 

 尚、現在のHPでのねじ構造紹介はこちら↓。

     

 http://www.hardlock.co.jp/hl/index.php

 

 ゆるまないようにするためには上記実用

新案「ロックナット」に書かれている偏心に

関係しているようで、ホームページにも

書かれていますが、この偏芯量(ホーム

ページではこちらの漢字が使われています)

に技術ノウハウがあり中身はまねることが

できないと書かれています。

 

 ここに書かれていることは非常に重要で、

知財戦略を考える際、非常に重要なことを

示唆してくれています。

 

 つまり、知財戦略とは、なにも、たくさん

特許出願をすることではなく、重要な、または

必須な技術をどのように出願しまたは技術

ノウハウ化秘匿化し、どのように参入障壁を

築くかという戦略ではないかと思います。

 

 日経朝刊122日号の15ページでも同じ

ことが書かれており、弁理士日高賢治氏が、

日本企業の特許戦略の問題点として、「不必

要な技術まで出願する傾向があり、権利に

ならないものは公開されるので、全世界に

情報をばらまいているのと同じだ」と

述べています。(一部抜粋)

 

 また、中国の企業ハイアールグループ

などには特許調査を専門にしている技術者が

おり、数十台のパソコンで日米欧の特許出願

情報を検索し、利用している、とのことです

ので注意が必要です。 

日本弁理士会関東支部研修会:(株)戦略

データベース研究所所長工学博士鶴見隆氏の

プレゼン資料の中の読売新聞200571

「流出する特許出願情報」による)

 

 中国などは今後脅威となりますので、

中国の詳しい話もそのうち書いていこうと

思います。

 

 複合製品でない部品のようなもの、たとえば

今回の「ねじ」のような製品であれば、重要

特許を出願すると共に、製造方法などは丸秘の

技術ノウハウ化する。

 

 複雑な製品、たとえばテレビのように一つの

特許だけでは製品が作れないようなものは特許

ポートフォリオ化を検討し、同時に技術ノウ

ハウは秘匿する、ということになります。

 

 もちろん、部品のようなものでも脇を固める

のが必要で、ハードロック工業は、まさに、

これをおこなっているといえるでしょう。

 

 ということで、以下次回へ。